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第5話:清風女子高等学校再生計画

【場面】

私立清風女子高等学校、近隣の居酒屋


【登場人物】

主人公……宮本宗助

教師……有栖川麗司

生徒……北村芽衣〈メイ〉

生徒……栗原由衣〈ユイ〉

生徒……白石真里菜〈マリナ〉

生徒……津崎聖子〈ショーコ〉

生徒……渡会遥香〈ハルカ〉

教師……広瀬美咲

教頭……迫田武弘

校長……浜口敏行


【その他】

「」は声に出したセリフ、()は心の声です。

ト書き1つ=1コマを想定して書いていますが、必要に応じて分割してください。コマ割りや間の取り方は製作者様の判断にお任せします。



ト書き1

夕方の職員室。麗司が机に肘をつき、頭を抱えている。その様子を、隣に座る宗助が怪訝そうな目で見つめている。


ト書き2

麗司、顔を上げて宗助を見る。

麗司

「どうして断らなかったんだ?」

宗助

「えっ?」


ト書き3

麗司、苦虫を嚙み潰したような顔で宗助に言う。

麗司

「今年の三年生を、有名大学に送り込む――それがどれほど無謀なことか、分かっているのか?」


ト書き4

宗助の回想開始。校長室に呼び出された宗助と麗司、机に座る浜口の前に並んで立つ。浜口の横には迫田が立っている。

宗助

「は、はあ……」

浜口(回想)

