1話
ずいぶんと、の部分をやや強調して言うと男はにやりと笑った。強面なだけに、そういう笑い方が似合っている。
「ここは、妖がらみの事を引き受けてはいますが…まさか、そういった方々がいらっしゃるとは思いもしませんで」
女の子の方にも視線を向けて、方々と複数の言い方をむつはした。男も女の子、視線を向けると頷いた。
「それにしても、ご両親の血を立派に受け継いでいらっしゃるご様子で安心しました。実は、ご両親が亡くなられたのも、娘さんがここで働いてるのも先日、人伝に聞きましてね」
「そうでしたか。それで、わざわざお越し下さった…ってわけではなさそうですね」
むつの視線は、一言も喋らずに大人しくジュースを飲む女の子に向けられていた。
「えぇ。この子の面倒をしばらく見て頂けませんか?」
「はぁっ?」
むつが目を見開いて驚く様子がおかしかったのか、男は笑っている。
「ここは、託児所ではありませんので…まぁ、その。少し人とは違うかもしれませんが、そういったご用でしたら何とも」
「えぇ。人とは違うからこそ、ここに来たのです、どうかお願いします」
男は座ったままではあったが、深々と頭を下げている。その様子だと、よほど何かがあったのかと思ってしまう。




