家族会議
「という訳であの娘をうちで面倒みようと思うんだけど、みんなどうかな?」
とある日の午後、屋敷の主だったメンバーが食堂に集まる。
「恐らく両親はいないのでしょう。住んでいた場所が分からないのか隠しているのかは分かりませんが、放棄された奴隷ということであれば引き取り手がいるとは思えません。」
「そうだねえ。可愛そうな子だねえ。そんなヤツ捕まえて懲らしめることはできないのかい?」
「主人はヨーゼフという名らしい。珍しくない名前だし、どこの人間か分からない。」
「畑の手伝いをしていたとなると、スーディル郊外かへワーク、マーブルク辺りの比較的裕福な農家でしょう。」
「裕福な農家なんて、うちの領内にはそんなにいないよねえ。」
「裕福でなくてもタダ働きさせてる百姓は結構いるぜ。」
「奴隷ってどこで買うの?」
「一般的には奴隷商ですが、浮浪者や親を亡くしたような身寄りの無い者を拾ってきたり、近所の子供を借金の形に貰ったり、酷い場合は次男以降の子供を奴隷扱いしたり。」
「何でもありなんですね。」
「ええ、平民ならいつ奴隷になってもおかしくありません。それこそ家族が病気になっただけで簡単に奴隷落ちします。ああ、戦争捕虜という者もいますね。」
「領外から来て捨てたってことは無い?」
「奴隷取引に制限を掛けたのはリンツ領ですから。よそなら売れば良いだけですし。」
「もう領外に逃亡したとかは?」
「今は領外に行くより、この領内にいた方が良いと思いますが。領外に出るために衰弱した奴隷を捨てたという可能性は僅かながらあるかと。」
「主人を探すのは?」
「とても難しいでしょうな。奴隷を持つ者は多いようですし、何より農村は領主や騎士団に非協力的な住民が多いので。」
「となれば、うちで働いてもらうしかないねえ。」
「去年の今頃なら難しかったけど、今は1人くらい増えても問題ない。どうだろう?」
「見習いということで雇われてはいかがでしょう。」
「賛成、私もお手伝いします。」
「やっと後輩ができるのね。賛成よ。」
「必ずふくよかにしてみせます。腕が鳴りますねえ。」
「庭仕事もできるかなあ。」
あんたは仕事しろよ!
「あらあらまあまあ。」
どうやら反対はないようだ。
こうしてオルガさんを師とする見習いメイドが誕生した。




