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37話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

朝が来て、志乃(しの)が起きると既に陽葵(ひまり)の祖母と美和(みわ)が朝食の準備をしていた。

志乃(しの)「おはよう。手伝いはいるか?」

陽葵(ひまり)祖母「あらあら、おはよう。気を使わなくていいのよ。お客さんはゆっくりしていて。」

美和(みわ)浜名瀬(はまなせ)さん。おはようございます。少し相談したいことがあるんですがいいですか?」

志乃(しの)「別にいいぞ。」

美和(みわ)「なら茶の間で待っていてくれませんか。これが終わったら行きますので。」

陽葵(ひまり)祖母「後は配膳だけだから起きてきた人にやらせればいいわ。行っておいで。」

美和(みわ)「すみません。お義母さん。」

志乃(しの)美和(みわ)と一緒に茶の間に移動し、相談を受ける。

志乃(しの)「それで相談は何だ?陽葵(ひまり)の事か?」

美和(みわ)「いえ、陽葵(ひまり)とはこれまで通り付き合っていただけたらと思っています。今回は別の事なんです。」

志乃(しの)「何だ?」

美和(みわ)「実は昨日の火花を見た後から私にもその大きな百足や今も浜名瀬(はまなせ)さんの肩に乗っている生き物が見えるようになったんです。」

志乃(しの)「あー。前から少し見えるくらいには霊力あるからな。昨日の3号の火花で妖怪の存在を認識したせいで繋がりも出来てしまったのか。」

美和(みわ)「やっぱり。私、昔から実は変なものが薄っすら見える事があったんです。」

志乃(しの)「それでどうする?見えないようにも出来るがするか?」

美和(みわ)「その方が良いんでしょうか。」

志乃(しの)「見えてもトラブルに巻き込まれるだけだからな。」

美和(みわ)「だけど陽葵(ひまり)は見えたままなんですよね。」

志乃(しの)「あいつの場合は見えなくしてもまた飛び込みそうだったからな。それなら身を守れるようにする方が良いと思ったんだ。」

美和(みわ)「うちの娘がご迷惑をおかけしてすみません。」

志乃(しの)「もう諦めている。」

美和(みわ)「しかも夫まで迷惑を、、」

志乃(しの)「それはしっかり手綱を握っておいてほしい。」

美和(みわ)「それはもちろんです。今まで迷惑を掛けられた分はきっちり働いてもらわないと。」

志乃(しの)「それなら安心だな。」

美和(みわ)「それで妖怪を見えなくするにはどうすれば良いんですか?」

志乃(しの)「お前の霊力を封印する。妖怪と関わらなければ2,3日で見えなくなるだろ。」

美和(みわ)「分かりました。お願いします。」

志乃(しの)「それなら準備をしよう。」

そう言って志乃(しの)は中庭の蔵近くの塀に屋敷のある隠里(かくれざと)への入り口を開けてお(ふだ)でそれを固定して他の人が入れないように結界を張る。

志乃(しの)「この中に入ってくれ。」

美和(みわ)「え。入るんですか?」

志乃(しの)「ああ。」

志乃(しの)が入ると美和(みわ)も恐る恐る入る。

美和(みわ)「何ですか?ここ。」

志乃(しの)「私の拠点みたいな場所だ。封印するための祭壇がここにあるから来てもらった。移動するぞ。」

美和(みわ)「はい。」

そして志乃(しの)は無事美和(みわ)の霊力を封印して中庭に戻る。

美和(みわ)「これこのままなんですか?」

志乃(しの)「道具を整理した後あっちに持って行くためにしばらく開けたままにする。用が終われば閉じる。」

美和(みわ)「あの大量の道具をどうするのかと思っていたんですが持って行くんですね。」

志乃(しの)「捨てるにしろ再利用するにしろ解体しないといけないから時間は掛かる。これが手っ取り早いんだ。」

美和(みわ)「今日はお願いしますね。」

志乃(しの)「ああ。」

それから起きてきた他の人達と朝食を済ませて蔵の整理を始める。

念のため1号と5号が陽葵(ひまり)陽葵(ひまり)の伯父さんに付き添い、倉庫の中の物を出してもらって志乃(しの)が仕分けて紙の式神で開けた入り口から屋敷の中へと運ぶ。

