14話
「まぁまぁ、アイ・ハさん、納得のいくフォームになったんでしょう?」とメハシ君。
「う〜。それはそうなんだけど」
「なら、よかったじゃないですか」と慰められる。
「そうそう、レベルアップしてるんだから、効率よく戦えるかもしれないだろ」とサダ君も言ってくれる。
 
「ふぅ。まぁ落ち込んでも意味はないかもね」たしかに完全に無意味ではないかもしれない。ちょっと効率よくなかったっていう話だ。
 
「それで相談というのはギルドに弓兵は1人で十分なら、ここからは別行動にするということ?」と聞いてみる。
どれだけ仲良く遊んでも、場所が変われば、すぐに別れてしまうこともあるのがネットワークゲームだ。ここでサダ君、メハシ君と別れても、また会うこともあるだろうし、その時に仲良く遊べればよいなと思う。
 
「いやいやいや、そうじゃない」とサダ君。
「ん? でも今は遠距離タイプはギルドに1人って言ってたじゃない。」
「えぇ、僕も不思議に思ってるのですがサダさんは3人遠距離がいる方が効率が上がると言うんです。」メハシ君もよく分かっていないようだ。
「あぁ、まあ細かい事は後で話す。けど今回は防衛クエストだからな。普通のRPGの戦闘とは違うはずなんだ。遠距離職の立ち位置を変えれば効率は違ってくる。。。と思う」
「えー!確実じゃないの?」
「まぁ、サダさんも実際にクエストをやってきたわけではないですから。でも遠距離職が弱いと思われてるのは悔しいじゃないですか?」
「と言うか、弱いはずないんだ。話を聞いてる限り、やり方さえ間違えなければ手数は一番多いはず。そこを活かせてないだけのはずだ」
「はずばっかりね。でも、まぁ良いわ。弓、今はスリングショットだけど、ともかく弓を使うのが強いという風になるなら、やってみたい」
 
なんだかんだ言っても弓が好きだから、このゲームをしているのだ。弓が弱いと言われるより、強いと言われる方が絶対に嬉しい。
「そうか!助かる。射程距離が大事な筈なんだよ」
「ま、作戦も詳しく聞きたいけど。まだスリングショットなんだから、『こんな筈じゃなかった』と言うのはなしよ」
「ん?」
「はい?」
「いい?筈というのは弓道用語で矢を弦にはめる部分、矢の一番後ろにある弦の太さに合わせた切れ込みのことを言うのよ。『こんな筈じゃない』と言うのは弦の太さと筈の切れ込みが合わない時に矢が射てなくて生まれた言葉なの」
「へぇ」
「ふむふむ」
「だから、まだスリングショットの内は矢羽も筈もないのだから、言い訳無しで勝ちに行くわよ」
「話が回りくどいが、結論は分かった。勝てる戦いにするぞ」
「そうね!やってみせましょう」
「僕もがんばります!」
 
そうして3人でもうしばらくゲームを続けることにした。不思議な縁だなと思う。偶然、スタート地点で出会っただけなのに、3人共ゲーム内で弱いとされる遠距離職で一緒に遊ぶとはね。
そんな感慨深い気持ち、やる気にみちた足取りで3人で出口に向かう。
 
「お待ちくだされ。アイ・ハ殿、サダ殿、メハシ殿!」とSK-1984さんがとめてくる。
「なに?」ちょっといい感じの所なんだから、このまま行かせてほしかった。
「うむ。スリングショットは練習では無償でお貸し出ししております。ですが、外に持ち出す場合は買い取りか、レンタル料を払ってもらう必要がありますぞ」
「・・・え?」
「むむ。聞こえませんでしかな?スリングショットを外に持ち出す場合は買い取りか、レンタル料を払ってもらう必要がありますぞ」
「買い取り、レンタル料?」
「はい!」と良い笑顔で答える1984号さん
 
「なにそれ?聞いてないんですけど」
「むむ。そんな筈ありませんぞ!お貸し出しする時に説明しましたぞ」
「ここで『筈』がでてくるなんて!そんなアホな」
ちょっと短くなってしまいました。
安定して同じ字数にするのは難しい。
そろそろ本格的に戦闘シーンですが、うまくかけるかな
 




