37話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
朝が来て、志乃が起きると既に陽葵の祖母と美和が朝食の準備をしていた。
志乃「おはよう。手伝いはいるか?」
陽葵祖母「あらあら、おはよう。気を使わなくていいのよ。お客さんはゆっくりしていて。」
美和「浜名瀬さん。おはようございます。少し相談したいことがあるんですがいいですか?」
志乃「別にいいぞ。」
美和「なら茶の間で待っていてくれませんか。これが終わったら行きますので。」
陽葵祖母「後は配膳だけだから起きてきた人にやらせればいいわ。行っておいで。」
美和「すみません。お義母さん。」
志乃は美和と一緒に茶の間に移動し、相談を受ける。
志乃「それで相談は何だ?陽葵の事か?」
美和「いえ、陽葵とはこれまで通り付き合っていただけたらと思っています。今回は別の事なんです。」
志乃「何だ?」
美和「実は昨日の火花を見た後から私にもその大きな百足や今も浜名瀬さんの肩に乗っている生き物が見えるようになったんです。」
志乃「あー。前から少し見えるくらいには霊力あるからな。昨日の3号の火花で妖怪の存在を認識したせいで繋がりも出来てしまったのか。」
美和「やっぱり。私、昔から実は変なものが薄っすら見える事があったんです。」
志乃「それでどうする?見えないようにも出来るがするか?」
美和「その方が良いんでしょうか。」
志乃「見えてもトラブルに巻き込まれるだけだからな。」
美和「だけど陽葵は見えたままなんですよね。」
志乃「あいつの場合は見えなくしてもまた飛び込みそうだったからな。それなら身を守れるようにする方が良いと思ったんだ。」
美和「うちの娘がご迷惑をおかけしてすみません。」
志乃「もう諦めている。」
美和「しかも夫まで迷惑を、、」
志乃「それはしっかり手綱を握っておいてほしい。」
美和「それはもちろんです。今まで迷惑を掛けられた分はきっちり働いてもらわないと。」
志乃「それなら安心だな。」
美和「それで妖怪を見えなくするにはどうすれば良いんですか?」
志乃「お前の霊力を封印する。妖怪と関わらなければ2,3日で見えなくなるだろ。」
美和「分かりました。お願いします。」
志乃「それなら準備をしよう。」
そう言って志乃は中庭の蔵近くの塀に屋敷のある隠里への入り口を開けてお札でそれを固定して他の人が入れないように結界を張る。
志乃「この中に入ってくれ。」
美和「え。入るんですか?」
志乃「ああ。」
志乃が入ると美和も恐る恐る入る。
美和「何ですか?ここ。」
志乃「私の拠点みたいな場所だ。封印するための祭壇がここにあるから来てもらった。移動するぞ。」
美和「はい。」
そして志乃は無事美和の霊力を封印して中庭に戻る。
美和「これこのままなんですか?」
志乃「道具を整理した後あっちに持って行くためにしばらく開けたままにする。用が終われば閉じる。」
美和「あの大量の道具をどうするのかと思っていたんですが持って行くんですね。」
志乃「捨てるにしろ再利用するにしろ解体しないといけないから時間は掛かる。これが手っ取り早いんだ。」
美和「今日はお願いしますね。」
志乃「ああ。」
それから起きてきた他の人達と朝食を済ませて蔵の整理を始める。
念のため1号と5号が陽葵と陽葵の伯父さんに付き添い、倉庫の中の物を出してもらって志乃が仕分けて紙の式神で開けた入り口から屋敷の中へと運ぶ。
陽葵「ねえ、浜名瀬さん。この中どうなっているの?」
集中力が切れた陽葵が志乃に話しかけてくる。
志乃「拠点としている屋敷がある。」
陽葵「入ってみたい。」
志乃「駄目だ。」
陽葵「何で。」
志乃「今は蔵の整理をしなくてはいけないし、中はそこそこ広いんだ。お前を見失ったら変な事しかねない。」
陽葵「変な事って何?」
志乃「とにかく入るな。」
陽葵「どちらにしろ結界で入れないよ。」
