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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者:
第二章 ゴブリンの王国
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羊とゴブリンとワイバーン



 午後の日差しを浴びながらどこまでも広がる草原に流れる雲。


 草木の香りや時折感じる甘い花の香をかき消す獣臭。


 メェェェエェェェェェェエ


 多くの毛むくじゃらな生物の叫びを間近で感じながらジンギスカンを頭に思い浮かべるマモル。エルエルは心残りがあるのかもう見えなくなったオークの村がある方角を見つめる。


「昨日はよかったねぇ……」


 昨日、治療や解呪に料理に加え犯人の逮捕まで行いオークの村で活躍をしたのだが、活躍しすぎるというのも居心地が悪く、村中のオークから感謝というレベルを超えた貢物を送られ苦笑いが止まらないマモル。


 その横ではふわふわと浮きながら胸を反らせるエルエルの姿があり、一瞬でも天使の姿になった効果は絶大らしく、オークのご老人たちからは手を合わせ祈られたり、赤ちゃんを抱いてほしいとお願いされたり、うちで収穫した芋を食べてほしいと懇願されたりと神様レベルの扱われたのだ。


 辺境の村の食糧事情を考えれば受け取るのも心苦しくなり、「一泊だけでもしていかないか?」というリラグラ善意を苦笑いで断ったマモルは皆に拝まれ宙で胸を反らせていたエルエルの片足を掴むと逃げるようにオークの村を後にしたのである。


「ボクとしては心苦しさの方が遥かに勝ったが、それよりオークさんたちが作るイモが美味しかったね」


「それは認めるねぇ。コロッケ、ポテサラ、肉じゃが、フライドポテトにじゃがバター。どれも美味しかったねぇ」


「昨晩キャンプで作った料理もアイテムボックスに入れてあるからさ、いつでも食べられるからね」


「イモ以外がいいのねぇ~」


「確かに……ジンギスカンの方が食べたいかも……」


 鳴き声を上げる群れた羊たちを横目に足を進めるマモルとエルエル。羊たちの首には識別番号が付いており集団で逃げてきたのか、それとも放牧されているのか判断できず狩らずにジンギスカンの味を脳裏で思いうかべさよならの言葉も脳裏で口にする。


「一匹ぐらいばれないと思うのねぇ」


 口角をニヤリと上げるエルエル。


 マモルは思う。こんなのが崇拝されてはいけないと……


「ほらほら、置いていくぞ。羊泥棒に間違えられるのも問題だからな」


 サッと飛び上がりエルエルの頭を右手でつかむとマイペースに歩き始め、所々に固まる羊の大群を遠目に見ながら草原を進む。進むにつれ起伏の富んだ地形へと変わり無数の丘と亀裂が走っている。


「変わった地形だね……」


 視線を走らせまわりの風景を楽しみ、つかんでいるエルエルにも見やすいよう手を放す。


「西の山脈から流れた雪解け水がこの草原を削ったのねぇ。下は迷路のような谷になっているのねぇ」


 ふわふわと浮きながら起伏の富んだ地形の説明を自慢げに終えると何かに気が付いたのか視線を谷に向け、そこへ甲高い笛の音とドドドという地震を思わせる地響きが広がる。


「羊がこっちに来るよ!」


「羊だけじゃないねぇ、アレにはゴブリンが乗っているねぇ」


 エルエルの指摘するように数匹の羊には鞭を持ったゴブリンが乗馬のごとく搭乗し、羊たちの先頭をかっ飛ばしている。


 ゴブリンはやや緑色の肌と子供ほどの身長に尖った耳が特徴的で、緑色の肌は草原に定住するゴブリンの保護色とされている。


「お前たちも逃げろっ!」


「後ろからワイバーンが襲ってくるぞっ!」


 鬼気迫る表情で危険を伝えるゴブリンライダーたち。羊たちも必死の走りを見せ二人の間を通過し、マモルは腰に装備しているナイフを抜き魔力を通す。


「ワイバーンから身を守るためにこの谷を使っているのねぇ」


 谷へ降りる坂道がありそこへと吸い込まれるように非難する羊たち。まだ多くの羊の塊が避難しており、それを助ける心算なのか地を滑るように走り出すマモル。


「ワイバーンは二匹なのねぇ」


 ナイフに魔力が充電されると銀色だった刀身が黄金へと変わり、天高くから頭を下げ降下するワイバーン。その姿はドラゴンと間違えられがちだが列記とした鳥類であり、鋭いクチバシに大きな羽の両腕と漆黒の体毛で覆われている。


「やっぱりカラスに似ているな……」


 前世では忌み嫌われゴミを漁り不吉の象徴とされていたカラスの姿に似ているが、その大きさは羊を一飲みにするほど巨大である。


 ちなみにここの羊も魔物の一種なのだが長い年月をゴブリンに飼育され続け戦闘よりも逃走する方へと進化している。


「早いっ!? 逃げろっ!」


 急降下するワイバーンはその速さから黒い線としか視認できず、ゴブリンライダーのひとりがあまりに早い急降下に絶望を覚えつつも黄金に輝くナイフを握るマモルを見つめ叫ぶ。


「逃げ方とか師匠に教わらなかったな……」


 急降下したそれは地面スレスレで急上昇するが喉には黄金のナイフが突き刺さりそれを握り続けるマモル。


「この高さから落ちたらさすがにちびるかも……」


 一瞬にして羊が豆粒に見える高さまで上昇し漏らさぬよう気合を入れながらナイフに魔力を追加で込める。


「破っ!」


 黄金に輝くナイフから魔力が四散しワイバーンの喉に致命的な外傷がうまれ、今度は急激に落下するのであった。







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