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精霊少女の世界旅  作者: 雨森 裕也
第2章 城塞都市ガリスタ編
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指名依頼 再び

ラスカルはオークの巣であったことを全て報告した。


その話を聞いたギルドマスターは途中から頭を抱えて聞いていた。ラスカルが話し終わるとギルドマスターは大きなため息をついて1言。


「お前ら、よくそんな所から無事に帰ってこれたな。」


当然の感想だった。


普通のオークの巣ですらBランクでギリギリなのに、元々のボスであるブラックオークが上の階層で複数体出てくるだけじゃなく、そのさらに上位種が出てきたのだ。なのに、誰も怪我をすることも無く帰ってきたのだから、思わずそんな言葉が出てきても不思議のない出来事だった。


「それにしてもキングオークか。なかなか、いや、かなり大事になりそうな問題だな。王国にはもちろん、帝国にも情報が行き渡るだろうな。」


「そうだろうね。今までよりもボスが強力になって、ダンジョンボスが階層を上って繁殖するなんて前代未聞だから・・・」


「ああ、今回はユミルのおかげで大丈夫だったが、もし他のダンジョンでも同じことが起こってしまったら大きな被害が出てしまうかもしれない。」


「危険だね。でも、それを恐れて誰もダンジョンに行かなくなってしまう方が問題だよ。今回のダンジョンは繁殖力も全然違うかったから、すぐに増えて、あっという間に手をつけられなくなってしまう。」


「ラスカルの言う通りだな。これからどうすればいいのだろうか。」


「オークの巣はユミルがボスを討伐してくれたから今は問題ないとしても、他の所はどうか分からない。前代未聞のことだから、オークの巣についてもどうなるか分からないけど。」


「他のダンジョンも調査した方がいいかもな。異変があるのなら早めに知って対策しておかないと、手遅れになってしまうことだって考えられるからな。適正ランクよりも一段階高いランクのパーティーに行かせよう。」


「もし他の所でも同じような事が起こっていたら危険だし、いい判断だと思うよ。でも、それなら人手が足りませんよ。」


「そうだな、それが問題だ。今でも結構ギリギリなのに、全ての討伐依頼のランクを一段階上げるのは少し厳しいな・・・」


2人は考え込み、一時的に周りは静かになる。


これまでの間、ギルドマスターとラスカルは2人でどんどんと話を進めていった。それに比べて、私は横で聞いているだけだった。


「そうだな⋯⋯ユミルも手伝ってくれ。ランクはまだ無いが聞いた話によると、お前の実力ならこの辺りにあるダンジョンならどれでも簡単に攻略できるだろう。」


急に私に話を振られてしまったが、それまでの話をちゃんと聞いていたように振る舞う。


実際にはほとんど頭に入ってきていなかったのだが、意識していなくても名前を呼ばれた声が聞こえたからそこからは真面目に聞いた。


途中からだったが、話から察すると他のダンジョンの攻略についての話し合いをしているのだろうと思った。人手が足りないから私に頼ろうとしているのだろう。


「それっていつの話ですか?」


明日こそは都市内を観光しようと思っていたが、またお預けになるかもしれない。両親がこの国を救った英雄だったこともあり、私は困っている人をほおっておくことはできない性格になっていた。


「できれば明日からでも協力して欲しいんだけどな。協力してくれるなら私の権限でCランク冒険者として登録してあげよう。もちろん他にも報酬は沢山払うよ。」


(ギルドマスターの権限ってそんなに大きいものだったのか?Cランクといえば、多くの冒険者が引退するまでたどり着くことができないとされているランクだったはずだよね⋯⋯)


ここでは最底辺のランクだが、もっと西に行くとそこからは他の人からの見られ方も大きく変わるし、当然それだけの実力と経験、ギルドとの信頼関係も必要となってくる。そう簡単になれるものでは無いのだ。


「そんなことできるんですか?」


冒険者カードは今や世界共通のものとなっており、王国のギルドマスター1人で決めることができるわけがない⋯⋯はずだ。


「普通はできないだろうが、本部にも連絡をして許可を貰うよ。ユミルほどの実力でここで討伐依頼を受けられないのはもったいないからな。」


「分かりました。その話、引き受けましょう。」


(元々断るつもりは無かったが、ここまでしてもらって断るわけにはいかないだろう。)


「ありがとう。それで、これが今回の調査依頼の報酬だ。オークの素材や魔晶石はどれだけ取れたんだ?キングオークも見てみたいな。確認したら後でその分のお金も渡すからな。」


今まで現れたことの無いオークだから、王国への報告などに必要になってくるだろう。


いくら言葉でオークの新種が現れたと言っても、信じてもらえないだろうしね。嘘をついているとは思わないだろうけど、実物証拠を見なければ信じることもできないだろう。


「大量に取れたので、素材を出せる広い場所に行きましょう。」


私は立ち上がって、この前に来た何も無い部屋に行った。そこにはいくつかの冒険者パーティーがいたが、ほとんどのパーティーは素材の買取が終わっているようで、使われていない空いている部屋があった。


「ここに出しますね。オークの素材は1つも解体していないけど。」


解体されていた方が手間がかからず、売る値段も上がるのだが、解体はそれを仕事としている人達に任せることにした。


今までは自分で討伐していた魔物は自分で解体をしていて得意ではあるのだが、解体士にもちゃんと仕事を与えてあげないといけないしね。正直に言うと解体が面倒なだけなのだが、さすがにこの量となると仕事だとしてもできないかもしれない。


(やっぱり私も多少は手伝った方が良いのかな?)


私はそんなことを考えながら、最初にオークキングを取り出した。ギルドマスターはオークキングをしばらく観察した。


「初めての素材だから、どれくらいが相場なのか全く分からないな。他の素材も取り出してくれ。」


私は指示に従って順番に取り出していく。大きな山になったところでギルドマスターは私を止めて聞いてきた。


「あとどれ位あるんだ?」


「数で言えば今取り出したくらいの数はあるけど、ほとんどが普通のオークだよ。」


「そうか、あと半分くらいなら買い取れるか。」


ギルドマスターが安心しているところに、私はオークを出し終えて言った。


「次は魔晶石を出しますね。」


ギルドマスターは愕然として、一時的に声を出せずにいた。しばらくして、ギルドマスターが静かな声で聞いてきた。


「ちなみに何グラムあるんだ。」


私は魔法袋のボードを見た。


普通のものは数で表されるが、魔晶石は重さで表される。見てみると、4kg以上、と書かれている。私が初めて取った魔晶石は簡単に取り出せないようにロックをかけており、別の所にあるので、これはそれを省いた重さである。


魔晶石が重さで表されるのには理由がある。数で表せないのは当然のことだが、体積でも表すことができないのだ。同じ体積でも、魔力が凝縮されているものもあれば、隙間があるものもある。魔力は体の中にもあってとても軽いものだが、それでも集まれば少しだけだが重みを感じられる。軽いから普通ならグラムで表されるのだが、ここには[kg]と書かれていた。


私は、思っていたよりも集まったな、と思ったくらいで驚きはしなかったが、それを聞いたギルドマスターはとても驚いていた。


「そんなに買い取れるのか?」


そんなことを呟きながら・・・

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