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囚われのアリシア~私にだって意地がある!~  作者: ホマージュ
第三章 貿易港国コルトバッツ
45/51

◇その五 ユウカリ村①

2個にわけました。

なのでアリシアのターンは次の更新の後になります

柿谷衛はサンレイヤーと目の覚めぬ少女ライラと共にクムルンランドという国を目指す。








柿谷衛は目の前の光景に思わず言葉を溢した。


「凄いな…」


何が凄いかといえば躊躇の無さである。


つい先日自分のやられたウサギモドキを見つけるや否や、


サッカーボールでも蹴りあげるかのように躊躇無く顔面に蹴りを入れる。


蹴られて浮いたところに両手でナイフを上から突き刺す。



あまりの鮮やかな手際に、


そしてその唐突さに口を開けるのみだった。


ナイフを突き刺されたウサギモドキは急所を貫かれたのか、ピクリとも動かなくなる。



そうして動かなくなった死体をサンレイヤーは背に背負った篭に放り込む、


既に10体近くは倒しているだろうか?


愛くるしいシルエットをしているせいか、ここまでくるとなんだか可哀想に思えて仕方ない。





背にライラと呼ばれる少女を背負い、


サンレイヤーの後ろを着いていく。


ちょくちょく柿谷に背負われた少女を気にして後ろを向いてくる。




信用はしてもらってはいるものの、


意中の相手が他の男の背中に身を預けているのがやはり気にはなるようだ。



年頃の青年らしい反応と、


反比例するような魔獣処理の手際のよさにただ


「なんだかなぁ。」と言葉にできない想いが募る。








多分半日位だろうか。


日が傾き始めている中、歩き続けていると


やっと森の端が見えてきた。





その頃にはサンレイヤーの背負う篭にはウサギモドキだけでなく、他の魔獣もギッチリ詰まっていた。


それどころか、右手にナイフを持ち、左手にはゴブリンの死体を6体、腕に木の蔓を縛り付け、引きずっていた。









村に着く頃には、


日が沈みかけていた。





村に着くと、一人の村娘が応対し、


村長が部屋を貸してくれる事になった。




先ずライラをベッドに横にさせると、


サンレイヤーは村長と話をしに部屋を出て行った。





「それにしても…この子、起きないな…。」




少し褐色肌というか、健康的な日のやけ方に汗が浮かび妖艶に写る。


「サンレイヤーが惚れるだけ、ある。もう少し大きければ俺も…」



なんて、変なことは考えないようにしよう。


命の恩人相手に裏切るような事はしたくないから。






暫くして、



サンレイヤーが村長の娘と共に戻ってきた、



村長の娘の手には水の入った桶と布巾を持っている。





「柿谷、外。出るぞ。」




それだけ言うと、ペコリと村長の娘に頭を下げて部屋を出て行った。





あぁ、なるほど。





家から出て外、村の囲いから森を眺める。




「柿谷、本当にありがとう。」


急に深々と頭を下げるサンレイヤーに驚く。



「どうしたんだ」


「柿谷がいなかったらこんなに安全にライラを運べなかった。あの森は入るのは簡単なんだが、出る時は魔獣が多くなる、不思議な森なんだ。」



「いやぁ、俺はただ背負ってただけで、安全に出れたのは君のお陰だよ。此方こそ感謝してる。」



「それとすまなかったな、昨日はナイフまで突き付けて…」



「まぁ、生きているし。結果オーライって事で。」







「あと、森から持ってきた死体は村の人達に素材と食料として提供したんだ。」




「え。くうの?」



「ああ見えて胃袋の胃液さえ、抜けば毛皮は寝具にも衣服にも使えるし、肉は臭みはあるものの柔らかい。代わりに数日の宿として、ここを貸して貰う形になった。」


「あの、ゴブリンは…」




「っふ、あれは流石に食わん。素材だ」


それもそうか、


人形のゴブリンを食べるのは少し勇気がいるだろう。


お互いに笑い合い、部屋に戻っていく。








扉を開ければ、




村長の娘が裸のライラの左腕を持ち上げ、




脇の下を拭いている所であった。




背中が見えたが、




形のよい乳房は背中のシルエットから軽くはみ出て艶のある褐色肌が映えた。





思わず見とれ、反応してしまった。






「しっ失礼しました!!」


サンレイヤーは顔を真っ赤にしながら扉を閉めた。






おっと、これはすぐ俺も出ていかないと