志乃「なら今は倉庫の整理に集中しろ。」
陽葵「終わったら入れてくれる?」
志乃「、、覗くくらいなら許す。」
陽葵「やった。」
志乃「さぼったりしたら入れないからな。」
陽葵「はーい。」
それから黙々と作業を進めると途中で陽葵の祖母に呼ばれる。
陽葵祖母「スイカが切れましたよ。休憩にしませんか。」
陽葵「わーい。浜名瀬さんも行こう。昨日食べれてなかったでしょ。」
志乃「そうだな。休憩するか。」
陽葵「伯父さんもスイカ切れたって。」
陽葵は倉庫の中にいる陽葵の伯父さんにも声を掛ける。
陽葵伯父「はいはい。今行くよ。」
出されたスイカを3人で縁側に座って食べる。
志乃「甘いな。」
陽葵「スイカって甘いものでしょ。」
陽葵伯父「昔のスイカはあまり甘くなかったと聞いたことがあるよ。」
志乃「ああ。私の知っているスイカは甘さが控えめで青臭く酸っぱかった。」
陽葵「へー。」
陽葵伯父「今は品種改良が進んでいるから色々と美味しくなっているはずだよ。」
志乃「そうなのか。」
陽葵伯父「いつもは何を食べているんだい?」
志乃「私は基本食事はしない。」
陽葵伯父「だけど昨日はいっぱい食べてたよね。」
志乃「断れなかったんだ。」
陽葵伯父「はは、母さんは押しが強いからな。」
志乃「しばらくは止めてほしいな。」
陽葵伯父「今晩はお寿司を取るって言っていたから1人の量が決まっているから大丈夫だと思うよ。」
志乃「それなら良かったよ。」
陽葵「ねえ、私達いつまでここにいないといけないのかな?」
陽葵伯父「今日書類を出しに行ったからな。もう少し掛かると思うよ。」
陽葵「そうだよね。」
陽葵伯父「まあ、こんな何もない田舎にいつまでもいたくないよね。それに関係ない浜名瀬さんを帰してあげないと。」
志乃「いなくても良いなら私は勝手に帰るぞ。」
陽葵伯父「いやいや、ここから高速使わないと帰れない距離なんだから送るよ。」
志乃「あれを使えば帰れる。」
志乃は隠里にある屋敷の出入り口を指さす。
陽葵伯父「あれはそんな使い方もできるのかい?」
志乃「あれの出入り口は今借りているアパートの部屋にも繋げてあるからそこから出ればすぐに帰れる。」
陽葵伯父「へー。」
陽葵「浜名瀬さんが帰るなら私も帰る。」
志乃「お前1人が帰っても世話する人間がいないじゃないか。」
陽葵「自分でできるもん。」
志乃「前に激辛カレーうどんを作った奴が何を言っている。」
陽葵「う。」
志乃「それに料理だけじゃなくて後片付けに風呂や洗濯、色々あるんだからな。」
陽葵「なら浜名瀬さん家に泊めて。」
志乃「料理できる環境が無いから駄目だ。」
陽葵「コンビニ弁当でいいから。」
陽葵伯父「陽葵、これ以上迷惑かけるのは止めなさい。」
陽葵「むー。」
陽葵伯父「浜名瀬さんも急いで帰る理由が無ければゆっくりしていってよ。」
志乃「だがここに来てからあまり休めていないからできれば帰りたい。」
陽葵「そんなこと言わないで。」
志乃「それに約束した期間は3日間だっただろ。」
陽葵「だけど浜名瀬さんいなかったじゃん。」
志乃「ここに来た日で1日目、消えた日で2日目、昨日で3日目、今日で4日目だ。それに付いて来て欲しい理由も父親がいなくなった時のトラウマがあるからだっただろ。」
陽葵「そうだけど、、」
志乃「どちらにしろ蔵の整理は明日まで掛かりそうだ。今晩は一緒にいて明日帰る。」
陽葵「、、分かった。」
志乃「あ。ここの家の人に聞かずに勝手に決めたけど大丈夫か?」
志乃は陽葵の伯父さんに聞いてみる。
陽葵伯父「こちらに止める理由はないよ。今晩話せば良いと思う。」
志乃「ああ。」
それから陽葵の祖母が素麺を茹でてくれたのでお昼を食べて蔵の整理を再開する。
蔵の整理自体は順調に進み、家庭裁判所に行っていた人も帰って来た。
晴臣「やってるな。」
美和「あなたも手伝って来なさい。」
