表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死後も現世で働きます!?  作者: 儚井 陽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/7

馬鹿と美食家は紙一重

――某市役所・幽霊総務課


その日、荷物が届いた。


段ボールに貼られたラベル。


【農場班より】

高未練濃度野菜(試食用)

取り扱い注意


――嫌な予感しかしない


箱がかすかに動いている。


「零さん、受領印お願いします。」


私はため息をつきつつ受領印を押した。


――ドクン


中から音がした。


「生きてませんよね?」


「……野菜です^^」


「なんの間ですか今の…」


箱を開けるとそこには農場で見た紫黒い白菜があった。

葉の間からはもやもやしたオーラが漂っている。


「農場の失敗作です。

心霊スポットから回収した負の感情エネルギーが濃すぎたそうです。」


「ああ、あの“夜中に来たカップルが別れ話して帰る場所”で定番の…」


「ええ。未練と嫉妬と自己嫌悪のブレンドです。」


――最低なブレンドだな…


つまりこれは負の感情がたっぷり注がれた野菜。


「廃棄でいいですか?」


「いえ!」


背後から低い声。


「めったにお目にかかれない香ばしい香り!

それを待っていました。」


振り向くとそこにいたのは細身の男の幽霊。


首にはナプキン。

手にはフォーク。


「…誰ですか?」


「わたくしは幽霊グルメ研究会の創始者…

まあ会長とでも呼んでください。」


「そんな団体あるんですか!?」


「失礼な!

我々は味を追求する者だ。」


「死んでますよね?」


「えぇ…だが味覚は死んでいない!」


名言みたいに言うな。


「この白菜からは素晴らしい未練の香り!

トップノートは嫉妬が、

ミドルには後悔が、

そしてラストに微かな自己否定…」


「…ワインみたいに分析しないでください。」


会長はうっとりしている。


他の幽霊たちはいつの間にか距離を取っていた。


「零さん、調理お願いします。」


「なんで私が!?

食べたいなら会長がすればいいでしょう!?」


「あなたは総務ですから。」


「総務を便利屋か何かと間違えてませんか!?」


使われていない給湯室。

包丁で白菜を刻む。


ザクッ、プシュー…


黒い煙が立つ。


「うわっ目に染みる!」


「それはあふれんばかりの未練です。」


「玉ねぎより厄介!」


鍋に入れるとぐつぐつと紫色に煮える。


「これ、保健所案件じゃないですか?」


「幽霊に腹痛という概念はありません。

さあ、まずは試してみてください。」


味見を促される。


「いやです。」


「そんなこと言わずに」


「絶っ対にいや!!死んでもいや!!」


周囲の幽霊たちがニヤニヤしている。


「零ちゃんもう死んでるからいけるね!」


「うるさい!」


覚悟を決めて一口。


ぱく。


――うっ!


頭の中に映像が流れ込む。


『あの時LINE返さなきゃよかった』

『なんであんなこと言ったんだろう』

『あんな奴に幸せになってほしくない』


「重い!! 感情が重い!!」


鍋を抱えてうずくまる。


「どうですか?」


会長が目を輝かせる。


「……後味が最悪です。」


「最高の褒め言葉だ」


「どこが!?」


会長は優雅に一口食べる。


「……くっ、これは攻めている!

舌を殴る未練が口いっぱいに広がる…!」


「それ誉め言葉ですか……?」


「だがまだ甘い!

もっと純度の高い絶望が欲しい!!」


「何を目指してるんだこの人…」


総務課長がメモを取る。


「ふむふむ…高未練濃度野菜は一定需要ありっと。」


「商品化する気ですか!?」


「まあ…財源確保?」


「役所らしい理由やめて!」


その時、鍋がボコッと爆ぜた。


黒い液体が天井に張り付く。


「うわあああ!」


「ヤバい!換気 換気!」


「零さん緊急速報!」


「なんで私!?」


反射的に叫ぶ。


「只今、室内で負の感情が暴走しています!

窓を閉鎖し未練拡散防止に努めてください。

書類が侵されないよう避難させてください!」


幽霊たちが一斉に動く。


数分後。


「ふー何とかなりましたね。

ほんとに大丈夫なんですかこの食材…」


「これもまたグルメの醍醐味というやつですね。」


「そんなわけはない!!」


その日の報告書。


・禍々しい白菜、試食成功

・一部爆発するも被害軽微

・グルメ層に需要確認

・調理時は感情漏出対策必須

・驚衣零、やっぱりおもしろい


「消してくださいその一文!」


「零さんは見ていて飽きないですから。」


私は机に突っ伏した。

幽霊なのに胃もたれしている気がする。


死んでもなお、人は未練を味わうらしい。(物理的に)


――幽霊にも偏食家は存在してしまうんですね…

ご愛読ありがとうございます。

投稿頻度はめちゃめちゃ遅いですが、温かい目で見守っていただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