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夢運来人(ムーンライト) <第一部>ご当地ドラゴン群雄割拠 ~裏口開けたらラスボスでした  作者: ゴスロリ王子りら
第1章 avant@始まりの悪夢

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●●●第2話 安野純凪(やすのじゅんな)●●●


この作品には 〔15歳未満の方の閲覧にふさわしくない表現〕〔残酷描写〕が含まれています。苦手な方はご注意ください。

挿絵が可愛いので、念の為にR15設定いたしました。


お洋服の裾が長いと動きにくいので、ミニ丈ファッション。

業火で灰になるのはお洋服だけ。チート級の肉体には傷一つ付きません。

服なんて飾りです。人間にはそれが分からんのですよ。

そんな感じです。

(この小説は挿絵機能を使用しています。挿絵が苦手な方はお手数ですが挿絵機能をOFFにしてから御覧くださいませ)


どうぞよろしくお願いいたします。


*挿絵は小説の人物設定を入力したAI画像が多いですのですが、何となくイメージに近い仕上がりになりました。






 ――二人は闇の中へと落ちてゆく。


 ――京都駅ビルから地上へ。


 ――いや地上よりもっと深い所へ。



 夢の中とはいえ、落ちていく感覚、闇色に包まれて何も見えない視覚、さらに得体の知れない声の主への恐怖は全て本物である。


 闇色の空間を落ちていく純凪と倫子の先に光が見えた。


 その光は瞬く間に大きくなり、二人はその中に吸い込まれるように落ちていった。


 そして、光の中に入った瞬間、急に現れた地面に純凪は受け身を取る間もなく体を強烈に叩きつけられた。


「ぐぁっ!!」


 全身を強く打ち付け、思わず叫び声を上げた。


 激しい痛みが全身に走ったが、何故かそれは階段を踏み外して落ちたほどの痛みでしかなかった。


 京都駅ビルの高さから地下深くまで落ちたはずだったが、怪我すらしていない。


 純凪は、立ち上がって落ちてきた方を見上げた。そこには一緒に落ちてきた倫子が、純凪の頭上で宙に浮いてうつ伏せに横たわっていた。


 そこには、まるでガラス張りの透明な地面があるかのようだった。


 倫子は気を失っているのだろうか、ピクリとも動かない。


 純凪は倫子の方へ手を伸ばしたが、宙に倒れている倫子まで指先が一メートルほど届かなかった。


 純凪が倫子の名を呼ぼうとした時、巨大な手のような細く長い形をした光の塊が、空間を割るように現れた。


 倫子がそれに握られたかと思うと、倫子の体もキラキラと光るシルエットのような光の塊に姿を変えた。


 そして、そのままその巨大な手に吸い込まれるように消えていった。


 純凪は、ここがどこで何が起こったのか理解できなかったが、倫子が消滅したことだけは理解した。


「あぁ……倫子……」


 純凪は、倫子が消滅したその光景を目の当たりにして、しばらくの間呆然としていたようだった。しかし、実際に過ぎた時間は、巨大な手のようなものを目にしてすぐ、足元の石を手に取って投げつけようと構えるまでの僅かな間だった。


 倫子を消滅させた巨大な光の手は、そのまま音もなく薄く透けて消えていき、その向こうには澄んだ青い空が見えた。


「倫子……」


 純凪は弱々しい声で呟き、手に握っていた石をポトリと落として倫子のいた所を呆然と見つめていた。



「ようこそ幻夢界へ」


 その時、どこからともなく男とも女とも分からぬ低い声がした。


 純凪はハッと我に返り、声がした方を見渡したが、その声の主はどこにもいなかった。


 純凪が落ちてきた場所は、ごつごつした岩と砂の大地で、三百六十度どの方向も地平線まで岩と砂の荒野が広がっている。


 空には晴れ渡った雲一つない青い色が広がっている。


 しかし、ここに太陽はないのだろうか。空はとても明るいが太陽がどこにあるのか分からない。空そのものが光輝いているようにも見える。そのせいか、影が真下に僅かにしか出ていない。


 そして、上空には二人が落ちてきたと思われる闇色の空間が開いている。


「ここは、どこだ……」


 純凪は、その声の主に問いかけるでもなく、一人で呟くように言った。


「ここは幻夢界。うつつ、すなわち現実の世界に住まうお前達人間共が創り出した世界である。そう、ここは人間共の夢や幻、創造の世界である。そして、我等夢魔が人間共の負の想念によって生み出される世界である」


 先ほど天から聞こえた声だ。


「幻夢界? 夢? うつつ? 夢魔……?」


 夢魔とは夢の中に現れる悪魔の総称である。


 しかし、この時の純凪には、何の事なのか理解が追いついていなかった。


「我等夢魔は、人間の夢や心を糧として喰らっておる。お前はその糧となるのだ」


 夢魔と名乗ったその声の主は嬉しそうな声で話をする。


 純凪が声のする方を見ても、やはりそこには青い空が広がっているだけで誰もいなかった。


「先ほど我は、お前とつながるために、お前の夢の一部を我の体内に取り込んだ。これで我は、お前が眠るたびに悪夢となって、いつでもお前の夢の中に現れることができるのだ」