陽葵(ひまり)「ねえ、浜名瀬(はまなせ)さん。この中どうなっているの?」

集中力が切れた陽葵(ひまり)志乃(しの)に話しかけてくる。

志乃(しの)「拠点としている屋敷がある。」

陽葵(ひまり)「入ってみたい。」

志乃(しの)「駄目だ。」

陽葵(ひまり)「何で。」

志乃(しの)「今は蔵の整理をしなくてはいけないし、中はそこそこ広いんだ。お前を見失ったら変な事しかねない。」

陽葵(ひまり)「変な事って何?」

志乃(しの)「とにかく入るな。」

陽葵(ひまり)「どちらにしろ結界で入れないよ。」

志乃(しの)「なら今は倉庫の整理に集中しろ。」

陽葵(ひまり)「終わったら入れてくれる?」

志乃(しの)「、、覗くくらいなら許す。」

陽葵(ひまり)「やった。」

志乃(しの)「さぼったりしたら入れないからな。」

陽葵(ひまり)「はーい。」

それから黙々と作業を進めると途中で陽葵(ひまり)の祖母に呼ばれる。

陽葵(ひまり)祖母「スイカが切れましたよ。休憩にしませんか。」

陽葵(ひまり)「わーい。浜名瀬(はまなせ)さんも行こう。昨日食べれてなかったでしょ。」

志乃(しの)「そうだな。休憩するか。」

陽葵(ひまり)「伯父さんもスイカ切れたって。」

陽葵(ひまり)は倉庫の中にいる陽葵(ひまり)の伯父さんにも声を掛ける。

陽葵(ひまり)伯父「はいはい。今行くよ。」

出されたスイカを3人で縁側に座って食べる。

志乃(しの)「甘いな。」

陽葵(ひまり)「スイカって甘いものでしょ。」

陽葵(ひまり)伯父「昔のスイカはあまり甘くなかったと聞いたことがあるよ。」

志乃(しの)「ああ。私の知っているスイカは甘さが控えめで青臭く酸っぱかった。」

陽葵(ひまり)「へー。」

陽葵(ひまり)伯父「今は品種改良が進んでいるから色々と美味しくなっているはずだよ。」

志乃(しの)「そうなのか。」

陽葵(ひまり)伯父「いつもは何を食べているんだい?」

志乃(しの)「私は基本食事はしない。」

陽葵(ひまり)伯父「だけど昨日はいっぱい食べてたよね。」

志乃(しの)「断れなかったんだ。」

陽葵(ひまり)伯父「はは、母さんは押しが強いからな。」

志乃(しの)「しばらくは止めてほしいな。」

陽葵(ひまり)伯父「今晩はお寿司を取るって言っていたから1人の量が決まっているから大丈夫だと思うよ。」

志乃(しの)「それなら良かったよ。」

陽葵(ひまり)「ねえ、私達いつまでここにいないといけないのかな?」

陽葵(ひまり)伯父「今日書類を出しに行ったからな。もう少し掛かると思うよ。」

陽葵(ひまり)「そうだよね。」

陽葵(ひまり)伯父「まあ、こんな何もない田舎にいつまでもいたくないよね。それに関係ない浜名瀬(はまなせ)さんを帰してあげないと。」

志乃(しの)「いなくても良いなら私は勝手に帰るぞ。」

陽葵(ひまり)伯父「いやいや、ここから高速使わないと帰れない距離なんだから送るよ。」

志乃(しの)「あれを使えば帰れる。」

志乃(しの)隠里(かくれざと)にある屋敷の出入り口を指さす。

陽葵(ひまり)伯父「あれはそんな使い方もできるのかい?」

志乃(しの)「あれの出入り口は今借りているアパートの部屋にも繋げてあるからそこから出ればすぐに帰れる。」

陽葵(ひまり)伯父「へー。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんが帰るなら私も帰る。」

志乃(しの)「お前1人が帰っても世話する人間がいないじゃないか。」

陽葵(ひまり)「自分でできるもん。」

志乃(しの)「前に激辛カレーうどんを作った奴が何を言っている。」

陽葵(ひまり)「う。」

志乃(しの)「それに料理だけじゃなくて後片付けに風呂や洗濯、色々あるんだからな。」

陽葵(ひまり)「なら浜名瀬(はまなせ)さん家に泊めて。」

志乃(しの)「料理できる環境が無いから駄目だ。」

陽葵(ひまり)「コンビニ弁当でいいから。」

陽葵(ひまり)伯父「陽葵(ひまり)、これ以上迷惑かけるのは止めなさい。」

陽葵(ひまり)「むー。」

陽葵(ひまり)伯父「浜名瀬(はまなせ)さんも急いで帰る理由が無ければゆっくりしていってよ。」

志乃(しの)「だがここに来てからあまり休めていないからできれば帰りたい。」

陽葵(ひまり)「そんなこと言わないで。」

志乃(しの)「それに約束した期間は3日間だっただろ。」

陽葵(ひまり)「だけど浜名瀬(はまなせ)さんいなかったじゃん。」

志乃(しの)「ここに来た日で1日目、消えた日で2日目、昨日で3日目、今日で4日目だ。それに付いて来て欲しい理由も父親がいなくなった時のトラウマがあるからだっただろ。」