晴臣「今帰って来たばかりだよ。」
美和「運転もお義父さんで、あなたは何もしてなかったじゃない。」
晴臣「書類書いたり色々あっただろ。」
美和「それだけでしょ。」
晴臣「分かったよ。」
晴臣は志乃達の手伝いをするため中庭へ出る。
晴臣「俺も手伝うよ。何すればいい?」
志乃「ならそこに呪具と関係ない物を集めている。箱を拭いてからそこに入れ直してくれ。」
志乃が指差す方にブルーシートの上に積まれた空の箱の横に掛け軸などが並べられている。
晴臣「全て出してたのか?」
志乃「まだ全部じゃ無いぞ。」
そこに隠里にある屋敷に呪具を運んできた紙の式神が帰って来た。
晴臣「その白い小人はなんだい?それに今光っている壁から出てきたよね。」
志乃「お前は手伝いに来たのか?邪魔しに来たのか?」
美和「何してるの。ちゃんと手伝いなさい!」
晴臣「だけど、不思議な事が沢山あるんだぞ。」
美和「あなたが消えたことが一番不思議だったわよ。」
晴臣「それは、、」
志乃「何もしないなら邪魔だけはしないでくれないか?」
晴臣「手伝います。」
晴臣は静かになって箱を雑巾で拭いている。
夕方になって蔵の中の物をすべて運び出し、志乃が仕分けをしている横で陽葵も箱詰め作業に移り、陽葵の伯父さんは箱を戻す前に蔵の中を掃除している。
車の音がした後、陽葵の祖母が夕飯だと呼びに来た。
陽葵「これ、このままでいいの?」
志乃「念の為結界だけ張っておく。先に入っていてくれ。」
陽葵「分かった。」
晴臣「見ていてもいいか?」
志乃「邪魔しないなら。」
晴臣「静かに見てるよ。」
志乃「分かった。」
一日中動いてクタクタな陽葵は陽葵の伯父さんと家の中に入り、志乃は晴臣の見ている中で結界符を4隅に貼り結界を張る。
晴臣「もう終わりかい?」
志乃「特殊な効果の無い結界だからな。これでいい。」
晴臣「確かにもう中には入れそうにないな。」
晴臣は結界を物珍しそうに手でペシペシ叩いてみている。
志乃「満足したら家に入れよ。」
志乃はそう言い残して家へ入って行ったが、それから晴臣が中に入る気配がなかったので痺れを切らした美和に家の中に入れられて夕食になった。
それぞれにお寿司の桶とみそ汁が配られた後、大皿に天ぷらや煮物も運ばれてきた。
一通り運び終わり、全員が席に着くと志乃が明日帰る事を話す。
晴臣「もう帰るのか?」
美和「いつまでも私達の都合に付き合わせるわけにはいかないでしょ。」
陽葵祖母「あら、寂しくなるわね。なら今日は沢山食べて行ってね。」
大皿が出てきた時点で嫌な予感がしていた志乃は陽葵の伯父さんの方を見ると陽葵の伯父さんはそれに気づいてくれた。
陽葵伯父「まあまあ、母さん。浜名瀬さんは昨日は食べ過ぎでデザート食べれなかったんだから今日は控えめにしてよ。」
陽葵祖母「それもそうね。だけど遠慮はしないでね。」
志乃「はい。」
おかげで志乃は適度な量を食べる事ができて夕食の後お風呂に順番に入り、縁側で夜空を眺めながら陽葵とアイスを食べている。
陽葵「ねえ、浜名瀬さん。やっぱりあの中気になる。」
陽葵は隠里の出入口を指さす。
志乃「明日も頑張るか?」
陽葵「うん。」
志乃「覗くだけだからな。危険な物も置いてあるから私から離れるなよ。」
陽葵「分かった。」
志乃「不安だな。」
そう言いながらも志乃は侵入防止の結界を書き換えて陽葵が入れるようにして隠里の中に入る。
陽葵「すごい!ここ浜名瀬さんが住んでいるの?」
志乃「一時期暮らしていたことはあるが今は基本借りているアパートで生活している。」
陽葵「えー。もったいない。」
志乃「広すぎて1人じゃ落ち着かないんだよ。ほらもういいだろ出るぞ。」
陽葵「え。入っただけだよ。あっちの方も見に行きたい。」
志乃「覗くだけと約束しただろ。」
陽葵「ケチ。」
志乃「はいはい。」
志乃は陽葵を引っ張って隠里から出ると侵入防止の結界を張り直す。
