最終話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
樹霧之介達は道場で互いに組み手をしており、陽葵は志乃に教えられた封呪符を書いて、志乃はそれを見ていた。
陽葵「できたよ。これで良い?」
志乃「そんな字で良いわけないだろ。」
陽葵「上手くできていると思うんだけどな。」
志乃「それで発動させたら暴発するぞ。やり直し。」
陽葵「これ結界符より細かくて書くのに時間掛かるの。それに何で私だけ机に向かわなきゃならないの?」
志乃「嫌ならやめても良いぞ。」
陽葵「むー。やるけどさ、気分転換に私もあっちに混ざりたい。」
志乃「お前があそこに混ざると樹霧之介達の邪魔になる。」
陽葵「なら教えてよ。警棒の使い方教えてくれるって言ったじゃん。」
志乃「教えた札、全て書けるようになったらな。」
陽葵「えー。」
風見「なあ、今良いか?」
志乃「何だ?」
風見「ワイ、妖力増えたから新しい術を覚えたいんだ。」
志乃「なるほど。なら、風だけではなく音を扱ってみるか?」
風見「音を扱う?聞くだけじゃないのか?」
志乃「お前はもう、音を遠くに響かせる事はできるだろ。」
風見「できるがそれは風に乗せて飛ばしているんだぞ。」
志乃「風に乗せる事ができてるんだ。他の使い方もできる。」
風見「そう言ってくれるならやってみる。」
陽葵「私は?」
志乃「お前はもう少し綺麗に書けるまで続けろ。」
陽葵「体動かしたいー。」
志乃「、、仕方ないな。雫、今いいか?」
そう呼びかけると茂蔵の相手をしていた雫が組み手を止めて志乃の方へかけて来た。
雫「どうしたの?」
志乃「雫は新しい術、覚えたいか?」
雫「、、そうね。最近結界の活用法は自分で研究はしてたけど新しい術って程ではないのよね。」
志乃「こんなのとかどうだ?」
志乃は人魚の姿に変わって水を出すとそれを人の形に整える。
志乃「単純だが難しい。だが囮に使えるし、霧と併用すればより使えるだろ。」
雫「そうね。動かす事ができればより使えそうだけど。」
志乃「慣れれば動かせるぞ。」
志乃は水人形を動かしてみせる。
陽葵「えっと、色々と聞きたい事があるんだけど、まず浜名瀬さん、それは?」
陽葵は志乃の尾鰭を指差す。
志乃「陽葵には見せてなかったか。まあ、事故でな。」
陽葵「どんな事故!?」
志乃「それで雫にはこれを作ってもらって陽葵には目隠しをして雫を当ててもらう。」
雫「なるほど。」
陽葵「あ、え?話進めないで、私はまだ納得してないよ。」
志乃「なら札書くか?」
陽葵「やります。雫さん、探します。」
志乃「まあ、雫にはしばらく練習してもらってからだからしばらく陽葵には札を書いてもらうけどな。」
陽葵「えー。」
志乃「だから陽葵は手を動かせ。私達は部屋を濡らさないために外でコツを教えるから。雫行くぞ。」
雫「ええ。」
志乃と雫が移動すると陽葵は机には着いたがすぐ後ろの庭で雫に水人形の作り方を教える人魚の姿の志乃を横目でチラチラ見ていた。
雫は水を塊にするところまではできるがそれの形を変える事に苦戦している。
しばらくして志乃が陽葵の進捗を見に来た。
志乃「どこまで進んだ?」
陽葵「あ、えーと、、」
志乃が気になり集中できなかった陽葵の作業は全然進んでいない。
志乃「私が見ていないからと手を抜いたのか?」
陽葵「違うもん。ちょっと、気になってただけだもん。」
志乃「何が?」
陽葵「浜名瀬さんから尾鰭が生えてた時は妖気も出てるし、、妖怪に、なっちゃったんだよね?」
志乃「今はお前にとってどうなんだ?」
志乃は歩く為に今は人の姿だ。
陽葵「今は人間だけど、、」
志乃「何が嫌なんだ?」
陽葵「なんか、どんどん遠くに行っちゃうな、と思って。」
志乃「まあ、今度海を泳いで他の国に行こうとは思っているが、お前の学校が休みの時はできるだけ戻って来ようとは思っている。」
陽葵「え、何それ。初耳なんだけど。」
志乃「これも言ってなかったか?」
陽葵「ずっと一緒にいれない事は分かってるし、浜名瀬さんの邪魔はしたくはないけど、、」
志乃「けど、何だ?」
陽葵は少し考えてから口を開く。
