13話
はぁ、調子に乗ると外すのねー。
何がいけないのか、まだ明確にはわかんないけど、ちょっと考えてみよう。
顎下にアンカリングした時は玉は的の上にいく、唇の横にもってくると玉が下にいく。うーん。矢がどこに飛んで行くかは、左手によって決まる。アンカーの位置を変えたことによって、狙いよりも下に飛んで行くなら、そのぶんを左手で感覚的に上を狙おう。
「左手は添えるだけ」という名言があるが、弓はむしろ弦もひく右手がそえるだけくらいに柔らかい方が良いとされる。ま、簡単にはできないし、私もムリだけど。
左手は銃口であり、砲身にもなる。狙いをつけるのは目だけじゃなくて左手でやる感覚なのかなぁ、と思いながら練習していく。
何射も練習を重ねているとだんだんと分かってきた。18メートルだと思ったより水平に射って大丈夫のようなんだけど、アンカーを唇にもっていくと水平より下向きになってしまうようだ。なので、左手で修正してあげる必要がある。
普段の射型より、すこし左手も上にする、でもあげすぎちゃダメ。
そして、的の中に当てられるようになったし、命中率にかんしてはこれで満足すべきかな。
最大ダメージにもスリングショットでは限界があったように、命中率も限界があるかもしれない。道具のせいにして自分の射型がダメかもしれないという現実からは目をそらそう。そうしよう。
まぁ、でも矢羽もないのだから命中率が悪いのは仕方ない。しょうがないのだ。
初歩としてスリングショットなのは納得できるが、やはり弓矢の方が格好良い。はやく弓を買いたい。
そういえば、このゲーム、どうやってお金を稼ぐのかな。ここまで粉挽きの生産活動もボランティアなのか、お金はもらえていない。
そうして練習をつづけると無事に戦闘職のレベルが上がった。これでレベル3だ。
「ふぅ」
ちょっと疲れたので休憩しようかな。きりもよいし。ゲームはやっぱり強い方が楽しいから経験値は稼ぎたいけど、ゲームでストレスためるくらい頑張りたくはない。
そんなことを考えていたら、
「やっぱり僕らより上手いですね」
「まぁな、たしかに。教えてもらったことのお手本になるわな」
と近射していたはずの二人が見に来ている。
「どうしたの?二人共、自分たちのレベル上げはよいの?」
「あぁ、2レベルにはなれたんだがな」とサダ君が言い、
「はい、次のクエストが開放された件で相談がありまして」とメハシ君に持ちかけられる。
「次のクエストはギルド加入か、結成しなさいってやつ?」ちゃんと読んでなかったけどレベル2に上がった時に端末にそういったメッセージが来ていた。
「はい、そうです。どうもギルドの結成自体は街の広場のNPCに話しかければ出来るようなんですが、その次の事に問題がありまして。」とメハシ君が続ける。
「ギルド結成の次?どうして、その次に問題があるのが分かったの?」
「最大ダメージはメハシ君より、俺のほうが高かったみたいでな。レベルは早く上がったんだよ。それで周りで練習している人達からも情報収集したんだ。」とサダ君がフォローする。
「へぇー。気づかなかったけど美人のプレイヤーでもいたからナンパしたわけじゃないの?」ちょっとからかってみる。
「ちがうわ!美人にはナンパはするかもしれないが、迷惑行為はしない!させない!品行方正な清純派なんだ!俺は。」とサダ君が憤る。
「うーん。ナンパ失敗しただけじゃないのね」
「ナンパの失敗はありえない!今のところ近射でも百発百中の男だからな、俺は」
「近射の距離で外すほうが難しいわよ。」ナンパの失敗はスルーしよう。
「サダさんの情報収集の結果、遠距離タイプはギルドへの加入を断られる事が多いみたいなんです。」と、とーとつにメハシ君が話を元に戻す。
