151.彼の判断、私の抵抗
「という訳で、今後の予定がお決まりでないのでしたら、是非我が家に来ていただけませんか?」
そんなこんなで話はふり出しへと戻る。
目の前の少女からのお誘いは、先程の話もあったせいか、違和感なく本心であることだけははっきりと分かった。
じゃあ後はこちら側のお話だ。
「ですって」
彼女に対する答えを一旦保留にした私は、意見を求めるようにお隣のレイズ様に話を振った。
「どうします?」
「……」
レイズ様は何も答えない。
こういうのが正直一番やりにくい。
でも答えないってことは、それはある意味どっちでもいいっていう意思表示とも取れるわけだし。
「まあ」
ちらりともう一度だけレイズ様の表情を伺って、変化が無いことを確認してから、私が代わりに返答しようと口を開いた。
「こちらの懸念も無くなったことですし、招待して貰えるならその方が……」
「いや」
「いや?」
短い否定的な言葉。
レイズ様の温かみの無い声が静かに響いた。
というか、嫌なら嫌って最初からはっきり言ってくれ。
「いや……といいますと?」
私は恐る恐る訊ね返した。
そのままの意味として取るならば、招待を受けないことを意味している訳だけど……ん、招待を受けない?
「えっ、まさかお断りするつもりじゃないですよね?」
私は慌てて確認した。
いやそんな。
だって、宿無しの自分達を無償で招待してくれる。こんな破格な申し出を、あっさりと切り捨てるなんてそんな馬鹿な話、あるはずないだろう。普通は。
「……」
「レ、レイズ様???」
不安に駆られて『ねっ? ねっ?』っと二度三度ほどレイズ様とココネ嬢を見比べる。ココネ嬢はともかく、レイズ様からも今の私の質問に対して、好意的な返しをしてくれそうな素振りが全く無い。
――まずい。このままじゃこれで話が終わってしまう!
私はきょろきょろと動かしていた首の動きをレイズ様で止めると、覚悟を決めて訴えた。
「だ、だって私達、家も何も無いんですよ? 食料も無いし、移動手段だって無い」
咄嗟に思いつく問題点を挙げる。
私の馬鹿みたいにうるさい声だけが響いた。完全に一人だけ温度が違う。
いや、今はそんなことはどうだっていい。
「そんな中、私達がこれからどうやって生活出来るっていうんです!」
衣食住の整わない環境での生活。そんなのは無理だ。たぶん絶対に。
「うるさい」
「ええー」
悩む間もなく、ぴしゃんと扉を閉めるように、レイズ様は会話を打ち切った。
「家ならあるだろ」
彼はサラリと言った。
「家が……ある? えっと、どこに?」
そんなもの、さすがの私の収納魔法でだって出せないからね。
疑い深く見つめる私に、レイズ様は気にも止めないような表情を浮かべてから地面を指さした。
「ここに」