陽葵(ひまり)「そうだけど、、」

志乃(しの)「どちらにしろ蔵の整理は明日まで掛かりそうだ。今晩は一緒にいて明日帰る。」

陽葵(ひまり)「、、分かった。」

志乃(しの)「あ。ここの家の人に聞かずに勝手に決めたけど大丈夫か?」

志乃(しの)陽葵(ひまり)の伯父さんに聞いてみる。

陽葵(ひまり)伯父「こちらに止める理由はないよ。今晩話せば良いと思う。」

志乃(しの)「ああ。」

それから陽葵(ひまり)の祖母が素麺を茹でてくれたのでお昼を食べて蔵の整理を再開する。

蔵の整理自体は順調に進み、家庭裁判所に行っていた人も帰って来た。

晴臣(はるおみ)「やってるな。」

美和(みわ)「あなたも手伝って来なさい。」

晴臣(はるおみ)「今帰って来たばかりだよ。」

美和(みわ)「運転もお義父さんで、あなたは何もしてなかったじゃない。」

晴臣(はるおみ)「書類書いたり色々あっただろ。」

美和(みわ)「それだけでしょ。」

晴臣(はるおみ)「分かったよ。」

晴臣(はるおみ)志乃(しの)達の手伝いをするため中庭へ出る。

晴臣(はるおみ)「俺も手伝うよ。何すればいい?」

志乃(しの)「ならそこに呪具と関係ない物を集めている。箱を拭いてからそこに入れ直してくれ。」

志乃(しの)が指差す方にブルーシートの上に積まれた空の箱の横に掛け軸などが並べられている。

晴臣(はるおみ)「全て出してたのか?」

志乃(しの)「まだ全部じゃ無いぞ。」

そこに隠里(かくれざと)にある屋敷に呪具を運んできた紙の式神が帰って来た。

晴臣(はるおみ)「その白い小人はなんだい?それに今光っている壁から出てきたよね。」

志乃(しの)「お前は手伝いに来たのか?邪魔しに来たのか?」

美和(みわ)「何してるの。ちゃんと手伝いなさい!」

晴臣(はるおみ)「だけど、不思議な事が沢山あるんだぞ。」

美和(みわ)「あなたが消えたことが一番不思議だったわよ。」

晴臣(はるおみ)「それは、、」

志乃(しの)「何もしないなら邪魔だけはしないでくれないか?」

晴臣(はるおみ)「手伝います。」

晴臣(はるおみ)は静かになって箱を雑巾で拭いている。

夕方になって蔵の中の物をすべて運び出し、志乃(しの)が仕分けをしている横で陽葵(ひまり)も箱詰め作業に移り、陽葵(ひまり)の伯父さんは箱を戻す前に蔵の中を掃除している。

車の音がした後、陽葵(ひまり)の祖母が夕飯だと呼びに来た。

陽葵(ひまり)「これ、このままでいいの?」

志乃(しの)「念の為結界だけ張っておく。先に入っていてくれ。」

陽葵(ひまり)「分かった。」

晴臣(はるおみ)「見ていてもいいか?」

志乃(しの)「邪魔しないなら。」

晴臣(はるおみ)「静かに見てるよ。」

志乃(しの)「分かった。」

一日中動いてクタクタな陽葵(ひまり)陽葵(ひまり)の伯父さんと家の中に入り、志乃(しの)晴臣(はるおみ)の見ている中で結界符(けっかいふ)を4隅に貼り結界を張る。

