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1話
困ったように、むつは息をついた。
「どうか、お顔を上げてください。そして、出来ればきちんとご説明頂けませんか?」
男は、ぱっと顔を上げた。そして、意味ありげに、にやりと笑った。
頭を下げて頼めば大方の人は、断りにくく事情を聞くだろうという、人の優しさにつけこむようなやり方にむつは苛立っているのか、頬がぴくっと痙攣するように動いた。
「そんな怒らないで下さいよ。…先ずそうですね。お察しの通り、わたしは妖です。犬神と申しますが、今は京井遥和と名乗っております」
「弘法大師が猪よけに描いた札からお生れになられたのでしたよね?」
京井遥和と名乗った大柄な男、犬神は頷いた。
「そうです。この女の子は、いわゆる犬神憑きの家系の子供でして、琴音と言います。今は…4歳だったと思います」
自分の事を言われてると分かったのか、琴音は京井の方を向いた。それでも、何か言う事なく大人しく座っているだけだった。
「犬神憑き、ですか?」
むつは考え込むように、下唇を撫でている。
「蠱術を行った方がお身内にいらっしゃるのでしょうか?…ちょっと、失礼」
興味を持ったのかむつは、立ち上がり琴音の横に行き膝をついて、間近でじっとその顔を見ている。そして、その細い手足を触っていく。
「服をまくってもいいかな?」