 純凪は、夢魔が言う夢の一部というものが、倫子の事だと理解するのがやっとだった。


 そして、夢魔が話し終えると同時に、純凪の体は先ほど落ちてきた闇色の空間へ吸い込まれるように浮き上がり、徐々に上昇していった。


「うわぁ……」


 純凪は、夢魔に自由を奪われて身動きの取れない体に、恐怖に震えた声を出した。


「お前の夢を喰らうのはこの次からだ。そう……眠るたびにお前は悪夢を見続け、永遠に我に喰われ続けるのだ」


 純凪は身動きができないまま、その声に見送られるように闇色の空間の中へ放り込まれ、どこかへ送られていった。


 夢魔の不気味で高らかな笑い声が、純凪の頭の中にまで響き渡る。


「ふはははは! では、次の夢で会おうぞ!」


 そして、その笑い声がみるみる小さくなっていった。


 純凪は何が起こったのか考える余裕すらなく、恐怖で自由を奪われ、夢魔の成すがままであった。



  ☆ ☆



 やがて闇色の空間が徐々に晴れて消えてゆく。そして、薄っすら景色が見えてくると、一気に周囲の視界が明るくなった。


 眩しくて思わず目を閉じた純凪だったが、ゆっくりと目を開けると、その視界には先ほど純凪と倫子がいた京都駅ビルの中にあるレストランが映っていた。


 建物はもちろん、椅子もテーブルも元通りで客もいる。そこにいる客達は何事もなかったかのように会話をし、楽しそうな笑い声が聞こえている。


「ここは? 元の場所……なのか?」


 純凪は、元いた席に着いていた。


 窓の外には京都タワーがよく見える。


 純凪の周囲が闇色に染まる前の状態に戻っているようだ。むしろ闇色など初めからなかったかのようだった。


 そして、テーブルの上には純凪と倫子のランチが湯気を立てて並んでいる。


 純凪は、まるで悪い夢でも見ていたような気分だった。


 いや、今も夢を見ている最中なのだから、夢の中で夢でも見ていたのだろうか。


 しかし、そこには倫子の姿はなかった。


「倫子!」


 我に返った純凪は立ち上がって叫んだ。


 そして、倫子を探そうと体ごと振り向いた時、視界の全てが一瞬で真っ白に輝き消滅した。純凪は眩しさのあまり、思わず目を強く閉じた。



  ☆ ☆



 ――そして、純凪がすぐに目を開けると、目の前には見慣れた自分の部屋が映っている。


 まだ焦点がしっかり合っておらず、視界がぼんやりとした寝起き全開である。


(――やっぱり、あれは全部夢だったんだ……)


 純凪は、現実にはあり得ない夢にも関わらず、異様なほどにリアルだったので現実の出来事だったのではないかと錯覚を覚えた。


 周りを見渡すと、純凪がベッドから起き上がったと思っていた場所は床の上だった。


 ちょうどベッドと小さなこたつ机の間のスペースにすっぽり落ちたような状態になっていた。


 今は夏なので、もちろんこたつとしては使っていない。こたつ布団を片付けてミニテーブルとして使っている。


(何だか分からないけど……もう何もかも疲れた……)


 純凪は、何も考えることができないほどの疲労に襲われていた。


 変な汗で全身汗だくになっている。


 先ほどの悪夢のせいだろうか。あるいは、倫子と別れたショックのせいかもしれない。


 少なくとも夏の蒸し暑さのせいではなかった。


 そして、涙を流したまま眠っていたので目が腫れぼったい。


(倫子は夢の中で夢魔に消されただけじゃない。もう俺の傍にはいないんだ……)


 全てがうつつに戻ってきた純凪は、倫子と別れたことを改めて思い出した。知らず知らずに、また涙が込み上げてきて止まることがなかった。


 そして、そのまま床の上で座ってしばらく塞ぎ込んでいた。


「はぁ……」


 純凪は大きなため息をついた。


「ベッドから落ちたせいで、あんな変な夢を見たのかな?」


 よく見ると、こたつ机が少し斜めに配置されていて、テーブル板も少しずれている。


 こたつ机の上にある飲みかけのペットボトルの紅茶が倒れている。幸い、蓋は閉まっているのでこぼれていなかった。


「しかも、背中が痛い」


 汗だくのシャツを脱いで鏡で背中を見ると、左の脇腹辺りが少し赤くなっている。


 ベッドから落ちた時に、こたつ机で打っていたようだ。


 そのまま体も拭かずに新しいシャツに着替えて、無造作にベッドの上に腰かけた。


「そっか、今日は午後から倫子と一緒に図書館へ行く予定だったけど、朝から倫子が来てくれて、時間までここで一緒に遊んでたんだっけな」


 倒れ込むようにベッドの上で横になった。今朝の出来事が嘘のように思えてくる。



 純凪が床に座ってベッドにもたれ掛かりながらテレビを見ていると、ベッドの上に座って一緒に見ている倫子の足が純凪の顔の横に突き出てきた。


 何事かと思って振り返ると、倫子はストレッチをしながらテレビを見ていた。


 そして、ちょうど倫子が足をくるっと回した時、純凪は頭に蹴りを喰らった。


挿絵(By みてみん)


 もちろんわざとではない事くらいは分かる。倫子はとても慌てた様子で謝っていたのだから。


 純凪が最後に倫子と触れた感触で覚えているのはその蹴りだった。


 正確には、蹴られた所を倫子がすぐに頭を撫でてくれていたのだが、蹴られた感触が強烈すぎて、その温かく柔らかな感触が全て消し飛び、思い出すことができなかった。


「はぁ……」


 もう一度ため息をついて、純凪はベッドの上でそのままじっとしていると、先ほどの悪夢が思い出されてきて恐怖の余韻に包まれていった。


 しかし、疲労と眠気には敵わず、純凪は再び眠りに落ちていった……






読んでくださってありがとうございました。


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