晴臣(はるおみ)「もう終わりかい?」

志乃(しの)「特殊な効果の無い結界だからな。これでいい。」

晴臣(はるおみ)「確かにもう中には入れそうにないな。」

晴臣(はるおみ)は結界を物珍しそうに手でペシペシ叩いてみている。

志乃(しの)「満足したら家に入れよ。」

志乃(しの)はそう言い残して家へ入って行ったが、それから晴臣(はるおみ)が中に入る気配がなかったので痺れを切らした美和(みわ)に家の中に入れられて夕食になった。

それぞれにお寿司の桶とみそ汁が配られた後、大皿に天ぷらや煮物も運ばれてきた。

一通り運び終わり、全員が席に着くと志乃(しの)が明日帰る事を話す。

晴臣(はるおみ)「もう帰るのか?」

美和(みわ)「いつまでも私達の都合に付き合わせるわけにはいかないでしょ。」

陽葵(ひまり)祖母「あら、寂しくなるわね。なら今日は沢山食べて行ってね。」

大皿が出てきた時点で嫌な予感がしていた志乃(しの)陽葵(ひまり)の伯父さんの方を見ると陽葵(ひまり)の伯父さんはそれに気づいてくれた。

陽葵(ひまり)伯父「まあまあ、母さん。浜名瀬(はまなせ)さんは昨日は食べ過ぎでデザート食べれなかったんだから今日は控えめにしてよ。」

陽葵(ひまり)祖母「それもそうね。だけど遠慮はしないでね。」

志乃(しの)「はい。」

おかげで志乃(しの)は適度な量を食べる事ができて夕食の後お風呂に順番に入り、縁側で夜空を眺めながら陽葵(ひまり)とアイスを食べている。

陽葵(ひまり)「ねえ、浜名瀬(はまなせ)さん。やっぱりあの中気になる。」

陽葵(ひまり)隠里(かくれざと)の出入口を指さす。

志乃(しの)「明日も頑張るか?」

陽葵(ひまり)「うん。」

志乃(しの)「覗くだけだからな。危険な物も置いてあるから私から離れるなよ。」

陽葵(ひまり)「分かった。」

志乃(しの)「不安だな。」

そう言いながらも志乃(しの)は侵入防止の結界を書き換えて陽葵(ひまり)が入れるようにして隠里(かくれざと)の中に入る。

陽葵(ひまり)「すごい!ここ浜名瀬(はまなせ)さんが住んでいるの?」

志乃(しの)「一時期暮らしていたことはあるが今は基本借りているアパートで生活している。」

陽葵(ひまり)「えー。もったいない。」

志乃(しの)「広すぎて1人じゃ落ち着かないんだよ。ほらもういいだろ出るぞ。」

陽葵(ひまり)「え。入っただけだよ。あっちの方も見に行きたい。」

志乃(しの)「覗くだけと約束しただろ。」

陽葵(ひまり)「ケチ。」

志乃(しの)「はいはい。」

志乃(しの)陽葵(ひまり)を引っ張って隠里(かくれざと)から出ると侵入防止の結界を張り直す。

晴臣(はるおみ)「なんだ。陽葵(ひまり)は中に入れてもらえたのか?」

陽葵(ひまり)「うん。凄い大きな屋敷があった。」

晴臣(はるおみ)「へー。いいなお父さんも見てみたい。」

陽葵(ひまり)「だけど見ただけで出されちゃった。」

志乃(しの)「何するか分からないからな。」

晴臣(はるおみ)「信用無いんだな。」

志乃(しの)「お前は入れる事もしたくないがな。」

陽葵(ひまり)「お父さんの方が信用無かったね。」

志乃(しの)「明日も朝からするんだからもう寝るぞ。」

晴臣(はるおみ)「なあ、陽葵(ひまり)。今日はお父さん達と寝ないか?」

陽葵(ひまり)「高校生にもなって親と寝るのなんかヤダ。」

晴臣(はるおみ)「そうだよな。」

志乃(しの)「なら私は隠里(かくれざと)を通ってアパートで寝るから寝るまで親子で話でもしたらいいんじゃないか?」

陽葵(ひまり)「え。約束と違うよ。今晩は一緒に居るって言ったじゃん。」

志乃(しの)「親と寝るのは嫌なのに私とはいいのか?」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんは一緒にいると安心感があるの。」