陽葵「他の国に行くにはパスポートとか必要だよ。ほら、不法入国とか駄目だよ。」
志乃「バレなければ問題じゃない。」
陽葵「いや、問題はあるよ。犯罪だからね。」
志乃「お前が不安なのはその事だけか?」
陽葵「、、ねえ、浜名瀬さん、人魚なんだよね?私も人魚の肉食べたら不老不死になるかな?」
志乃「何だ?食べてみたいのか?」
志乃は陽葵の前で人魚の姿になり、尾鰭を見せる。
陽葵「え、ええ!?」
雫「ちょっと、浜名瀬さんは止める方の人でしょ!」
後ろから見ていた雫は堪らずに止めに入る。
志乃「別に私の肉を食べたとしても不老不死にはならないから平気だ。」
雫「いや、そういうことじゃないから。」
陽葵「私も浜名瀬さんを食べたい訳じゃないよ。」
雫「だけど別の意味でなら、、」
陽葵「え?」
志乃「?」
雫「あ、忘れて。」
志乃「まあ、例えどんな効果があろうとも、緊急時以外にそれはさせないさ。」
志乃は静かに人の姿に戻る。
雫「なら何であんな事言ったの?」
志乃「半分は冗談だ。」
陽葵「半分は本気だったの?冗談だとしても、私、浜名瀬さんを食べるなんて嫌だよ。」
志乃「お前から言い出したんだろ。半分はそんな事言ったお前の気持ちをハッキリさせたかったんだ。」
陽葵「、、うん、私は食べたくない。浜名瀬さんが離れていく気がしたけど、それが普通だよね。人間は変わっていくんだから。」
志乃「そうだな。それで私が来たのはお前に雫の水人形を見分けれるか試す為に呼びに来たんだが行くか?」
陽葵「行く!」
雫はまだ1体しか水人形が出せないうえに見た目ですぐ分かってしまうので陽葵は目隠しをして雫と水人形の間に立つとすぐに雫の方を指差す。
雫「何で分かったの?」
陽葵「えっと、遠くだったら気づかなかったけど、この近さだと見えなくても水音がする。」
志乃「まだ安定してないからな。妖気の方はどうだ?」
陽葵「分からない。えっと、集中すると微妙に違うのは分かるんだけど、本物がどっちかは妖気だけではまだ分からない。」
雫「まだなのね。なら安定させても見抜かれそうね。」
志乃「そっちは2人でできそうだな。私は風見の方見るから頑張れよ。」
雫「私は良いけど、陽葵は私に付き合わせて良いの?」
陽葵「良いよ。お札書くよりこっちの方が楽しそう。」
志乃「あ、雫の練習中は札書くの進めておけよ。」
陽葵「え。」
雫「ごめんね。今のままじゃすぐ見抜かれるからもう少し練習してからまたお願いするわ。」
陽葵「分かった。とほほ。」
陽葵は落ち込みながら机の前に座り、雫はまた水人形を作る練習に取り掛かる。
志乃は風見と新しい術のアイディアを出して練習に付き合ったり、組み手に参加したりする。
それから日が経ち、志乃は出発する為に海に来ていた。
真琴「ちょっと、何で1人で来ているの?」
茂蔵「そうだ。一言声掛けてくれてもいいだろ。」
志乃「陸に着けばすぐ戻るぞ。」
樹霧之介「それでも、見送りくらいさせてください。」
焔「黙って行くなんて寂しいだろ。」
志乃「いや、だからすぐ戻るんだって。」
雫「旅の安全くらい祈らせてよ。」
風見「そうだ、そうだ。すぐ戻るとしても、ワイらが付いていけないとしても、このくらいはしたいんだよ。」
今日は入学式なので学校のあるもの達はいないがほとんどのもの達が見送りに来ていた。
志乃「、、悪かった。」
山姥「まあ、仕方ないだろ。潮埜が村を去る際も最低限の挨拶だけしていつの間にかいなくなっていた。後から悪気は無かった事は分かったがな。」
篁音「志乃さん。間に合いましたね。」
志乃「お前も来たのか。」
篁音「ええ。この前、野々香が世話になったので餞別を持って来たんですよ。」
志乃「有難いが荷物にはしたくないな。」
篁音「大丈夫ですよ。開けてみてください。」
志乃は篁音に渡された包みを開けてみるとそこには上部だけの水着が入っていた。
志乃「水着?」
篁音「ええ。龍の鱗から作った物なので耐久性があり、泳ぎも邪魔しないと思いますよ。」
志乃「龍の鱗なんてよく手に入ったな。」
篁音「あなたへ渡す水着の素材を探していたら空を飛ぶ白龍から降って来たんです。心当たりはありませんか?」
