~竜が住む城~
とにかく練習用です。
寝る直前に思い付いたものを
寝起きの回らない頭で書いてみてます。
元サルスムーナ帝国領であり、
クムルンランドと屑砂砂漠との間に位置する辺境に
山や谷に囲まれており、既に廃墟と化した村が点在する地域。
そんな人の往来のほぼない荒れた街道を千を越えるであろう人の大群が列を為して移動していた。
白銀の鎧に碧で彩られた縁。
規則的に地を踏む音が続く行進、
この大人数が綺麗に足踏みも揃えて乱れない行軍には
どれだけの日々を訓練に費やしただろうか、測れない程である。
周りの背景と比べ、それは異常と言ってもいいほどだった。
この軍の先頭部分に前述の鎧に金を纏った一際目立つ者がいた。
彼こそこの行軍を指揮するサルスムーナ帝国のミルオ・ロ・レルド伯爵である。
帝国でも几帳面として知られる彼はどこか品を感じさせるような髭を弄りつつ近衛兵に呼び掛けた。
「あと、どれくらいだ?」
それに答えるように一人の兵士が返す
「ハッ。現在ナウレラロッジ渓谷をすすんでおりますのであと半刻程かと思われます!」
この道の先には城があった。
その城には一つの噂が真しやかに囁かれていた。
ーかの城、絶世の美姫あり、金の財宝人の手には付かず、
これらに魅せられし竜は何人たりとも侵入を許さず。ー
というものだった
逆に言えば竜さえどうにかすれば絶世の美姫に加え、
手付かずの金銀財宝を同時に手に入れられるということである。
ミルオ・ロ・レルド伯爵は頷きながらも自分の自慢の兵士達を眺めた。
そしてその瞳の奥には既に此度の遠征の祝勝会を開いている自分の姿が写っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
サルスムーナ帝国の元領地内であったの辺境に建つスデルーク城。
正門をくぐり、正面の大きな扉を開ければいやに生々しい氷の彫刻に遭遇する。
彫刻家ならではのムラや癖もなく、それぞれが全て異なるポーズをとっている
見るものを圧倒させる出来であるが、その全ての彫刻が絶望や不幸感を感じさせるような表情をとっている。
城の中には他にはこれといった特徴はなく、氷の彫刻を除けば特に他の城と変わったものは無い。
こんな城に一人18歳から一人で暮らしている姫がいた。
やがて太陽が西に傾き始めた頃、
城の前で歓声があがる。
年に2,3度程の大きさの歓声に、
城の中でも一際豪華な寝室で姫は目を覚ました。
姫は何も言わずに白を基調とした下着のままベッドから降りると、
金で彩られ豪快かつ繊細な装飾の化粧台にそのまま歩く。
鏡を見ながらなれた手つきでテキパキと自分の顔にラインを描いていく姫には一切の迷いはなかった、
下瞼に小指で軽くなぞるように紅を引く、
それだけでも寝起きの顔には見えなくなった。
ものの5分もしない内に姫の手が止まる。
どうやら及第点に達したようで髪を整え始める。
櫛で髪を整え、ドレスを着ると肘をあげ自分の脇の匂いを嗅ぐと、よしっ!と拳を握った。
姫が身支度を整えているその間にも城の外では大勢の怒声や、歓声、炎が燃えるような音、爆発音等が散々鳴り止まぬ状態であった。
「既に20代も後半、やけにうるさい爺を初めとして、屋敷の者は氷漬けにしたのに」
起きてからやっと口を開いたかと思うと、
物騒な事を口にする彼女には先程までと異なり焦りが感じられた。
しんと静まり返った城の中をカツカツと音を立てて歩き回る。
やがてこの城の中で一番大きな扉を全体重を使って押し開ける。
扉が開くと同時に薄暗い城の中に突風が吹き荒れる。
逆光と共に生暖かい温風も混じる
目の前に広がる筈の光りや庭園を覆い、
一つの大きな影がゆらりと動く。
赤い鱗に黒く禍禍しい角。
金色の瞳は宝石の様……。
それがこの城を守る__竜__である。
扉を開くと竜もこちらに気付いた様で、
どれ程の重さなのか触れるも憚られるような重厚な首を動かす。
姫はふと、何かに気付いた様で
口をあんぐりと開けながら竜を見上げた。
竜も何かを言おうとしているのか、
もごもごと口を動かし徐に白い何かを吐き出す。
幾度もカランと心地よい音を奏でながら、
地面に落ちるソレはどうみても人間の骨であった
ソレが床に落ちるのを確認し堪えられなかったのか姫は叫んだ
「まーた、やりやがったなー!」
それはこの場に居合わせる竜に向けたものに他ならなかった。
竜はまるで人間の子供のようにその怒声に驚き、ビクリと肩を持ち上げる。
囚われの姫は遠慮もなく
あたかもいつも通りのように、
竜をまくし立てる。
「なんでアンタは私がちゃんと確認しない内に殲滅しちゃうのかなぁ!!?」
「折角私を助けに来てくれた王子様だったのにこんなにぐちゃぐちゃで全部死んでたら何もわからないじゃない!」
竜はやれやれというようにそっぽを向きながら、ゴウッと炎のような荒いため息をつく。
「大体アンタはねー…」
と姫がいいかけたとき、先程までそこに居たはずのの竜は消えていた。
その代わりに竜の居た場所には背中まで赤い髪を伸ばした女が立っていた。これまた一般的には美女と呼んでも差し支えの無い女であった。
その女は王女のまくし立てるような文句をそこまで聞くと、
逆上し、負けじと大声で返す
「そんなこと言ったってアンタの我が儘に付き合わされるこっちの身にもなってよ!
アンタなーんか毎回毎回顔を見ても、なんか違うもっと貫禄が欲しい!だのカリスマ性が足りない!だのケチばっかりつけて、高望みして追い払うときには、私の美貌を忘れられなくてまた来られても面倒だからって私に喰わせるんだから先に食べても文句ないでしょ、!」
「確かに私が世界一美少女なのは認めるわ、認めた上で公言もしよう。
でも私はただ我が儘を言っているんじゃないの。
わかる?所詮竜ごときが私の美貌を理解するなんてこと到底無理な話なの、
あなたのわからない世界なのよ、私の言っているのは!」
竜らしい女がしっかりとドン引きをしている所に姫は
これでもかというようにドヤ顔をする。
そしてそれなりの長い月日を共にした竜は姫に聞こえない位の大きさで呟く。
「ナルシスト、引くわー…」
練習用だから、何を書いてもいいんだもん!