晴臣(はるおみ)「お父さんは?」

陽葵(ひまり)「急に消えるし、戻ってこないんだもん。安心とは程遠いよ。」

晴臣(はるおみ)「なら話だけでもしないか?バタバタしていてまだゆっくり話はしていなかっただろ。」

陽葵(ひまり)「それくらいなら。」

志乃(しの)「なら私は先に寝るから。」

陽葵(ひまり)「うん。おやすみ。」

志乃(しの)「おやすみ。」

晴臣(はるおみ)「おやすみ。」

志乃(しの)は先に客間で寝ていると、しばらくして陽葵(ひまり)が話を終えて客間に入ると志乃(しの)の顔を覗き込み、志乃(しの)の布団に入ろうとする。

志乃(しの)「お前の布団は隣だ。」

陽葵(ひまり)「起きてたの?」

志乃(しの)「今起きた。」

陽葵(ひまり)「明日帰るなら今晩くらい良いじゃん。」

志乃(しの)「お前の寝相はあまり良くないから寝れないんだ。大人しく自分の布団で寝ろ。」

陽葵(ひまり)「今夜は寝相良く寝るから。」

志乃(しの)「どうやってだ。」

陽葵(ひまり)「こうピンとして動かないように寝る。」

志乃(しの)「、、信用できない。自分の布団で寝ろ。」

陽葵(ひまり)「えー。」

志乃(しの)「うるさいぞ。」

陽葵(ひまり)は渋々自分の布団に入る。

それから朝が来て、朝食後にまた蔵の整理と掃除を進める。

志乃(しの)は仕分けが終わって蔵の片付けをしているとスマホが鳴り、画面を確認すると真琴(まこと)と出ていたので出る。

志乃(しの)「どうした?」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん!助けてください。真琴(まこと)が消えそうなんです。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)か?落ち着いて話せ。」

樹霧之介(きりのすけ)真琴(まこと)の妖力が無くなりそうなんです。」

妖怪にとって妖力は力を振るうためのものでもあり、存在を維持するものでもある。

妖力が無くなればその妖怪は存在を保てなくなり消えてしまうのだ。

志乃(しの)「原因は?」

樹霧之介(きりのすけ)「分かりません。」

志乃(しの)黒丸(くろまる)は何て言っているんだ?」

樹霧之介(きりのすけ)「父さんもこれだけでは分からないって、今は真琴(まこと)の家にいます。志乃(しの)さんも来れませんか?」

志乃(しの)「分かった。すぐ行く。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。」

志乃(しの)はスマホを切り、陽葵(ひまり)は家の中で休憩しているので蔵で作業している陽葵(ひまり)の伯父さんに声を掛ける。

志乃(しの)「急用ができた。私は今から帰る。後の片付け任せてもいいか?」

陽葵(ひまり)伯父「もう呪具は無いんだよね。」

志乃(しの)「ああ、すべて回収した。」

陽葵(ひまり)伯父「ならこっちは大丈夫だよ。ありがとう。」

志乃(しの)「すまない。」

9号が志乃(しの)のカバンを取って来ると、志乃(しの)は侵入できないように張った結界を解除し、隠里(かくれざと)の出入り口を固定している札を外すと入り口が閉じる前に飛び込み、隠里(かくれざと)からアパートへ出るとすぐに妖ノ郷(あやかしのさと)にある真琴(まこと)の家へ急ぐ。

志乃(しの)真琴(まこと)の家に着くと真琴(まこと)は部屋で寝ていて、うっすらと透けている。

樹霧之介(きりのすけ)(しずく)真琴(まこと)の手を握っていて妖力を分け与えている。

他の仲間はなぜこうなったかを調べるためにここにはいない。

志乃(しの)「私も精気を分けよう。」

樹霧之介(きりのすけ)「お願いします。」

竹筒からは4号と5号が出てきて4号が薬を振りかけ、5号は真琴(まこと)に犯人の妖気が残っていないか調べる。

樹霧之介(きりのすけ)「これは?」

志乃(しの)「妖力を回復させるものだがあまり効いてなさそうだ。」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さんでも難しいですか?」

志乃(しの)「妖怪が妖力を増やす方法は妖怪によって違うからな。せめてこんな事になった原因が分かれば良いんだが。」

5号は手掛かりが見つけられないのか首を横に振っている。

樹霧之介(きりのすけ)「僕が見つけた時には既にこの状態でした。」

志乃(しの)「その時の状況を詳しく聞かせてくれ。」

樹霧之介(きりのすけ)真琴(まこと)は代筆のバイトをしているんですが、その代筆した物を郵便で出しに行って帰りが遅いなと思って見に行ったんです。そしたら道で倒れていました。すぐに(ほむら)を呼んで僕の家に運んだんですが父さんにこっちの方が良いと言われて連れてきました。」

志乃(しの)真琴(まこと)は手紙の妖怪だから巻物があるこの部屋の方が回復できるだろうからな。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。父さんもそう言ってました。」