サンレイヤーとの不仲に繋がりそうだ。


扉から出るなり、



なんでお前が中から出てくるんだと言わんばかりの表情をするサンレイヤーに、



「1人で出てっちゃ酷いよ」



と何も気にしていない様子をみせる。




村長の娘が帰っていった後も、


昨日はライラと同じ部屋で夜を越していたサンレイヤーは、


柿谷と同じ部屋で寝た。







鳥の囀ずりを近くに、


気がつけば村長の娘が部屋に来ていた。


ぼー、としながら


窓の近くの花瓶に水を注ぎ直している村長の娘を、改めて見ると


深い青でショート位の髪。大人しそうな外見にジト目、泣きボクロ。


幼さを残してはいるが…


大人になれば、凄い美人になるに違いない。



落ち着いている感じからもあまり年齢を感じさせない魅力がある。





「起きられました?」



「ど、ども。」




「朝食は用意してありますので、居間の方へどうぞ」




そういうとゆっくりとお辞儀をし、また家の外に出ていった。





…アリだな。



なんて、年齢差があって…



うん…考えないようにしよう






横を見ればサンレイヤーがソファで眠っていた。



昨日は自分よりも早く起きていた為、



疲れているのかと思い、そのまま起こさずにいることにした。





用意されていた朝食は


ボソボソとした固いパンと、薄いスープではあったが、



久しぶりに食べた気がした人の手料理はとてもおいしく感じた。





外に出れば井戸の近くで村長の娘がスカートを持ち上げ、



大きな桶の中で緑の布を踏みつけ洗濯をしている


かと思ったが、


水は赤く、


緑の布だと思ったソレは昨日のゴブリンであった。





「え」




朝のイメージから、反転。



ゴブリンの死体を何度も何度も踏み潰しては桶に水を追加していく彼女を見て固まってしまった。





その驚いた様子を受けて



「これは、昨日頂いたゴブリンです」



と答えてくれる。


それはわかる。いや、わかりたくなかったが。



「そ、それは何をやっているの?」



朝から気分が悪くなるものの、


一応聞いてみる。






「ゴブリンは牙や内臓、爪と骨を除いて、こうやって踏み潰す事で皮に付いた内側の肉も取りやすくするんです。」



「そ、そうなんだ…」



「…もしかして、初めてでした?」



「はい、あまり、こういうのは疎い物で…」




「そうでしたか、申し訳ありません。朝からこのような所をお見せしてしまって…」



「いえいえ、大丈夫です。すみません、続けてください」



「ありがとうございます」



そう言って会釈した彼女は再びスカートを持ち上げ綺麗な素足でゴブリンを踏みつけながら跳ねる血の混じった水で脚を汚していく。




確かにゴブリンは骨張ってて、


食べる所が少なそうだとは思ったが、


血抜きをしながら仕込まないといけないのであれば大変だな、


と思いつつも、なんだか申し訳ない気がしてきた。




「何か僕に出来る事はありませんか?」





「では…」














「ふぅ、」


額に汗を浮かべ、息を吐く。


カコーンと、気持ちのいい音が鳴り


薪が二つに割れる。





そう、薪割りである。


これならグロテスクな事もなく手伝うことが出来る。


当然、サラリーマンだった自分は前の世界で薪割りなんぞしたこと無かったが、


村長の娘さんに教えて貰ったのだ。


何故か密着し、斧の構え方まで教わったが、


密着してもらえるのは嬉しい反面、



彼女の衣服や身体に付着したゴブリンの血液が自分に付くのが物凄く気になって


未熟ではあるが、胸が、柔肌が…だなんて、それどころではなかった。





粗方薪割りもスムーズに行くようになったかと思えば、


ゴブリンの血抜きも終わった様で、桶の水を桶の栓から抜いていく。


最後に栓の空いた桶に井戸から汲んだ水をぶちまけると、徐に下着を脱ぎ、



ワンピースのような一枚服も脱いで井戸の水で水浴びを始めたではないか!





うおおおおおおおお!



けしからん!



あと5年、いや、3年でいい!



後に見たかった!!





しかし、柿谷衛は紳士である。


一瞬だけそれを見ると反対を向き薪割りを続行した。




暫くしてから、


サンレイヤーが起きてきたが


朝は弱いのか聞けば、そんなことは無いと即答。



しかし、なぜだか昨日はなかなか寝付けなかったらしい。



…純情か!!