「えぇ!そーなの?」びっくりね。スリングショットじゃ嫌がられるって事かしら。
「既存のギルドに断られるだけじゃない。弓タイプだけでギルドを結成しても、その後もキツイみたいでな」とサダ君も話に戻ってくる。
「うぅん。ちょっと分かんないんだけど。なんで弓が不人気なの?」初期の練習場のわりに人が少なかったり、18メートルの距離で弓を射っているのは私だけで他の皆は近射だったりする。だからゲーム内人口として弓タイプが少ないのは予想できた。というか、RPGでは弓を使う人より剣や魔法を使う人が多いのが普通だ。
でも、
「加入を断られるってのは変じゃない?」
「絶対に入れないわけじゃないんだが、ギルドに1人で十分という風に思ってる連中が多いんだ。」とサダ君。
「一人ぼっちはさみしいもんね」
「いや、そーゆー話じゃなくてな。って言うかギルドには5人いるけど弓が1人なのな」とサダ君は乗ってこない。
「ギルドにもレベル・発展度があるみたいなんです。それが1のうちはギルドメンバーは最大5人に制限されてしまうみたいなんです。」とメハシ君が説明を続ける。
「そして、ゲームの進め方は大雑把に二通りの進め方があるんだ。一つはこの街を襲ってくるモンスターと戦う防衛クエストを受ける。こっちだと遠距離タイプの出番はあるんだが近距離タイプ、中距離タイプにくらべてダメージが低い。だから一人で十分と言われる。」とサダ君が残りを説明してくれる。
「なるほどねー。」弓が弱いのは残念だけど、効率的な編成を組みたい人の気持ちも分かる。弓兵は一人いるからと断る方が悪いわけでない。あえて言えば運営側が初期は5人と少人数にしてるのが悪いのだ。
100人の中で1人くらい効率が悪くても、たいした影響はない。5人の中の1人が効率が悪いのは困ってしまう。
アーチェリーの大学別対抗試合だとそれぞれの学校上位5人の得点で勝敗を争う。人数の多い大学で下手な人がいても試合に勝てるが、5人しかいない学校は全員うまくないと勝てないのだ。
と、関係ないこと考えていると、
「もう一つの進め方が本道なんだが、街の外に出て開拓地を作るわけだ。こっちを進めればギルドレベル・発展度もあがって人数も増やせる。でもな、」とサダ君。
「でも、その開拓地の拠点となる場所はモンスターに勝たないと手に入らないってわけね。」と私もそこは知っている。
一応、そこはβテストの動画でみた。というか、βテストの戦闘で一番盛り上がった場面だ。
「けど、困ったことにβテストの時には開拓地のモンスターに勝てた連中が連続して失敗したらしくてな」とサダ君。
「たぶん、βテストの時より戦闘職レベルも低い状態でスタートしてるのが原因だと思うんですけど」とメハシ君。
「それで開拓の方を進められないから5人ギルドで防衛クエストをクリアして、お金や経験値を稼いでるってわけだ」とサダ君が説明を終える。弓を武器にするとがギルドにはいりづらい理由は分かった。
「うーん。だいたい分かったけど、そうだ、、、」相談ってのは何?と改めて聞こうとして大変なことに気づく。
「はい、相談というのはですね」とメハシ君が切り出そうとしているが、聞き捨てならない言葉があったのだ。
私はがしっとサダ君の肩をつかむ。
「サダ君、防衛クエストで『お金と経験値』も『両方』かせげるの?」と確認する。
「あ、あぁ。俺もクリアしたわけじゃないけど、そういう話だぜ。」とちょっとびっくりしながらサダ君が答える。
「それなら私、ここで練習してないでそっちに行ったほうが良かったことじゃない!?」
「うん、まぁ、そういう考え方もあるな。」とサダ君も勢いに押されたかのようにうなずく。
「なんてこと!私の練習時間は無駄だったの?そんなアホな!」