「いやあ! 素晴らしい授業でした!」


ト書き5

宗助視点で浜口と迫田を描写。二人とも笑顔で話し合っている。

迫田

「この学校の生徒たちが、あんなに目を輝かせて――」

浜口

「数学の授業でだよ! 信じられるかね?」


ト書き6

宗助、おずおずと尋ねる。

宗助

「あの……見てたんですか?」

浜口

「ん?」

迫田

「少しだけね」


ト書き7

浜口の顔のアップ。

浜口

「ま、何にせよ――」


ト書き8

浜口視点で、並んで立つ宗助と麗司を描写。

浜口

「君たちは、最高のコンビだ」


ト書き9

不安そうな顔をした宗助のバストアップ。

浜口

「宮本先生が生徒たちを惹きつけ――」


ト書き10

引き締まった表情の麗司のバストアップ。

浜口

「有栖川先生が生徒たちを引っ張る」


ト書き11

満面の笑みを浮かべた浜口を描写。

浜口

「これなら、進めてもよさそうだ」


ト書き12

麗司、引き締まった表情で尋ねる。

麗司

「校長。話が見えないのですが――」

浜口

「ん?」


ト書き13

麗司の顔のアップ。

麗司

「進める、とは、いったい何のことですか?」


ト書き14

浜口の口元のアップ。にいっと唇を歪ませる。


ト書き15

机の上で手を組んだ浜口を正面から描写。

浜口

「『清風女子高等学校再生計画』」


ト書き16

冷や汗を浮かべる宗助と麗司を描写。

浜口

「本格的に始動させようじゃないか」


ト書き17

回想終了。宗助、ぽかんとした表情で麗司に言う。

宗助

「けど、有栖川先生ならできそうな気が――」

麗司

「君も校長も、分かってない」


ト書き18

イメージ映像。派手なギャルの集団。

麗司

「彼女たちの学習の遅れは深刻だ。この学校から大学進学者が出るのは、最短でも三年後……今の一年生が三年生になってからだ」


ト書き19

イメージ映像。英語と数学のテスト問題。

麗司

「特に、英語と数学はどうにもならない。中学一年生の範囲からやり直さなければならない者もいるだろう」


ト書き20

麗司、宗助に厳しい視線を向ける。

麗司

「つまり、六年分の学習を、受験までの九ヶ月でやらなければならないわけだ」


ト書き21

麗司の背中側から宗助を描写。宗助、青ざめた顔をしている。

麗司

「宮本先生に、それができるかね?」


ト書き22

宗助、震える声で答える。

宗助

「む……無理です」


ト書き23

麗司、頭の後ろで手を組んで、背もたれに背中を預ける。

麗司

「平均以上の学力の宮本先生ですら、無理なんだ」


ト書き24

頭の後ろで手を組み、上を向いて話し続ける麗司。そこに広瀬が現れる。

麗司

「机に向かう習慣がない彼女たちに、できるわけが――」

広瀬

「二人とも、ご熱心ですね」


ト書き25

両手でコーヒーポットを持った広瀬の全身を描写。宗助と麗司の視線が広瀬に集まる。

宗助

「広瀬先生、まだいらっしゃったんですか?」


ト書き26

広瀬、にこやかに微笑む。

広瀬

「ええ。生徒の進路相談に付き合ってまして」

宗助

「広瀬先生こそ、ご熱心ですね」


ト書き27

広瀬、コーヒーポットを二人に見せる。

広瀬

「コーヒー作り過ぎちゃって……ちょうど二杯分あるんで、よかったら召し上がってください」

宗助

「ありがとうございます!」


ト書き28

広瀬、麗司に目を向ける。麗司は真っ赤な顔をしている。

広瀬

「有栖川先生も、よかったら――」

麗司

「い……いただきましょう」


ト書き29

広瀬、麗司のコーヒーカップにコーヒーを注ぐ。麗司は真っ赤な顔のまま、下を向いている。


ト書き30

コーヒーを注ぎ終えた広瀬、二人に問う。

広瀬

「聞こえちゃったんですけど……三組に、進学を希望してる子がいるんですか?」


ト書き31

宗助、笑顔で答える。

宗助

「そうじゃなくて、校長に言われたんですよ。三組から大学に進学する子を出せないかって」

広瀬

「まあ。大変じゃありませんか?」


ト書き32

宗助、麗司に目を向ける。

宗助

「はい。有栖川先生が無理だと言ってるんで、明日――」

麗司

「確かに、今のままでは厳しいでしょう」


ト書き33

宗助、驚愕の表情で麗司を見る。麗司はキメ顔。

麗司

「しかし、私は教育者……困難だからといって、生徒たちの将来を諦めるわけにはいきません」


ト書き34

麗司、立ち上がる。

麗司

「何より――」


ト書き35

麗司の顔のアップ。広瀬に笑顔を向ける。

麗司

「私は、あの子たちの可能性を信じていますから」


ト書き36

麗司、広瀬に深々と頭を下げる。宗助、固まった顔で麗司を見る。

麗司

「コーヒー、ありがとうございました」

宗助

(何言ってんだ……?)


ト書き37

広瀬、二人に笑顔を見せる。

広瀬

「頑張ってくださいね」


ト書き38

去っていく広瀬を、立ったまま呆然と見つめる麗司。宗助が話しかける。

宗助

「あの……有栖川先生?」


ト書き39

麗司、宗助に目を向ける。

麗司

「何だね?」

宗助

「話が百八十度変わったような気がするんですけど……」


ト書き40

麗司、座って宗助に体を向ける。

麗司

「気のせいだ。それより、場所を変えて話そう」

宗助

「はあ……」

宗助

(一目惚れってやつか……)


ト書き41

清風女子高の外観を描写。

 ※時間経過


ト書き42

終業のホームルームの時間。宗助が三年三組の教壇に立ち、少し離れた場所から麗司が生徒たちを見ている。

宗助

「ちょっと聞きたいんだが――」


ト書き43

宗助の顔のアップ。冷や汗を浮かべている。

宗助

「この中に――」


ト書き44

宗助視点で生徒たちを描写。ぽかんとしている。

宗助

「大学に行きたいと思ってる者はいるか?」


ト書き45

メイとユイ、顔を見合わせる。


ト書き46

間を置いて、教室が笑いに包まれる。

メイ

「先生! 何言ってるの!」

ユイ

「ウチらが大学って、超ウケるんだけど!」


ト書き47

笑い続ける生徒たちを、麗司が真剣な顔で見つめる。

麗司

(あくまで――)


ト書き48

麗司視点で、盛り上がる生徒たちを描写。

麗司

(自らの意思で選んだという形にしなくてはならない)


ト書き49

イメージ映像。半纏を着て机に向かう生徒を描写。

麗司

(それが、受験を戦う武器になる)


ト書き50

麗司、宗助に視線を送る。宗助は麗司に小さく頷く。

麗司

(宮本先生……頼むぞ!)


