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少女スパイと七人の王様~異世界転生で手に入れた最強スキル「透明人間」で「スパイ」活動をしたらなぜか七人の王様に愛されました~  作者: リラックス夢土
魔王の章

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第21話 王家の魔法書に書かれていた文字



「ああ、貴方に戻りましたか、グレゴワール」



 オルシャドール殿下がクレアに向かってそう呼びかける。



 グレゴワール? この子はクレアじゃないの?



「まだ完全に戻ったわけじゃねえよ。この身体で俺の意識でいられるのは日に数回10分程度だからな。それでも夜中の0時には定期的に俺の意識へと切り替わるようにはなったが」



 クレアの姿をしたグレゴワールという人物は溜め息を吐く。



「仕方ないですよ。その身体の本来の持ち主は私とマディアの娘のクレアなのですから。まあ、クレアは貴方の生まれ変わりなので貴方自身でもあるといえばあるのですけど」



 え? クレアってグレゴワールって人の生まれ変わりなの?

 クレアがオルシャドール殿下の娘なのも驚きだけどその娘に前世の人格があるのはもっと驚きだわ。


 でもそもそもグレゴワールって誰なんだろ?

 オルシャドール殿下の話し方からするとオルシャドール殿下より目上の人のような気もするけど。



 エドからも「グレゴワール」という人物名は聞いたことがない。

 転生しているというならグレゴワール自身は一度死んでいるということだろう。



「別に俺だって好きでオルシャの娘に生まれた訳じゃないぞ。自分の弟の娘に生まれ変わるなんて正直気持ち悪いしな」


「私だってクレアが貴方の意識に初めて代わった時には驚きましたよ。でもそれと同時に神が私の願いを叶えてくれたのだと嬉しくなりました。再び、貴方と共にこの世界を征服する計画を進められるのですから」



 この世界を征服ですって!?

 オルシャドール殿下はこのグレゴワールという自分の兄と世界征服する気だったの!?



 見た目は温和にしか見えないオルシャドール殿下がそんなすごい野心を持っていたとは思わなかった。

 だけど私はふと思う。


 魔族は魔法が使える。今まで竜族の国と獣人族の国を回り人間にはない彼らの強大な力を見てきた。

 ギオンもライもすごい力の持ち主だったが魔族が使う魔法はさらに強大な力のような気がする。


 エドは全属性持ちのせいか様々なことができる。

 もしその力をこの世界を征服するために使ったらオルシャドール殿下の野望のように世界を征服できる可能性はある。


 今の魔王のエドはたぶんそんなことに興味を持たない気がするがこのオルシャドール殿下が魔王だったらと思うと背筋がゾクッとした。

 それにその兄だというグレゴワールという人物だって少なくとも王族だろうし魔力は強かったに違いない。



「ああ、そうだったな。そのために俺は魔王になったが……どうしても王家の魔法書にかかっている封印が解けなくて最後の属性が手に入れられず真の魔王になれないうちに死んじまったんだっけ?」



 え? グレゴワールって魔王だったの?

 ということはもしかしてエドたちの父親の先代魔王がグレゴワール?



「そうですよ。相変わらずご自分がなぜ死んだのか思い出せないようですね。貴方を真の魔王にするために私が王家の魔法書の封印に関わることを調査していた最中に貴方は「好きな女ができたから会いに行ってくる」と出かけて遺体で戻って来たんですよ。先代魔王の貴方がそんなにあっさりと死ぬなんて信じられませんでした。好きな女と言ったって当時既に三人の妃が貴方にはいたのにいったい誰を好きになったというのですか?」


「それが思い出せないんだよなあ。自分が死んだ辺りの記憶がなくってよ。オルシャと世界征服しようと言ってたことはよく思い出せるんだがなあ」



 やっぱりグレゴワールって先代魔王だったのね。

 だけどグレゴワールも王家の魔法書に書いてあると言われる最後の属性を手に入れられずに死んでしまったのには驚きだわ。


 グレゴワールが死んだ理由も気になるわね。

 三人の妃がいながら他に好きな女性ができたってその人に会いに行って死ぬなんて何があったんだろう。



 仮にも魔王だったグレゴワールをその女性が殺したとは考えにくい。

 けれど現実にグレゴワールは命を落としこのクレアとして転生した。


 そしてこのグレゴワールとオルシャドールの兄弟は世界征服を企んでいたがグレゴワールの死によってその野望は叶わなかった。

 だがグレゴワールが転生したことでもう一度この兄弟は世界征服の野望を叶えるつもりなのかもしれない。



「まあ、過ぎ去ったことはもういいでしょう。それより転生した貴方には今度こそ王家の魔法書に書かれている最後の属性を手に入れていただき魔王として復活していただきますから」


「そういっても今は俺の息子のエドが魔王なんだろ? エドも仲間に入れたらどうだ? その方が意識も力も安定しない俺が真の魔王になるより早く世界征服できると思うが」


「何を言ってるんですか! エドはいつも本しか読まない魔王の仕事すらしないできそこないですよ! あんな奴は貴方の息子であっても私は魔王などと認めません! 魔王じゃない者を仲間にするなど嫌です!」



 う~ん、魔王の仕事をしないのは事実かもしれないけど、エドはできそこないなんかじゃないわよ。

 少なくとも世界征服なんか企む貴方たちよりも魔王に相応しい人間よ!



「それなら仕方ねえな。やっぱり俺が魔王として復活するしかねえか。オルシャは全属性持ちじゃねえしな」


「そうしてください。私が全属性持ちだったら貴方の死後、私は魔王になっていましたよ。貴方がいなくなった後に残された者の中で全属性持ちがあのエドだけだったので仕方なくエドを魔王にしただけなんですから」



 なるほど。エドはそういう理由で魔王に選ばれたのか。

 ということは、カシムやキリルは全属性持ちじゃなかったのね。



「さあ、王家の魔法書を持って来ました。もう一度、王家の魔法書の封印が解けるかやってみてください」



 オルシャドール殿下はそう言って一冊の本を持っていた袋から取り出す。

 その本にはエドから教えてもらった紋章も描かれていた。



「うむ。前世では封印が解けなかったから今回封印が解けるか分からんが……」



 グレゴワールはオルシャドール殿下からその本を受け取った。



 王家の魔法書だわ!

 グレゴワールがこの魔法書に書かれている最後の属性を手に入れたら真の魔王になっちゃうかもしれない! どうしよう!



 私はどうするべきか焦る。

 このままグレゴワールが真の魔王として復活したらきっとこの兄弟は世界征服を始めるに違いない。



 そんなことはさせないわ!



 自分の存在がバレるのも覚悟して私はグレゴワールが呪文を呟くと同時にその本をグレゴワールの手から奪った。

 その場にいた者から見れば本が急に空中に浮かび上がったように見えただろう。



「なんだ!?」


「王家の魔法書が!?」



 彼らの驚く声が上がった瞬間、透明人間になっている私の手の中で王家の魔法書が光り出す。

 そして勝手に本が開きページがペラペラと捲られたと思ったらあるページを開いてその動きが止まった。



 な、なにが、起こったの!?



 その現象に私も驚いたがもっと驚く現象が起こる。

 開いたページから空中に文字が浮かび上がったのだ。


 その文字は間違いなくこう書かれていた。



『ミア・マクシオン』と。





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