OSHO禅タロットカード〜旅館編 彼の話 2
彼は静かに話し出した。
「彼女から聞いたと思いますが、僕達は山で知り合いました。ひと目見て好きに、謂わゆる一目惚れでして,」彼はまた照れた様に笑った。
「それから付き合い始めたんですが、最初は双方の両親共喜んでくれていたのに、結婚の話が出た途端、何故か雲行きがおかしくなってしまって、、。」
彼の話はこうであった。
付き合い始めの頃、彼の母親は彼女の事を「とても可愛いお嬢さんね」と言っていたらしい。しかも、「いつまでも若いつもりでいないで、そろそろ落ち着いたら?」とも言われたそうだ。それで彼は真逆結婚を反対されるとは考えもしなかったらしい。しかも、理由らしい理由をはっきり言わないと言うのだ。確かにそれは変な話である。
「実は母は再婚で、僕には義理の姉がいるそうなんですが、、でも、それと僕の結婚とは関係無いと思うし。」一旦話を切り深くため息をつく。「あの、、これからする話は、彼女にはまだ話していないので、、その、内緒にしてください。」そう前置きしてまた話し出した。
「僕には以前付き合っていた彼女がいて、婚約までしたんですが、結局結婚までは至りませんでした。彼女の方から『やっていく自信が無くなった』と断られてしまったんです。多分、旅館の仕事に負担を感じたんだと思いますが、、。どうしても家族営業なので、舅、姑と一日中一緒に居る事になります。かなり神経を使うでしょうし、、決して楽なものではありませんよね?」
そう言って、また一つため息をつく。
「僕は彼女には、今の仕事を続けてもらっても良いと思っているんです。旅館の仕事と結婚生活を分けて考えようと思います。」
「それでご両親は納得されましたか?」
彼は笑いながら、「実際に今、僕と両親の3人で賄っているので、何とかなります!」
私は頷きながらふと思った。話を聞く限り、ごく普通の結婚生活の障害だけで、カードから受け取った複雑に絡んだ人間の感情は微塵も読み取れない。やはりこれは相当深い根の部分まで掘り下げないと理解出来ないのだと思った。
そうこうしているうちに、車は道なりに大きくカーブを切った。そして突き当たりに、こじんまりとした落ち着いた風情のある旅館があった。
彼の話だけでは分からなかった、奥に潜んだストーリーがこれから展開されます。どうぞお楽しみに!