ト書き51

宗助、笑い合う生徒たちに向かって言う。

宗助

「はい。皆静かに」


ト書き52

宗助、黒板に振り返り、チョークを握る。

宗助

「実は、俺と有栖川先生は――」


ト書き53

宗助を見る生徒たちを描写。

宗助

「大学に行きたい生徒のために――」


ト書き54

生徒たちの後ろから黒板を描写。『大学進学コース』と書いてある。

宗助

「大学進学コースをつくることにした」


ト書き55

呆然と黒板を眺める生徒たちを描写。

宗助

「ホームルームが終わってから十時半まで、毎日ここで勉強する。定員は五名。質問がある者は手を挙げてくれ」


ト書き56

メイ、小さく手を挙げる。

メイ

「先生……」

宗助

「北村。質問か?」


ト書き57

メイのバストアップ。不安そうな顔で宗助を見る。

メイ

「それって……先生も毎日残るってこと?」


ト書き58

宗助、満面の笑みをメイに向ける。

宗助

「もちろんだ。生徒が頑張るなら、俺も頑張る」


ト書き59

メイ、ぱあっと顔を明るくする。

メイ

「じゃあ、やってもいいかも!」


ト書き60

メイの隣に座るユイ、メイの肩に手を置く。

ユイ

「ちょっと! 分かってんの?」

メイ

「何が?」


ト書き61

ユイ、メイに厳しい目を向ける。

ユイ

「毎日十時半までだよ! 全然遊べないじゃん!」


ト書き62

メイ、くすっと笑う。

メイ

「十時半まで先生と一緒にいられるってことじゃん」

ユイ

「そ、そうだけど……」


ト書き63

宗助、話し合うメイとユイを見つめる。

メイ

「それに、早く帰ったって大したことやってるわけじゃないし」

ユイ

「まあ……そうよね」

宗助

(よし……狙い通りだ……)


ト書き64

宗助の回想開始。昨日の麗司との作戦会議の様子。居酒屋の中、宗助と麗司がちゃぶ台を挟んで、向かい合って話をしている。

宗助

「五人体制……ですか?」

麗司

「そうだ」


ト書き65

麗司、右手にビールを持って説明する。

麗司

「受験に向けた特別チームを組む場合の最適人数……俺の経験上、これより多くても少なくても駄目だ」

宗助

「はあ……」


ト書き66

麗司、左手の三本の指を宗助に向ける。

麗司

「そして、この五人の中に、絶対に組み込むべき三名がいる」


ト書き67

回想終了。宗助視点でユイを描写。

宗助

(その一人がお前だ……栗原由衣!)

メイ

「ねえ、一緒にやってみようよ」

ユイ

「うーん……どうしよっかなあ……」


ト書き68

宗助の回想開始。昨日の作戦会議。

宗助

「栗原?」

麗司

「ああ」


ト書き69

宗助、きょとんとして聞き返す。

宗助

「学力的には、そこまで目立つ生徒ではありませんが……」

麗司

「あの子はよく漫画を読んでいる」


ト書き70

宗助、昼休みに机に座って漫画を読むユイをイメージする。

宗助

「確かに読んでますけど……漫画でしょ?」

麗司

「ただの漫画好きではない」


ト書き71

イメージ映像。名作漫画の表紙。

 ※ぼやけた表現で

麗司

「彼女が読んでいたのは、大人でも理解するのが難しいと言われているようなものだ」


ト書き72

麗司、宗助に目を向ける。

麗司

「ああいった作品を読み込んでいるなら、読解力が鍛えられている可能性がある」


ト書き73

回想終了。ユイ、宗助に笑顔を向ける。

ユイ

「じゃあ、アタシもやってみる!」

メイ

「やった! ユイが一緒なら安心だよ!」

麗司(回想)

(そして、読解力こそが学力向上の鍵だ!)


ト書き74

宗助、ちらっと麗司に視線を向ける。麗司は小さく頷く。

宗助

(まずは一人目)


ト書き75

宗助、生徒たちに目を向ける。

宗助

「あと三人。他には――」


ト書き76

生徒の一人が大きく手を挙げる。


ト書き77

手を挙げた生徒、マリナを描写。わざとらしく机に胸を乗せ、宗助に妖しい視線を送っている。


ト書き78

宗助、狼狽えながら尋ねる。

宗助

「白石、質問か?」

マリナ

「ううん」


ト書き79

マリナの顔のアップ。妖艶な笑みを湛えている。

マリナ

「アタシも入る~」


ト書き80

宗助、冷や汗を浮かべる。

宗助

「そ、そうか。白石も大学に――」

マリナ

「そうじゃなくってぇ」


ト書き81

マリナ、くすくすと笑いながら答える。

マリナ

「彼氏と別れちゃってぇ、暇なんだよねぇ」


ト書き82

宗助、マリナが不良風の男と話していた場面を思い出す。

宗助

(あのときの男か……)

マリナ

「ねえ、先生。いいでしょ~?」


ト書き83

宗助、ごくりと唾を飲み込む。

宗助

(白石が入ってくるとは――)


ト書き84

宗助、マリナに笑顔を向ける。

宗助

「ああ。もちろんだ」

宗助

(予想外だが……指導のチャンスかもしれない)


ト書き85

麗司、生徒たちを見つめながら、額に汗を浮かべる。

麗司

(残りの枠は二人……)


ト書き86

麗司視点でショーコを描写。ショーコは下を向いている。

麗司

(津崎……手を挙げてくれ!)