「とりあえず、薪割りはこんなもので大丈夫でしょう。お客様に労働をさせてしまって申し訳御座いません。」



村長の娘に礼を言われると、逆に申し訳なくなってくる。



「いや、此方こそ眼ぷk...いや!動いてないとなんか落ち着かなくて。それより、薪ってもうここに有るもので終わりですか?」



「えぇ、確かその筈ですが近い内に木を切りに村の木こりが行くと思います。」



「そうなんだ…」



そういえばサンレイヤーは薬草を取りに行くと言っていたな。


彼も眠るライラの為に頑張っているようだ。


日が落ちるまでもう少し時間がありそうだった為、村を散策することにした。




村の至るところに昨日サンレイヤーが倒した魔獣の皮が干してあり、


既に村中に行き渡っているのが伺える。


他の村人も目線が合えば会釈はするものの、会話をする事はなかった。













「あれは…オークっていう奴か?」








少し話が遡る。



柿谷は村の外れに使っていなさそうな小屋を見つけた。


小屋の中はクモの巣が張り、埃まみれ。



「お邪魔しますー、うっわ。散らかってんなー」



扉には鍵は掛かっていなかった。



悪い気もしたが、


その中に入って足元に落ちている本や瓶を眺める。


まだオイルの入ったランタンに、


何故か、見覚えのある『じゆうちょう』を発見する。



「なんでこんなとこに…」



名前欄には漢字で『鴨上麗南』と書いてある。



…かもがみ、れいな?



『じゆうちょう』を開くと、一文。





【私は異世界に来た。】





思わず、『じゆうちょう』を閉じた。


心臓が高鳴った。


まさかこんな所で早々に異世界に来た人物の書き記したものが見つかるなんて思っていなかった。


つい周りをキョロキョロと見回す。



挙動不審である。



「廃屋っぽいし、も、貰っても平気だよな?」



すると窓越しの林の方だ。



何かが動いた気がした。



埃で曇った窓を軽く擦り、よく見れば


豚のような顔に、身体は腹は出ているががっちりとしている。


それは自分の意思ではなく誰かに指示を出されているのか、時折止まっては思案しているように見えた。








「あれは…オークっていう奴か?」








暫く見ているとオークはそのまま林の中へ消えていった。


オークはこんなに人の村に近いところに生息するものなのだろうか?


『じゆうちょう』に対する好奇心を一旦理性でストップ。


泊めさせてもらっている家へ戻った。




家に着けば、夕食の準備は終わっており、


サンレイヤーは既に卓に座っていた。



「おそいぞ、柿谷。どこいってたんだ?厠か?」




「いや、悪い。村を散歩していた」


「お夕食の準備は出来ております、どうぞお掛けください。」



村長の娘は椅子を引いてくれ、その椅子に座る。



「あ、どうも。」



席に着くと村長の娘はスープをよそってくれる。



「サンレイヤー。」



「うん?」



「豚の…いや、オークっぽいのをさっき見かけたんだけど、人の村に害はないの?」



一瞬で皆ピタリと止まる。


村長の娘に至ってはよそってくれていた器を床に落とす始末。


どうやらおかしなことを言ってしまったようだ。



「え?ごめん。大丈夫?」



「申し訳御座いません!私っ…」




青ざめた顔をした村長の娘は落とした器を拾い、



床に落ちたスープの具をかき集める。



そして、その器に入れる。



3秒ルールを無視されたスープは柿谷に渡される。




「え?」




「へ?」




「いや、それ、落とした…」




「あ……すみません!私っ……」




そう言うと村長の娘は奥に引っ込んで行った




「えぇー……」






「柿谷。それは本当か?」



真剣な面持ちで食事の手を止めているサンレイヤーが訪ねてくる。



「うん、多分だけど。あれはきっとオークってやつだと思う。」



「そうか…。」



何か考えているようなしかめっ面で腕を組むサンレイヤー。



「やっぱ、なんか不味いのか?」



「オークってのは基本的に肉食で、よく集団で人間や亜人の村を襲うんだ。しかも自分達の巣に抵抗の弱い女子供を連れ去って行き、子供は餌に、女は苗床として、男は食い散らかされるんだ」



「え、やばくね?」



「しかも夜、村が寝静まった頃に一気に押し寄せるのが奴等の戦法だ。」



「え?今日??」



「人の村の近くに姿を見せるのははぐれた奴か、襲う算段をしている奴か…」



「さっき見た奴は少なくとも自分の意思のみで動いているわけではなさそうだった…。」



「なら、後者か…」









「すみません!失礼致しました。」




そういって走ってくる村長の娘は持ってきた雑巾で床を拭き始める。




幸いまだ日は沈んだばかりである。

流石にやりすぎたかもしれない、とちょっと反省。。。

もすこしてアリシアさんのストーリーに戻りますのですみませんがあと1話脱線にお付き合いください

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