晴臣「なんだ。陽葵は中に入れてもらえたのか?」
陽葵「うん。凄い大きな屋敷があった。」
晴臣「へー。いいなお父さんも見てみたい。」
陽葵「だけど見ただけで出されちゃった。」
志乃「何するか分からないからな。」
晴臣「信用無いんだな。」
志乃「お前は入れる事もしたくないがな。」
陽葵「お父さんの方が信用無かったね。」
志乃「明日も朝からするんだからもう寝るぞ。」
晴臣「なあ、陽葵。今日はお父さん達と寝ないか?」
陽葵「高校生にもなって親と寝るのなんかヤダ。」
晴臣「そうだよな。」
志乃「なら私は隠里を通ってアパートで寝るから寝るまで親子で話でもしたらいいんじゃないか?」
陽葵「え。約束と違うよ。今晩は一緒に居るって言ったじゃん。」
志乃「親と寝るのは嫌なのに私とはいいのか?」
陽葵「浜名瀬さんは一緒にいると安心感があるの。」
晴臣「お父さんは?」
陽葵「急に消えるし、戻ってこないんだもん。安心とは程遠いよ。」
晴臣「なら話だけでもしないか?バタバタしていてまだゆっくり話はしていなかっただろ。」
陽葵「それくらいなら。」
志乃「なら私は先に寝るから。」
陽葵「うん。おやすみ。」
志乃「おやすみ。」
晴臣「おやすみ。」
志乃は先に客間で寝ていると、しばらくして陽葵が話を終えて客間に入ると志乃の顔を覗き込み、志乃の布団に入ろうとする。
志乃「お前の布団は隣だ。」
陽葵「起きてたの?」
志乃「今起きた。」
陽葵「明日帰るなら今晩くらい良いじゃん。」
志乃「お前の寝相はあまり良くないから寝れないんだ。大人しく自分の布団で寝ろ。」
陽葵「今夜は寝相良く寝るから。」
志乃「どうやってだ。」
陽葵「こうピンとして動かないように寝る。」
志乃「、、信用できない。自分の布団で寝ろ。」
陽葵「えー。」
志乃「うるさいぞ。」
陽葵は渋々自分の布団に入る。
それから朝が来て、朝食後にまた蔵の整理と掃除を進める。
志乃は仕分けが終わって蔵の片付けをしているとスマホが鳴り、画面を確認すると真琴と出ていたので出る。
志乃「どうした?」
樹霧之介「志乃さん!助けてください。真琴が消えそうなんです。」
志乃「樹霧之介か?落ち着いて話せ。」
樹霧之介「真琴の妖力が無くなりそうなんです。」
妖怪にとって妖力は力を振るうためのものでもあり、存在を維持するものでもある。
妖力が無くなればその妖怪は存在を保てなくなり消えてしまうのだ。
志乃「原因は?」
樹霧之介「分かりません。」
志乃「黒丸は何て言っているんだ?」
樹霧之介「父さんもこれだけでは分からないって、今は真琴の家にいます。志乃さんも来れませんか?」
志乃「分かった。すぐ行く。」
樹霧之介「はい。」
志乃はスマホを切り、陽葵は家の中で休憩しているので蔵で作業している陽葵の伯父さんに声を掛ける。
志乃「急用ができた。私は今から帰る。後の片付け任せてもいいか?」
陽葵伯父「もう呪具は無いんだよね。」
志乃「ああ、すべて回収した。」
陽葵伯父「ならこっちは大丈夫だよ。ありがとう。」
志乃「すまない。」
9号が志乃のカバンを取って来ると、志乃は侵入できないように張った結界を解除し、隠里の出入り口を固定している札を外すと入り口が閉じる前に飛び込み、隠里からアパートへ出るとすぐに妖ノ郷にある真琴の家へ急ぐ。
志乃が真琴の家に着くと真琴は部屋で寝ていて、うっすらと透けている。
樹霧之介と雫は真琴の手を握っていて妖力を分け与えている。
他の仲間はなぜこうなったかを調べるためにここにはいない。
志乃「私も精気を分けよう。」
樹霧之介「お願いします。」
竹筒からは4号と5号が出てきて4号が薬を振りかけ、5号は真琴に犯人の妖気が残っていないか調べる。
樹霧之介「これは?」
志乃「妖力を回復させるものだがあまり効いてなさそうだ。」
樹霧之介「志乃さんでも難しいですか?」
志乃「妖怪が妖力を増やす方法は妖怪によって違うからな。せめてこんな事になった原因が分かれば良いんだが。」