ト書き87

麗司の回想開始。昨日の作戦会議。

宗助

「確かに、津崎は中学まで成績が良かったと聞いています」

麗司

「正確には、中学三年の夏までだ」


ト書き88

イメージ映像。父が、若い女を連れて去っていく姿を見つめるショーコ。

麗司

「市役所に勤めていた父親が、若い女とともに蒸発」


ト書き89

イメージ映像。キャバクラで働くショーコの母。

麗司

「母親は、生きるために水商売を始めた」


ト書き90

イメージ映像。テレビに向かって座り、ゲームをするショーコ。

麗司

「それから彼女は、学校に行かなくなった」


ト書き91

回想終了。ショーコを見つめる麗司。ショーコの隣に座る女子がショーコに話しかける。

麗司

(だが、昨日の授業――)

女子1

「ねえ、ショーコ」


ト書き92

ショーコが隣の女子に顔を向ける。

女子1

「やってみれば? 昨日の数学、凄かったじゃん」

ショーコ

「え……」

麗司

(お前はまだ、全てを諦めたわけじゃない)


ト書き93

ショーコ、再び下を向く。

ショーコ

「わ、私は……」


ト書き94

ショーコの背中から、焦った表情で大声を出す麗司を描写。

ショーコ

「お母さんが心配するから……」

麗司

「つ、津崎!」


ト書き95

ショーコ、顔を上げて麗司に目を向ける。麗司は心ここにあらず、といった表情。

麗司

「お母さんは、宮本先生と俺が説得する」

麗司

(まずい)


ト書き96

麗司、ショーコにぎこちない笑顔を向ける。

麗司

「だから、前向きに考えてみてくれないか?」

麗司

(自分で選ばないといけないのに……)


ト書き97

ショーコ、呆然と麗司に目を向ける。


ト書き98

ショーコ、小さく頷く。


ト書き99

麗司、額に汗を浮かべながら微笑む。

麗司

「それじゃあ、近いうちにお宅に伺おう」

麗司

(俺としたことが……)


ト書き100

宗助、麗司に目を向ける。

宗助

(あと一人――)


ト書き101

麗司、宗助に頷く。

宗助

(あいつは絶対に手を挙げない)


ト書き102

宗助、麗司に頷き返す。

宗助

(正面からぶつかるしかない)


ト書き103

宗助、教壇から歩き始める。生徒たちは無言で宗助を見つめる。

宗助

(この計画の最重要人物――)


ト書き104

宗助、顎に手を乗せて外を眺めるハルカの前に立つ。

宗助

(渡会遥香!)


ト書き105

ハルカ、宗助の接近に気付き、顔を向ける。

ハルカ

「先生……何?」


ト書き106

宗助、額に汗を浮かべ、ハルカに言う。

宗助

「渡会……俺たちと一緒に、大学を目指さないか?」


ト書き107

ハルカ、くすっと笑う。

ハルカ

「絶対にイヤ」


ト書き108

ハルカ、わざとらしく腕時計を見る。

ハルカ

「それより……もうバスの時間なんだけど、帰っていい?」


ト書き109

宗助、苦渋の表情で答える。

宗助

「……分かった」


ト書き110

ハルカ、鞄を肩にかけて立ち上がる。


ト書き111

ハルカ、教室の後方出口へと歩いて行く。その背中に宗助が声をかける。

宗助

「渡会!」


ト書き112

宗助の顔のアップ。泣き出しそうな表情。

宗助

「お前……やればできるはずだろう?」


ト書き113

ハルカ、宗助に背を向けたまま立ち止まる。

宗助

「なのに、どうして……」


ト書き114

見開き。俯くハルカと、ハルカを見つめる宗助を横から描写。

 ※ハルカの顔は髪に隠れて見えない


ト書き115

ハルカ、答えず、無言のまま教室から出て行く。


ト書き116

宗助の背後にやってきた麗司、宗助の肩に手を置く。

麗司

「波乱の幕開け……か」


ト書き117

麗司、笑顔で宗助に問う。

麗司

「宮本先生……覚悟はできてるか?」


ト書き118

宗助、振り返って麗司と目を合わせる。


ト書き119

宗助、決意を込めて静かに答える。

宗助

「はい」

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