総務課という名の万事屋
――なぜだろう
私、驚衣零は市役所三階・コピー機横という絶妙に誰も注目しない場所で幽霊用の書類を淡々と仕分けていた。
「未練相談一次対応……成仏延期申請……あ、これは『まだ言ってない告白』案件……」
紙を揃える手は止まらない。
自分でも怖いくらい止まらない。
「零ちゃん早いねー」
「もう終わったの?」
振り向くと同じ総務課の幽霊たちが若干引いた目でこちらを見ていた。
「え?あ、はい。種類ごとに分けて未練の重さ順に並べ替えて、期限が近いものに付箋を……」
「…怖、何者?」
ーーえ、今の褒められるところじゃないの?
私は幽霊だが怖いものは普通に怖い。
心霊スポット?無理。
鏡に映る自分?たまに無理。
でも...
「総務の仕事、向いてるよね」
その一言を皮切りに歯車が回り始めた。
「零さん!この未練相談、感情が絡んでて面倒なんですけど...」
「なるほど。感情系は一旦“泣いてもOK枠”に入れて後で聞き取りしましょう。」
「驚衣さん、この部署間のヘルプは誰出します?」
「移動距離と消耗度的に今日は警察より農場の方が安全ですね。」
「零様、心霊スポット部署からクレーム来ております。」
ーー零様...?
「『驚かせ役が怖がりすぎる』……あ、私のクレームですね...」
私、いつの間にか総務の便利屋みたいな扱いになってない?
「いやー、零ちゃんさ」
課長(享年72歳・元公務員)が腕を組む。
「幽霊社会ってね、基本ゆるいんだけど、放っておくとすぐカオスになるんだよ。」
「は、はあ……」
「そこをさ、零ちゃんは誰もやらないことを淡々と、
しかも文句言わずに正確にやる。」
周囲の幽霊たちが一斉にうなずく。
「やめてください!!」
思わず大声が出た。
「それ、褒め言葉じゃなくて呪いですよね!?」
「え?」
「え?」
きょとんとする幽霊たち。
「総務って“何でも屋”じゃないですか!
仕事が増えても『まあ総務だし』で流されるやつですよね!?
生前の会社でもそうでしたからね!? 私知ってますからね!?」
「……あー」
「生前のトラウマだ」
誰かが納得したようにつぶやいた。
その時、別部署の幽霊が走り込んできた。
「すみませーん!心霊スポット部署で人手足りなくて!
あと警察から未登録幽霊の書類戻ってきてて!」
「農場から『感情エネルギーの流量調整』の相談も!」
課長がにっこり笑って私を見る。
「零ちゃん、行ける?」
「行けません!!!」
……と言いたかった。
でも口から出たのは
「…順番に整理します」
だった。
「ほら!」
「今の!」
「総務の才能!」
「やめてぇぇぇぇ!!」
幽霊なのに魂が削られる音がした。
――消えちゃうから!
これ以上やらせたら私、消えちゃうからね!?
ご愛読ありがとうございます!
最近いろいろと忙しくて小説書くのに苦戦してしてしまいました、、
ですが書きたいネタはまだたくさんあるのでゆっくりでも投稿は止めずに頑張ります!




