9ー2、記憶の底に《視点…三栖結人》
「うわっ、びっくりしたぁ、」
誰もいないはずなのに、突然後ろから声がして思わず振り向いた。そこにはこの学校の制服を着た人が立っていた。
「うわっ、びっくりしたぁ、はこっちのセリフですよ。」
僕がこう言うと、
「えっと、す、すいません……?」
と返してきた。明らかに生徒であり、もう下校時刻は過ぎている。少し気になって聞いてみた。
「いや、別に大丈夫ですよ。……ところであなた、もう下校時刻過ぎてますが。」
「あ、いや、えっと、」
「なんですか?」
「私、この学校が家なんです。」
「・・・え?」
「え、じゃないですよ。ここに住んでいる幽霊なんですから。」
「え、あ……、は?」
よく見ると確かに足や腕が透けて見える。幽霊だ。
「私、リリィです! …………知りません?」
「リリィさんって、え、あの、都市伝説の?!」
「え、あ、……そうですけど。そんなに驚かれると思ってなかったです。」
「僕は本当に居るなんて思っていなかったですもん。」
都市伝説とばかりずっと思っていたが、どうやら本当に居たらしい。
「まぁ、火のない所に煙は立たぬって言いますからね。」
「そうですか、」
僕がそう言うと彼女はおもむろに言った。
「まぁとりあえず、初めまして、とでも言っておきますね。」
「あっそうだ、僕の名前言っていませんね、僕は三栖結人です。」
「あ~!、三栖先生ですか!私ずっと探してたんです!」
「え、そうなんですか? 珍しいですね、幽霊が生きている人を探すなんて。なんかあるんですか?」
幽霊も人間を探すことがあるんだと思った。
「あ~えっと、西園寺さんが先生のこと言っていて、」
「西園寺さん? あぁ、彼女ね。どんな話をしていたんですか?」
「私について、ですかね。」
「そうなんですか。…結構、リリィさんってフレンドリーなんですね。もっと怖い人なのかと思っていました。」
「そんなことないですよ、私は皆の話を聞くためだけにここに居るんですから。」
だからリリィさんについてやけに詳しい先生や生徒がいるのか。
「あ、だからか、岩槻先生が『リリィさんを心の拠り所にしている生徒がいる』って言ってたのか。」
「岩槻先生も私とよく話されますからね(笑)。」
「わぁ、そんなこともあるんですね。」
「じゃあ、そろそろお暇いたします。……生徒や先生が待っているので。」
「あぁ、すいません。では。」
棒立ちのまま、気づくと僕はいつの間にか鼻歌を歌っていた。




