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マジシャンの惑わし

「いやーどうも、どうも。初めまして、私はマジシャンと申します。

 まさか皆さんがまだ生きているとは思いませんでした。

 どうしてかって? それはここに来られた方は十中八九、森に食べられてしまいますので」


トッドは身構え、ルナは水晶玉を具現化し、ミルはマジシャンをじっと見ていた。


「こいつ……一人で語り終えてる。他人と会話しないタイプだな」

「ルナ、お前が話かけろ。ここに来た目的があるんだろ?」


トッドとルナが小声で話をしていると、マジシャンは二人をじっと見て語り始めた。


「ルナさん、あなた亡くなった方ともう一度話したいと思っていませんか?

 私はあなたの心がそれを求めているのを感じるんです」


「そうよ、私は父と母に会って話がしたい」


「そうでしょう、そうでしょう。

 ここに取り出した……ただの枯木ではございません。

 『想い人の枯れ枝』といいまして願えば誰とでも話ができる不思議な枯れ枝なんです。

 ルナさん、あなたに差し上げましょう」


「ありがとう」


「でももう一つやらないといけないことがあるんです。

 それはこれから案内する洞窟の奥で採れる石で火をつけて枯れ木を燃やす必要があるんです。

 その煙が冥界とつながることでルナさん、お父さんとお母さんと話が出来るんです」


「じゃあ、案内してちょうだい。でもその前にこの枯れ木のお礼をさせて」


そう言ってルナは枯れ木ではなく一本の長い木の棒をマジシャンに差し出した。


「こちらをあなたに譲るわ、受け取って」


「いただけるものなら是非」


マジシャンはそう言って長い木の棒をマジシャンに手渡した。

それを見ていたミルはルナに話かけた。


「ねえ、ルナ……それってもしかして歌いだすやつ?」

「いいえ違うわ」


「お嬢ちゃん、これは何の棒なんですか?」

「今にわかるわ」


そう言ってルナはマジシャンに背を向けてオアシスを出ようとした。


「ルナどこへ行くの洞窟は反対の方向でしょ?」

「ミル、洞窟へは行かないわ。今回はこのマジシャンをここに釘付けにするのが目的よ」


「どういうことか説明しろ!」


マジシャンとトッドはルナに問いただした。


「私だけでもダメ、もちろんミルと一緒でもだめだった。

 偶然だったけどトッドが来てくれたらか成功したわ。

 もう、おしゃべりはお終いよ。森をでて帰るわ」


「ルナがそう言うなら帰ろう。ねっ、トッド!」

「なんだか肩透かしを喰らった気分だ。何だか負けた気がする」


「お前たちちょっと待て!」


マジシャンはそう言って歩こうと足を前に出そうとしたが動けなかった。

彼が持っていた長い木の棒は『渡し守の棒』と呼ばれ、

誰かに渡すまでその場から動けなくなるものだった。


「会いたくはないのか、ルナ!」


「そうだよ、枯れ木に火をつけてみようよ」


「ここにあるものは全て私たちを食い物にするものだわ。

 これを燃やすとどうなるのか大体、想像がつくもの。

 おおかた煙を吸い込んで眠ってしまうとかなんとかよ」


そう言ってルナは持っていた枯れ木を投げ捨てた。


「へー、ルナってなんだか頼もしいね」

「あんたたちとはお頭の出来が違うのよ」


森を抜けて砂漠へでたルナはミルとトッドに言った。


「ミル、トッド。スペルは『我らは永遠の旅人、生まれし土地に帰らん』よ」


「わかった」


「ならこのカードに触れてちょうだい」


ルナに言われるがまま、ミルとトッドはカードに触れながらスペルを唱えた。

眩い光が彼らを包み込んだ。


ミルが再び目を開けた時、ルナとトッドはいなかった。

目の前の景色はつい最近まで毎日見ていた景色だった。

ミルは元の世界に戻っていた。


「やっぱり、トッドは来てくれなかったんだ」


辺りをもう一度見渡してみたが彼の気配は感じられなかった。


ミルはルナにいろいろと聞きたいことが沢山あったが、もう自分から会うことが出来ないと思った。

アイスソードもいつの間にかルナにとられていた。


「全部取られちゃったなー、ないなら自分で作ろう……作り方まだ知らないけれど」


ミルはそう言いながら玄関のドアを開けた。


「ただいまー、帰って来たよ!」



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