◆意図せぬ近道
前回いっていた、ジードさんのお話です。
少しお話が飛んでる気がしますが、コレは仕様です。
今後下1桁が6の時はなるべくジードさんのお話にすることにしました。(仮)
この日、大陸全土の老若男女問わず全ての亜人や人が一様に
新たなる超越者、英雄の誕生に注目していた。
各国の首都でも郊外の村でも皆、映像球がある所に集まり、
アンブローズの流す映像に全神経を集中させていた。
その部屋は広く、大きく3つのフロアに分かれており、
一番上の段にはアンブローズと五剣の4人がおり、
階段を数段降りれば、各国の王達と大使、大臣が。
また数段降りれば、大陸の有名な貴族が立っている。
そのフロア毎の階段には1段に左右一人ずつ兵士が立ち、
中央の赤いカーペットのない部分に立ち並ぶ。
「入れ。」
アンブローズの声に、大きな扉がゆっくりと開きそこから二つの影が見える。
先頭を歩く男の後ろについて歩いているのは、今も元五剣としても有名なブルームだ。
二人は各国の貴族がいる前を通過し赤いカーペットの上を歩いていく。
各国の王が待つフロアの間をも歩き去り、
カーペットの上をまっすぐに歩き、アンブローズの目の前まで迫り、そして跪く。
「汝、名を名乗れ。」
アンブローズの問いかけに
「俺の名前は、ジード。リンク村のジードだ、です。。」
「我は賢者アンブローズ。この世界を守護し、導く者。
ジード、お前の力に心にその剣に、信念はあるか?」
「勿論…です」
「ジードよ、汝にはこれより''軍勢''の名を授ける。」
そう言い、アンブローズはジードに腕輪を着ける。
''軍勢''その名を冠するこの男はハイオークを中心とした数多くの魔物を従え、
総数は3000を超えるとも言われている。
その上、 五剣の前任者ブルームもジードの配下に加わり、彼の持つ戦力は各国の無視のできないものになっていた。
先ほど大賢者アンブローズから着けられた腕輪はこの世に5つしか存在しない、とても貴重且つ高価なマジックアイテムで、
装着者の長所を更に限界を超えて引き上げる代物、大陸でアンブローズに認められた5人にのみ授与される、
いわば五剣の証そのものだ。
五剣任命式に参列していた
''五月雨''を冠する三刀のミユキは納得がいかなかった。
かつて共に戦った戦友を配下に従え、
魔物を束ねる男に不審の目を向けざるを得なかった。
どうみても強そうではない。
その上、冒険者ランクも直前までCだったらしい。
魔物を3000以上も従え、
堂々と人類最高戦力と呼ばれる五剣に名を連ねる。
……異常だ。
前任のブルームの実力は知っている。
共に戦ったからこそわかる、技量は低いものの私はきっと彼に勝てないだろう。
五剣に名を連ねるに相応しい実力の持ち主だった。
だのに、この平凡そうな男はそのブルームの上に立っているのだ。
納得なんて出来るわけがない。
彼が軍門に下り、総戦力で言えば確かに五剣に敵うのだろう。
ただこの男の''軍勢''の大部分は魔物。
まるで、五剣が対抗しようとしている魔王、そのものではないか。
それに自分の率いる軍団のメンバー66人の中でも一番の若手でランクの低い者が冒険者ランクCだ。
そんな者に、五剣の一角を名乗らせるのは……
「だめだな、我慢できないや。」
ジード本人を目の前にして確信した。
式典を終えた直後、
各国の要人が席を立ったそのときだった。
ジードに向かって手袋が投げつけられた。
それも2つ。
手袋を片方投げつける行為は決闘の申し込みを意味する。
五剣の中で手袋を片手はめていないのは、
三刀、五月雨のミユキと
四刀、震空のゴライアスだった。
「アンブローズ様、異議申し立てを失礼します!