雫「もしかしてあの時の白蛇?」
篁音「ありそうですね。」
志乃「ありがとう。」
真琴「けど、何で水着?」
篁音「志乃さん。何着て行くつもりだったんですか?」
志乃「ん?服着てたら泳げないだろ?」
山姥「昔は泳ぐ時は何も着なかったからな。」
樹霧之介「篁音さん、ありがとうございます。」
篁音「いえいえ。」
真琴「浜名瀬さん、ちゃんと着てから出発してね。」
志乃「分かった、分かった。」
そう言って志乃はその場で脱ごうとするので雫は慌てて霧を出して志乃の姿を隠す。
樹霧之介は志乃が服に手を掛けた時点で手で顔を覆って下を向き、それを見た茂蔵と風見も察して別の方を向く。
雫「ちょ、着替えるのにも周り見てよ。焔もあっち向く。」
志乃「別に知っているものしかいないだろ?」
志乃は落ち付いて着替えると、着替えた服を小さく開けた入り口から隠里にしまう。
雫「問題はそこじゃない!」
真琴「早く足も尾鰭に変えて。」
尾鰭に変えると歩けなくなるので志乃は海に飛び込み人魚の姿に変わった。
志乃「これで良いだろ。」
真琴「他のところでしたら駄目だからね。」
雫「ここでも駄目よ。」
志乃「なら着替えは隠里の中でするか。」
雫「そうしてちょうだい。」
樹霧之介「それで、いつ頃戻って来ますか?」
志乃「そうだな。少し寄り道もしたいから2週間後には戻ると思う。」
樹霧之介「それは、やっぱりあそこですか?」
志乃が来ていたのは祠のある洞窟近くの海岸で、ここから惣領の拠点へも行ける場所だ。
志乃「もう何も無いとは思うが、あの空間をそのままにもしておけないからな。」
樹霧之介「そうですね。気を付けて行って来てくださいね。」
志乃「ああ、妖ノ郷を頼むぞ。」
樹霧之介「はい。」
風見「ワイらもいるからな。こっちは心配するな。」
茂蔵「任せとけ。」
篁音「ほら、いつまでも話していたら出発できませんよ。」
雫「気をつけてよね。」
真琴「怪我とかしないでね。」
志乃「すぐ治るんだが、、まあ、気をつけるよ。」
樹霧之介「いってらっしゃい。」
志乃「行って来ます。」
志乃は手を振ると海の中へ潜って行った。
見送るもの達も手を振りかえし、志乃が見えなくなってからもしばらく海で様子を見ていると遠くの方で不自然な波が立つのが見えた数分後、海面でイルカくらいの大きさの何かが跳ねてまた海へと戻る様子が見えた。
山姥「ちゃんと過去と決別できたみたいだな。」
雫「無事に陸まで着くかしら。」
焔「心配ならそいつで連絡取ればいいじゃん。」
焔は雫の懐に入っている紐声環を指差す。
雫「今出発したばかりなんだからするわけないじゃない。」
樹霧之介「志乃さんは志乃さんなりに心配かけまいと一度海面まで来てくれたんです。特別な事が無い限り無茶な事はもうしないと思いますよ。」
焔「その特別な事があったらどうするんだ?」
樹霧之介「えっと、、」
山姥「あいつの過去の事は今回の事で片は付いたし、あいつはここに居たいとも言っていたんだろう?ならお前らを優先してちゃんと戻って来るさ。」
樹霧之介「そうですよね。」
それから2週間が経つと志乃は言った通り隠里に戻って、妖ノ郷にある樹霧之介の家に顔を出していた。
柚子「あら、戻ったのね。どうだった?」
樹霧之介「志乃さん、おかえりなさい。」
志乃「海の中は意外と暗かった。少し深くまで潜ったが夜目の効かない場所もあっていつもの癖で3号呼び出しそうになったな。」
柚子「それは大変だったわね。」
志乃「そこで気づいたんだが、人魚の鱗に妖力注ぐと光るんだ。」
柚子「何それ。」
志乃「見せた方が早いな。」
志乃はそう言って1枚の鱗を取り出す。
黒根「やっぱり鱗は消えんのじゃな。」
志乃「前の鱗は呪いを吸って形が保たれていたが今回は剥がしてからすぐに妖力を注ぎ続けたせいだろうな。」
樹霧之介「鱗、剥がしたんですか?大丈夫なんですか?」
志乃「あ、剥がれかけていたやつだから。」
柚子「掌こっち向けてるから嘘ね。」
志乃「いいだろ。このお陰で海中を迷わずに進めたんだから。それに人にしたら毛を1本抜くようなもので体を傷つけるようなものじゃない。」
