4/288
1話
「とにかくだ」
山上は長くなった灰を灰皿に落とすと、びしっと指を立てた。
「むつがあれじゃ、おちおち出掛けらんねぇよ。何とかしろ」
しゅんしゅんと湯気を立てるやかんの火を止めると、祐斗がマグカップの半分より少なめにお湯を注いだ。ティースプーンで、くるくる混ぜ粉と溶かす。
その間、祐斗も颯介も山上は無視だ。
「祐斗君は牛乳?」
「はい、お願いします」
祐斗のマグカップには牛乳を足し、颯介は冷凍庫から出した氷を落としていく。
「むつさんのはブラックのまんまで良いですかね?」
「そうだね…一応これも」
むつのコースターを持ち、颯介からフレッシュとガムシロップを受け取った祐斗はむつの所に向かっていく。
パーテーションの横から、そっとのぞくと足を組んで横になっていたむつが、目を開けていた。不機嫌そうに細められた目に、怖じ気付きそうになりつつも祐斗は笑顔を向けた。
「コーヒー置いときますよ」
テーブルにコーヒーの並々はいったマグカップを置き、すぐに立ち去ろうとしたが、むつがぱっと起き祐斗の腕を掴んだ。