私達は反対です!」
「俺もだ、ブルーム殿は実力が申し分なかった!だがジード殿には俺には覇気が、強者の波動を感じないのだ」
「それに、個人の実力じゃなくて、従えてる魔物の力をかさに''軍勢''として評価されているんですよね!?五剣として、私達は反対です。」
ミユキとゴライアスの異議申し立ては、
各国の要人の耳にも止まり、全員をその場に留まらせた。
「ふむ、お主らの言いたい事もわかるぞ。」
アンブローズは五剣の4人を眺め、口を開く。
「して、ヤイバとオルト。主らは異論はないのか?」
「……。」
オルトは腕を組んだまま横を向くが、
ヤイバは歯を剥き出しにして笑う。
「へへ、俺は下には興味がねぇんだわ。」
「ジードよ、無理に決闘を受ける必要はないが……」
アンブローズはジードに再び視線をやる。
「いやいやいやいやいや!だから無理だって。そもそもなんで俺が!いえ、私が!?」
「今は式典の最中だ。二人とも手袋を……」
アンブローズがジードを庇い、決闘の申し出を無かった事にしようとしたその時
「……話を遮り申し訳御座いませぬ。ジード殿に少し、よいだろうか。」
急に手を挙げて発言をしたのはグングニラの大使であった。
「…続けよ、」
アンブローズの了承を得、
大使は後ろにいる王に目配せをし、話始めた。
「我々はジード殿の持ちうる戦力、全てではないかもしれないが聞き及んでおります。
三千を超える魔物の大群に、前五剣のブルーム殿も貴殿の配下になったと聞く。
しかしながら、元々Cランク冒険者であった所より、B,Aそして一気にSランク冒険者の枠を飛び越えて
歴代勇者の名と比べても見劣りもしない、そんな人類の最高戦力に抜擢される…
…その御力の一片でも見せていただけないだろうか。」
一度周りには沈黙が流れ、続ける。
「私の耳にしている情報には同じCランク冒険者にハイオークの目の前で危害を加え、
とある冒険者チームに損害を与えたばかりか、ハイオークを逃がした。との噂も入ってきているのです。
私たちは何もアンブローズ様の慧眼を、評価を疑っているわけではありませぬ。
ただ……つい最近までCランク冒険者であった貴殿に、
もしも!万が一!!何かがあった際に貴殿が三千の魔物を抑制し、御することができるのか。……それを、問いたい。」
きっとこの場に集った国を背負う全ての者たちが同じ疑問を持っていたのだろう。
皆の視線は一斉にジードへ向けられた。
「兄様を、侮辱しているのか!! 貴様らぁ!!!」
その注目に。兄へ向けられる視線に、疑惑に元・五剣であったブルームの怒号が響き渡る。
その声に距離の近かった兵士たちは一斉に昏倒し、
その場にいる全員の目から見てもブルームの力は一目瞭然だったが、
今回槍玉に挙がっているのはブルームではない、ジードなのだ。
「失礼、そのようなつもりは……
しかし!ではブルーム殿はジード殿の従えている軍勢が万が一反旗を翻し、
一斉に民家を襲い始めた際に三千をブルーム殿が止めることは出来るのだろうか!
「五百…いや、千までなら……」
グングニラの大使の圧に圧されどもるブルーム
「我々もジード殿をこの大陸で最強の剣士として迎えるのだ。
ブルーム殿が人の域を超えた強さを誇っているのは解っている。
そのブルーム殿の上に立つジード殿の力が知りたい、我々は民を守るという義務もある
その上で安心が欲しいのだ!!……どうか理解してはいただけないだろうか。」
大使の後ろでグングニラ教王もうんうんと頷く。
そして忠犬ブルームも助けを求めるような目でジードを見る。
「……マジか」
アンブローズはこの映像もまた、流し続けている事を確認しため息をつくと、
大きく手を叩き、その場の注目を集めた。
「皆、静かに。………よかろう。ジードよ、やってくれるか?」
「いや、待って!おかしいって!」
アンブローズの問いかけに、慌てふためくジード
「んだ、おめぇ逃げんのかよ!!」
すかさずミユキが反応すると、
「はぁぁあ!?兄様が逃げるわけねーだろ、受け立つよ!コテンパンされて降格しても知らねぇからな!!」
まさかのブルームが決闘に了承。
ジードは逃げれない雰囲気にただただ困惑するのだった。
□□□□□□□□□□□□□□□
アンブローズ様が床に杖を2度突くと、先程までの部屋は靄に消え
闘技場のようなスッキリとした空間に早変わりしていた。
いつ見てもアンブローズ様の魔法は鮮やかでスケールが違う。
やっとこの胡散臭い男の鼻を明かせる。
自分はこの人類最高戦力と呼ばれるこの五剣という地位に誇りと自信を持っている。
それをこんな普通の男が……許せない。
尊敬するアンブローズ様の沽券にもかかわる、よくない虫は早々に払い落さなければ……!!
ブルームから盾と剣斧を手渡されているジードを見る。
…なんであんな奴に。
ブルームもブルームだ、探し人ってコイツの事だったのか?
いや、アンブローズ様もブルームもコイツに騙されているんじゃないのか
まぁ、アンブローズ様が騙されるなんてことはないだろうが……
そんなことを考えているとアンブローズ様が近づいてきて肩に手を置き耳打ちをする。
「ミユキ、すまぬが手加減してやってくれ」
ーえ?
今、なんて?
まさか…いや、確かにアンブローズ様は手を抜いてくれと言っていた。
「兄様なら大丈夫!コテンパンにしちゃいましょう!」
「えー、ムリムリ。オレ弱いって。」
「またまた~」
なんて、じゃれ合っている。
え?あのブルームが??