黒根「今に始まった事じゃなかろう。それでそれに妖力注ぐとどうなるんじゃ。」
志乃「今の私にはできないから1号を呼ぶか。」
樹霧之介「なら僕がしてもいいですか?」
志乃「ああ。」
志乃が樹霧之介に鱗を渡すと樹霧之介は鱗に妖力を集中させる。
すると鱗から眩い光が放たれて辺りを照らし、その光を近くで見たものは目が眩んでいた。
樹霧之介「こ、こんなに光るんですね。」
志乃「ああ、少しでも多く注ぐと強く光るから私も初めは調整に苦労した。両手を使うために咥えているから加減間違えると目に直接くるんだ。」
黒根「なら初めに言わんか!自分だけ目を隠しおって。」
志乃「見た方が早い。」
黒根「一言言ってもいいだろうが!」
柚子「ふふふ。びっくりしたけどこれなら暗い海の中でも安全ね。」
志乃「まあ、陸に着いたからしばらくは歩きかな。広い場所では大百足に乗って移動するつもりだ。」
柚子「楽しそうね。」
樹霧之介「言語は大丈夫なんですか?」
志乃「何とかなるだろ。」
黒根「昔も方言で言葉が通じない場所はちょくちょくあったしの。」
樹霧之介「それとは違うんじゃないですか?」
志乃「少しだけだが勉強はしたぞ。」
樹霧之介「まあ、志乃さんですし大丈夫ですよね。」
そんな事を話しているとさっきの光を見た真琴達が何事かと樹霧之介の家にやって来た。
焔「お。何事かと思ったら、志乃帰っていたんだな。」
真琴「何してたの?」
黒根「こやつが鱗に妖力を注ぐと光るというから試していたんじゃ。いつも通り説明不足であの光が出たわけじゃが。」
焔「へー、その鱗か?試しても良いか?」
雫「ちょっと、樹霧之介が試してあれなら妖力の扱いが下手なこいつが触ったら危険よ。」
焔「試すくらい良いじゃんか。」
志乃「これなら妖力を制御する練習、目に見えるからやりやすいんじゃないか?」
樹霧之介「それでもあの光は眩しすぎませんか?」
志乃「ならこうするか。」
志乃は9号から瓶と墨と筆を受け取ると墨を瓶の内側に塗り、それが終わると9号が紐を持って来たのでそれに鱗を結んで瓶に入れ、糸の先が出た状態で蓋を閉めた。
風見「それは何だ?」
志乃「瓶に夜霧の澱から作った墨を段階的に塗った。この糸は霊導糸で妖力を余す事なく通してくれる。風見、試しにこの紐に妖力を注いでみてくれないか?」
風見「ワイか?」
志乃「ああ、中の墨の塗り具合を確かめたい。この中で妖力単体で扱いが上手いのは風見だからな。」
風見「分かった。」
風見が恐る恐る瓶から出た糸を掴むと瓶が6割ほど光った。
志乃「注ぐ量多くできるか?」
風見「あ、ああ。」
そして風見が何回か注ぐ量を調節すると志乃は墨を塗り直し、その間に真琴が質問をする。
真琴「ねえ、夜霧の澱って何?」
志乃「霧で隠れる妖怪が夜に現れた時に回収できる粉みたいな物でそれを墨に加工すると光を遮ってくれるんだ。段階的に塗ればこういう風に目印として使えるだろう?全体的に塗れば妖力を注ぎ過ぎても目が眩む事もない。」
雫「便利ね。」
焔「それなら俺も練習できるか?」
志乃「もう少し微調整させてくれ。」
焔「早くしてくれよ。風見ばかりでズルいぞ。」
雫「ならもう少し自力で妖力の制御しなさい。」
焔「できてるだろ。」
雫「炎を使う時だけじゃない。」
焔「十分だろ。」
志乃「妖力自体を制御できれば他にできる事も増える。やって損はないぞ。」
雫「ほら、浜名瀬さんだってこう言ってるんだから。」
焔「分かったよ。」
茂蔵「おいらもやってみたい。」
志乃「妖力の量に合わせて墨の量も調整したいから複数作るか?」
樹霧之介「鱗また剥がすんですか?駄目ですよ。」
志乃「既に剥がれた鱗があるだろ。海の中じゃ隠里を繋げる方法がないから自分から取ったが今ならあの鱗を取りに行けるし、中の呪いも操作できるだろうからあれを使おう。」
樹霧之介「それなら、、」
それから志乃は管狐に鱗を取ってきてもらい、妖力の量を量る呪具作りを本格的に始める。
鱗の呪いを解呪した途端消えたりとハプニングはあったが無事何個か作り終えた。
最初に作った1番墨の濃い物で焔が練習しているが瓶全体を光らせていて、それを雫が呆れながら指導している。