5号は手掛かりが見つけられないのか首を横に振っている。
樹霧之介「僕が見つけた時には既にこの状態でした。」
志乃「その時の状況を詳しく聞かせてくれ。」
樹霧之介「真琴は代筆のバイトをしているんですが、その代筆した物を郵便で出しに行って帰りが遅いなと思って見に行ったんです。そしたら道で倒れていました。すぐに焔を呼んで僕の家に運んだんですが父さんにこっちの方が良いと言われて連れてきました。」
志乃「真琴は手紙の妖怪だから巻物があるこの部屋の方が回復できるだろうからな。」
樹霧之介「はい。父さんもそう言ってました。」
志乃「だがそれだけだとやっぱり原因は分からないな。」
樹霧之介「志乃さんでも分かりませんか。」
志乃「せめて何か特徴的なものがあれば良かったんけど、、」
その時真琴の目が覚める。
真琴「うん?ここ、どこ?」
樹霧之介「真琴。」
雫「真琴。」
志乃「真琴。何があったか話せるか?」
真琴「何、私、、倒れてたの?」
樹霧之介「そうです。何があったんですか?」
真琴「私、郵便局に行った帰り道、腕引っ張られて振り向いたら子供がいたの。」
志乃「容姿は分かるか?」
真琴「覚えていない。だけど黒い瓢箪を持っていたわ。それを見てから記憶がないの。」
志乃「黒い瓢箪。真琴の妖力が取られているなら妖呑の瓢箪かもしれないな。」
樹霧之介「それは何ですか?」
志乃「妖呑の瓢箪は妖怪の妖力を吸い取って溜めておける瓢箪だ。そうなると真琴の見た子供は瓢箪小僧なのか?」
真琴「分からない。ただ今では珍しい髪型だった気がする。」
樹霧之介「珍しい髪型をした瓢箪を持つ子供ですか。」
志乃「正体はまだ分からないが瓢箪を壊さないと真琴の命が危ないな。」
樹霧之介「だけど意識は戻りましたよ。」
志乃「だがまだ透けている。このまま妖力を渡し続けないとすぐ消えるぞ。」
真琴「私、今そんな事になっているの?」
樹霧之介「大丈夫です。僕達がその子供を探して真琴を助けます。」
志乃「樹霧之介がここを離れたら誰が妖力を渡すんだ?」
樹霧之介「真琴には交代で妖力を渡す事になっています。しばらくしたら焔が来るはずなのでそしたら代わります。」
志乃「そうか。なら私は先に探しに行く。」
樹霧之介「はい。お願いします。」
志乃「念のため1号と4号は残しておくぞ。」
樹霧之介「ありがとうございます。」
雫「4号はこの薬持って来てくれた管狐よね。1号は何するの?」
志乃「1号は管狐の中で一番妖力の扱いに長けているんだ。」
雫「そうなのね。助かるわ。」
志乃「それじゃ何かあれば連絡してくれ。」
樹霧之介「はい。」
志乃は郵便局へ行く道を5号と一緒に歩いていると風見を見つける。
風見「浜名瀬。丁度よかった。真琴が倒れたんだ。」
志乃「聞いた。今犯人探しをしている。」
風見「そうだったんだな。」
志乃「それで変わった子供を見なかったか?」
風見「子供?そいつが犯人なのか?」
志乃「真琴が珍しい髪型の子供を見たらしいんだ。」
風見「真琴が起きたのか?」
志乃「ああ。だがまだ油断はできない。」
風見「そんなに悪いのか?」
志乃「だから原因となった瓢箪を持つ子供を見付けないといけないんだ。」
風見「そいつは瓢箪を持っているんだな。」
志乃「ああ。黒い瓢箪だ。見つけたら知らせてくれ。」
風見「どうやってだ?」
志乃「樹霧之介に知らせてくれればスマホで連絡くれると思う。」
風見「分かった。」
志乃「多分この事を茂蔵は知らないから会ったら教えてやってくれ。」
風見「そうなのか。分かった。」
志乃「それじゃ私はこっち探すから。」
風見「ワイはあっち行くな。」
それから志乃は風見と別れて真琴が見たと言う子供を探しに行く。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