志乃(しの)「だがそれだけだとやっぱり原因は分からないな。」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さんでも分かりませんか。」

志乃(しの)「せめて何か特徴的なものがあれば良かったんけど、、」

その時真琴(まこと)の目が覚める。

真琴(まこと)「うん?ここ、どこ?」

樹霧之介(きりのすけ)真琴(まこと)。」

(しずく)真琴(まこと)。」

志乃(しの)真琴(まこと)。何があったか話せるか?」

真琴(まこと)「何、私、、倒れてたの?」

樹霧之介(きりのすけ)「そうです。何があったんですか?」

真琴(まこと)「私、郵便局に行った帰り道、腕引っ張られて振り向いたら子供がいたの。」

志乃(しの)「容姿は分かるか?」

真琴(まこと)「覚えていない。だけど黒い瓢箪を持っていたわ。それを見てから記憶がないの。」

志乃(しの)「黒い瓢箪。真琴(まこと)の妖力が取られているなら妖呑(ようどん)瓢箪(ひょうたん)かもしれないな。」

樹霧之介(きりのすけ)「それは何ですか?」

志乃(しの)妖呑(ようどん)瓢箪(ひょうたん)は妖怪の妖力を吸い取って溜めておける瓢箪だ。そうなると真琴(まこと)の見た子供は瓢箪小僧(ひょうたんこぞう)なのか?」

真琴(まこと)「分からない。ただ今では珍しい髪型だった気がする。」

樹霧之介(きりのすけ)「珍しい髪型をした瓢箪を持つ子供ですか。」

志乃(しの)「正体はまだ分からないが瓢箪を壊さないと真琴(まこと)の命が危ないな。」

樹霧之介(きりのすけ)「だけど意識は戻りましたよ。」

志乃(しの)「だがまだ透けている。このまま妖力を渡し続けないとすぐ消えるぞ。」

真琴(まこと)「私、今そんな事になっているの?」

樹霧之介(きりのすけ)「大丈夫です。僕達がその子供を探して真琴(まこと)を助けます。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)がここを離れたら誰が妖力を渡すんだ?」

樹霧之介(きりのすけ)真琴(まこと)には交代で妖力を渡す事になっています。しばらくしたら(ほむら)が来るはずなのでそしたら代わります。」

志乃(しの)「そうか。なら私は先に探しに行く。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。お願いします。」

志乃(しの)「念のため1号と4号は残しておくぞ。」

樹霧之介(きりのすけ)「ありがとうございます。」

(しずく)「4号はこの薬持って来てくれた管狐(くだぎつね)よね。1号は何するの?」

志乃(しの)「1号は管狐(くだぎつね)の中で一番妖力の扱いに長けているんだ。」

(しずく)「そうなのね。助かるわ。」

志乃(しの)「それじゃ何かあれば連絡してくれ。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。」

志乃(しの)は郵便局へ行く道を5号と一緒に歩いていると風見(かざみ)を見つける。

風見(かざみ)浜名瀬(はまなせ)。丁度よかった。真琴(まこと)が倒れたんだ。」

志乃(しの)「聞いた。今犯人探しをしている。」

風見(かざみ)「そうだったんだな。」

志乃(しの)「それで変わった子供を見なかったか?」

風見(かざみ)「子供?そいつが犯人なのか?」

志乃(しの)真琴(まこと)が珍しい髪型の子供を見たらしいんだ。」

風見(かざみ)真琴(まこと)が起きたのか?」

志乃(しの)「ああ。だがまだ油断はできない。」

風見(かざみ)「そんなに悪いのか?」

志乃(しの)「だから原因となった瓢箪を持つ子供を見付けないといけないんだ。」

風見(かざみ)「そいつは瓢箪を持っているんだな。」

志乃(しの)「ああ。黒い瓢箪だ。見つけたら知らせてくれ。」

風見(かざみ)「どうやってだ?」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)に知らせてくれればスマホで連絡くれると思う。」

風見(かざみ)「分かった。」

志乃(しの)「多分この事を茂蔵(もぞう)は知らないから会ったら教えてやってくれ。」

風見(かざみ)「そうなのか。分かった。」

志乃(しの)「それじゃ私はこっち探すから。」

風見(かざみ)「ワイはあっち行くな。」

それから志乃(しの)風見(かざみ)と別れて真琴(まこと)が見たと言う子供を探しに行く。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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