アレが俗にいうツンデレというやつなのか…いや、
そうじゃなくてアンブローズ様は何か考えがあってこの男を五剣にしたのだろうか。
ようやくブルームが離れていき、少し遠巻きからジードへの応援をし始める。
アンブローズ様が為すことに意味が無い事などない。
……だが、この男はダメだ。
なよなよしている、ダメだ、なんか胸がムカムカする。
「ど、ども。お手柔らかに…」
なんて言っているが、
「アンブローズ様には申し訳ないが、一撃で終わらせる。」
ククリを構える。
本気は出さずともAランク冒険者程度の突きで、
手加減してもこれだからコイツに五剣の称号は勿体ないことをみせつけてやる。
「え、ちょ、話がちが!!」
勢いの乗った一閃、斜め下から繰り出す蜂のような一刺し。腕を上げられぬようにしてリタイアさせる――!!
「うわぁ!」
ュィン――!!
「え?」
反応した?
Aランク冒険者でも半数以上は反応も出来ない速度だったと思うけど……
的確に僧帽筋と三角筋の間を狙った一突き。
ジードの左腕に着けられた盾によって上に受け流された。
「外れた?」
「っ!まぐれだろ!!」
ジードの横腹を蹴り、距離を取る。
クソ。
もういい、少しいたぶってやろうか。
2本目のククリを抜き、再びジードへ斬りかかる。
ジードも上段でそれを受け、ミユキは途中で力を抜き、手を放す。
急な力の流れの変化にバランスの崩れたジードにしゃがみこんだミユキの下段からのクナイでの切り上げ。
「あぶなっ!」
ミユキの手放したククリを掴もうとして尚更態勢を前のめりに崩すジード。
結果、ミユキのクナイは空振り。
ジードはミユキの手離したククリを2本両手に万歳状態でミユキの胸に顔を埋める。
「あ、ごめ……」
謝るジードにそのまま歩いて距離を取る。
「あの、これ。」
ジードはククリをミユキに渡そうとするが
「絶対殺す。」
返答はまさかの殺害宣告だった。
「え、ごめんって。え。」
人生で初めて顔に泥を塗られた気分。
大陸全土に見られているという羞恥心は怒りを通り越して殺意に変わっていた。
かつて、多方向からの攻撃と驚異的なスピードから繰り出される剣戟、
大陸全土で一番怖れを集めた暗殺者と呼ばれたこの私が、、
こんな屈辱は初めてだ……
☆☆☆☆☆
「あのミユキが遊ばれているように見えるな…」
ゴライアスがそう呟くと
「兄様は生まれながらにして英雄らしいからね。」
自信満々に誇らしげなブルーム。
「じゃがアレは、まるでラノベの主人公のようなラッキースケ……ェフンゲフン!」
ブルームの視線につい咳ばらいをして言葉を濁す。
全く羨ましいわけではない、断じてない。
その後もミユキは本気で殺しにかかっている様で、
”五月雨”の異名をとった時間差による斬撃や、
止めに入ろうとはしたものの、意外とジードは致命傷を負うことはなく、
擦り傷のような軽傷で斬撃を逸らせたり、止めたり上手いこと躱す躱す。
どういうことだ。
ジードという男、ランクC相当の冒険者ではなかったのか。
ミユキは暗殺者の中でも最強と謳われていた元Sランク冒険者で、
今や総合的に見ても大陸で5本の指に入る最強の五剣の一人。
あの男、遥か昔に一度会敵したことがあったはずだがあんなに強くはなかった。
というか、ミユキとの戦闘を見ている限り、強いイメージは湧かないが物凄い捌き方をしている。
転んだと思ったらうまい具合にそれがミユキの意表を突き、斬撃回避に一役買っていたりと
まるで世界がこの男を生かそうと、不思議な力が働いているかのような何とも言えない感覚だった。
そして一番不思議なのが反撃を一度もしていないはずのジードの服が破れたり、
軽傷を負う度に少しずつミユキの服がはだけていったり、やはりこれは……
いや、ミユキの名誉の為にもせめてこの辺で止めねば。
「うー!!ぶっ殺す!!!」
ヒートアップしているミユキの背後に跳び、宙を掴む仕草に合わせ、ミユキの動きがピタリと止まる。
「アンブローズ様!!止めないでください、コイツは殺さないと!!今すぐに消さないと!!!!」
「ここまでじゃ。ジードの実力もよく分かった。"五月雨"のミユキをの攻撃をここまで防ぎ、避けきれるものもおらぬであろう。」
こうして、三刀 ”五月雨”のミユキのイメージダウンと共に大陸全土に鮮烈な五剣デビューを果たしたジードだった。
次第に服のはだけていくミユキに一部の層からは大きく支持を得ていた模様。
まるでミユキさん弱いみたいなイメージ出てきてしまいますが、英雄を除く人間の女性キャラの中では断トツで強いつもりです。
ジードさんのお話もまだ回収していない部分が多くこれから出してくつもりです。
次話はアリシア達の方にまた戻ります




