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エピローグ
暖かい日差しが本をじんわり灼いていた。
時間すら忘れるほど集中して読み込んでいたからかもしれない。
「のう、フリや」
ふと、彼女が話しかけてきた。
相変わらずの訛りの効いた発音。
すっと顔を上げる。
「なあに、レィ」
彼女──フリは応える。
親ゆずりの赤毛がさらりと揺れた。
「読んでておもろうないで、それな」
「そ、それはそうだけど…。
魔法史は必要だよ…?」
フリは言い淀む。
魔法史の本を閉じ、木の麓に置いた。
「はよウチはダンジョン行きたいねん!
ずっと地上にいるんやおもろなか!」
レィがばっと立ち上がって空を指差した。
青々とした空が広がっている。
遠くからは海のさざめきが聞こえた。
港町ならではの、空と海の境界線が溶けた地平線。
フリはそれで十分じゃないのかなあ、と首を傾げた。
「フリ、なんで最強のダンジョンさ近くにあんのに石掘ってなかあかんねん。
ウチな、将来絶対塔さ踏破すんじゃ!」
レィの勇ましいその発言に苦笑する。
「だめだよ!エレンの塔は危ないんだから…。
あたしは石掘ってても楽しいと思うけどな…」
そう言ってフリはそばの鶴嘴を撫ぜた。
レィと比べて、自分が臆病なのは承知済みだ。
「…相変わらずフリはブレへんなあ」
「そ、そうかな」
レィはそう言ってふっと笑った。
うららかな日差し、生暖かい潮風。
すべては、ここから始まった。