志乃「これくらいか?」
風見「やっと終わった。」
志乃「手伝いありがとな。」
風見「これくらい何ともないさ。」
真琴「だけど浜名瀬さんが人魚になって直接調整すれば良かったんじゃないの?」
志乃「作るだけならそれで良いが、基準の妖力の量を詳しく説明できる奴が近くに1人いた方が良いだろ。」
真琴「浜名瀬さんはまたすぐ旅に出るの?」
志乃「ここでやる事やったらな。」
真琴「そう、、」
志乃「しばらくは陸を行くつもりだからすぐ戻って来るさ。」
樹霧之介「知らない土地ですし、気をつけてくださいね。」
志乃「分かってる。心配症だな、本当に。」
それからも志乃は自分で開けた隠里の出入口から旅先に行ったり来たりしていた。
帰ると必ず樹霧之介の家で旅先であった出来事を話したり、お土産を渡したり、たまに一緒に隠里の出入口を通って旅先に行ったりもした。
そして遂に柚子が人型を取れるようになったので志乃は黒根の怪我を治す事になる。
治療に集中する為にもその場には志乃と樹霧之介と柚子と黒根の最小限のものしかいない。
柚子「いよいよね。」
黒根「そうじゃな。」
そんな黒根は落ち着きがなく、目線が泳いでいる。
樹霧之介「嬉しくないんですか?前も思いましたがあまり乗り気じゃないですよね。」
黒根「そんな事はない。」
志乃「隠しておけるものでもないし、樹霧之介も薄々気づいているだろ。始めるぞ。」
黒根「こら!わしだって心の準備というものが、、」
黒根の言葉を最後まで聞く前に志乃は黒根に自身の呪いを移すとその呪いは黒根の傷を治し、黒根の本体は切り株から立派な木になった。
黒根「全く、、」
黒根が作っていた精神の分身はそう呟くと消えて本体の木が人型をとる。
樹霧之介「父さん。」
柚子「どうですか?あなた。」
黒根「やっぱりというか、予想以上じゃな。志乃、お主はどう思う?」
志乃「そうだな。今のお前は樹霧之介より、いや、風見よりも弱いだろうな。」
黒根「じゃな。」
樹霧之介「、、やっぱり僕のせい、ですよね?」
黒根「2代目を作った妖怪は妖力の大半を失う。じゃがな、お主はわしの、わしらの希望じゃった。じゃからわしらは惜しみなくお主に妖力を分け与えた。後悔はしとらんよ。」
柚子「唯一の後悔といえばあなたを直接助ける事ができないくらいかしら。」
黒根「そうじゃな。お主が戦っておってもわしらにできることは少ない、これからも人と妖怪を助けるお主の助けになれるかどうか、、すまないな。」
樹霧之介「いえ、僕は僕で2人の分も頑張ります。父さんも母さんもこれまでみたいに見守っていてくれるだけで十分です。」
黒根「それよりも久しぶりに人間の町の空気を吸いたいんじゃが、一緒に行くか?」
樹霧之介「はい!」
志乃「私はやる事があるからそろそろ戻る。後は3人で話し合ってくれ。」
樹霧之介「志乃さん、ありがとうございます。」
志乃「約束したからな。」
志乃は隠里にある自分の屋敷に戻った。
その後も暴走する妖怪は度々現れるので対処するがそれ以外は志乃も樹霧之介達も各々自由に過ごし、陽葵も休みには妖ノ郷を通って志乃の屋敷に遊び、、学びに来ていた。
そしてそんな平凡な日々が過ぎるのが普通になり、それが続くと誰もが思っていた。
あの日までは、、
ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。
無事に最終回まで書き切れたのはこんな誤字だらけでその場の思いつきだけで構成された素人小説にもかかわらず読んでくださった方々のおかげです。
書いている途中でキャラクターの口調や性格が微妙に変わってしまったり、方向性に迷ったりもしました。
当初は志乃が惣領と地獄へ行った時点で最終回にするつもりでしたが次へ繋げるために今の形に落ち着きました。
ただ、リアルの方が少し忙しくなってきており続きが書けるかどうかは正直わからず、投稿できたとしても週一か不定期になるかもしれません。
それでもここまで読んでくださった方がいたという事実が私にとって大きな支えでした。
本当にありがとうございました。




