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リンツ伝  作者: レベル低下中
第一章 領地改革編
24/1781

のどかな白湯会

帝国歴245年7月



 早いもので、季節はまさに夏本番、といった感じ。

 ロスリーの夏は暑い、いやかなり蒸し暑い。

 更に、南の山を越えた海沿いの村ウスターの湿度は強烈で、まさに「発狂もの」だそう。

 そんな暑い昼下がりに庭の木陰でお湯を飲む人々。


「いやあ、暑くても白湯が一番でさあ。この汗がドバッと出るのが堪りませんわ。」

 とまあ、いつも元気なのは庭師兼馭者のゲルハルト。いや、ゲルのおっちゃん。

 酒飲みで、かあちゃんに頭が上がらない、典型的な昭和の中年オヤジである。


「それがしは水である。酒ならなお良いが、ガッハッハ!」

 更に元気なこの中年はギュンター・ゴホーク殿。とにかく豪快な騎士団長。

 最近はいつも訓練の合間にサボ、いや巡回に来る。


「まあ、団長さん。たくさんクズをこぼしていますよ。」

「お二方は急いで食べ過ぎだと思います。坊ちゃまを見習われるべきです。」

 メイド服の二人はアイリーンさんとウルさん。最近雇った近所に住む姉妹である。


 その他に、いつものセバスとマリアさん、オルガさん、料理長のジョセフとヤンさん。

 屋敷のメンバー勢揃いである。何をしているかというと、お茶会ならぬ白湯会である。


 そして甘いお菓子なんて高級なものは滅多に買えないので、麦の粉を焼いたほんのり塩味の煎餅みたいなものを食べている。見た目は鹿が食べるあれそっくり。


「しかし、みんなで集まると賑やかですなあ。」

「団長様とゲルハルトが揃うと暑苦しいですけど。」

「がっはっは!ワシでも騎士の中では物静かと言われておりますぞ!」

 絶対ウソだ。

「でも、こうして主と共に休めるお屋敷なんて他にはないでしょう。」

 恐らくない。それどころか、最近は朝食や夕食もメイドさんたちと食べている。

 父が居なくなって屋敷の雰囲気も大きく変わった。

 まあ、どんどん貴族屋敷らしさを失っているのだろうが。


「いやあ、こうして堂々とサボれるのはいいですなあ。夏の庭仕事は結構堪えるんで。」 

 サボるって言っちゃってるし・・・


「あらあらまあまあ、ではゲルさんのお給金は没収ですわ。」

「うむ、こやつに給金などいらん。」

「ほかには何もいらんが、金は無いとかあちゃんに叩き出されるから困るなあ。」

「ほとんど酒代に消えておるではないか。」

「坊ちゃんが給金を上げてくれれば万事解決でさあ。いくらあっしでも、今の倍は飲まねえですから。」

「コイツの働きで今の倍出すところがあるわけ無いであろう。」

「半分ならあるね。」

「ではやはり、ゲルさんは半額ということで。」

「みんな酷すぎでさあ・・・坊ちゃん、何とかして下せえ。」

「まあ、努力はしてみるよ。」


 みんな遠慮がないので、中身庶民の私にとっては付き合いやすくていいな、と思う暑い昼下がり。


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