第1部「狩りの開拓」 第10話 Rock 'n' Roll
翌日
俺たち「帝守護兵団」はイベントステージである「暴岩龍の縄張り」へとやってきた。そこにはすでに大勢のプレイヤーでひしめき合っていた。俺たちの到着とともにアナウンスが流れる。
「これより、第二回イベントクエスト「暴岩龍の暴走」を開始いたします。皆さま存分にお楽しみください」
危なかった。ギルドメンバー全員がアラームをかけ忘れたせいでもう少しでイベントに間に合わないところだった。
「いや、まいったまいった。すまねぇな兄ちゃん。こっからスイッチ切り替えていくからよ」
今日のウコンも本気らしい。和服のような装備に腰に差した居合用のカタナ「抜剣」もレア度が高いものだ。だが一番目立つのは顔の上半分を隠す仮面だ。
「おいウコン。その仮面どうしたんだよ」
「ああこれか? こいつは前回のイベントで手に入れた「兄弟狼の仮面」だ。体力とスタミナを犠牲にVIT以外の全ステータスを上昇させる効果があるんだよ。サコンの持ってる仮面と対になっていて同じパーティ内にもう一人装備者がいないと発動できないがな」
つまり俺の持つ「異界の狩人」に似たスキルらしい
兄弟狼の仮面 上 装飾具 レア度10
死の時まで互いに助け合った狼の兄弟、その伝説をもとに創られし一対の仮面。この仮面は顔の上半分を覆い素早さを引き上げる
AGI+5 スキル「兄弟の絆」
兄弟狼の仮面 下 装飾具 レア度10
死の時までお互いに助け合った狼の兄弟、その伝説をもとに創られし一対の仮面。この仮面は顔の下半分を覆い頑強さを引き上げる
VIT+5 スキル「兄弟の絆」
そこにサコンがやって来た。昨日と違い金属鎧を身に着け、背には両手槍を背負い顔に狼の顎を模したような仮面をつけている。俺が気になったのは背負った両手槍の形だった。中国の武器にある蛇矛のようだが先が蛇が口を開けたような形状になっており柄に何かをはめ込む穴がある。刃には溝が走っている。
「サコンさん。その武器は?」
「おい兄ちゃんよ。なんでサコンにはさん付けで俺は呼び捨てなんだ?」
「いやなんとなく」
「・・・・この武器はダボウだ・・。柄に毒薬や麻痺薬を差し込むことで・・刃の溝に毒を滴らせ・・相手に与えるダメージを上げる両手槍だ。・・俺は「調薬師」のスキル持ちだからな、相性がいい」
つまりこの武器は毒によってダメージをたたき出すわけか。恐ろしい武器だ
ダボウ 武器 レア度8
かつて一騎当千の将が用いたとされる両手槍。毒薬を使用することで威力が変わる。口を開けた蛇を模した刃から滴り落ちる毒は相手を蝕む
スキル「毒薬強化」
「・・・・それよりも兄者。・・・来るぞ」
「そうだな」
俺も直感的に感じていた。どうしようもなく強い気配を。
次の瞬間、荒れ地だった目の前の地面が割れた。
地面の下から現れたのは全長50メートル、全高20メートルほど、四足歩行の巨大なドラゴンだった。
体中を覆うダイヤモンドのような光沢を放つ甲殻が眩しく、足の爪はクリスタルのような輝きを持っている。背にある翼はサファイアのような深い蒼。眼はルビーのように紅く燃えている。
体が宝石でできたようなこのモンスターこそが今回のクエストの標的、グランドラゴンだった。
「よしっ、全員突撃だぁっ!」
ウコンの声を合図にしたかのようにすべてのプレイヤーが一斉に襲い掛かった。




