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夢運来人(ムーンライト) <第一部> ご当地ドラゴン群雄割拠 ~裏口開けたらラスボスでした  作者: ゴスロリ王子りら
第1章 avant@始まりの悪夢

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●●●第1話 阿板倫子(あばんともこ)●●●


この作品には 〔15歳未満の方の閲覧にふさわしくない表現〕〔残酷描写〕が含まれているかもしれません。苦手な方はご注意ください。

挿絵が可愛いので、念の為にR15設定いたしました。


お洋服の裾が長いと動きにくいので、ミニ丈ファッション。

業火で灰になるのはお洋服だけ。チート級の肉体には傷一つ付きません。

服なんて飾りです。人間にはそれが分からんのですよ。

そんな感じです。

(この小説は挿絵機能を使用しています。挿絵が苦手な方はお手数ですが挿絵機能をOFFにしてから御覧くださいませ)


どうぞよろしくお願いいたします。


*挿絵は小説の人物設定を入力したAI画像が多いですのですが、何となくイメージに近い仕上がりになりました。





挿絵(By みてみん)


「幻夢界に引きずりこめ!」


 男とも女とも分からぬ低い声が天から聞こえた。



 その瞬間、よく晴れた夏の日差しが強い七月のランチ時、京都タワーがよく見える京都駅ビルのレストランが闇色に包まれて徐々に消えてゆく。


 テーブルや椅子はもちろん、そこにいる客達も全てが闇色に包まれて消えてゆく。


 まるで映像がフェードアウトしてゆくように。


 その中に、他の客達のように消えないで生き残っている一組の若い男女がいた。


 男は何が起こっているのか理解できずに、慌てふためいて辺りを見回している。


 一方、女の方は目の前の出来事が見えていないような、何事もないような振る舞いをしている。


 まもなく闇色が二人のいる場所まで広がり、床が闇色に包まれて消えていった。それと同時に、二人はその闇色の空間の中へと落ちていった。


 闇色の空間はさらに広がり続け、レストランはおろか屋上や下の階までもが闇色に包まれて消えていった。


 レストランの中からはその闇色しか見えないが、遠く離れた視点でそこを見てみれば、地上まで闇色が広がっていた。


 そして、その地上すらも闇色に包まれて消えていった。


「と、とも……こ……」

「じゅ……んな?……」


 闇色の空間へと落ちていった二人は、男は安野純凪、そして女は恋人の阿板倫子である。



 純凪は、ここが自分の夢の中であると、はっきりと分かっていた。そして、今この場にいる恋人の倫子が、この夢の登場人物である事も分かっていた。


 これは純凪の夢が闇色に包まれ、全てが消えてゆくところであった。



 何故、これが純凪の夢であるかというと……



 ・‥…――☆・‥…――☆・‥…――☆



 ――そう、あれは五ヶ月ほど前、純凪が高校三年の冬、二月の事だった。


 純凪と倫子は同じ高校のクラスメイトで、卒業式の少し前に付き合い始めた。


 そのきっかけは大したことではなかった。


 二人は高校三年の時に同じクラスになっていたが、お互いの関係はこれといった接点もない、普通に挨拶をかわす程度のその他大勢に含まれるクラスメイトの一人だった。


 部活も純凪は歴史研究会という名ばかりの帰宅部、一方の倫子は陸上部のトップランナー、お互い何の接点もなかった。


 名前の順序も、『阿板倫子あばんともこ』、『安野純凪やすのじゅんな』で五十音順でも遠く離れているので、クラスのイベントごとで近くに並ぶこともほとんどなかった。


 そんな関係が変わったのは、二月十三日、バレンタインの前日だった。


 友チョコ制作会というものを、クラスの女子が五人ほど集まってやっていたようで、その中の一人に倫子もいた。


 ちょうどクラスの大半が昼食を終えた昼休みの半ば、純凪が友達数人と教室で他愛ない話をしていた時に、彼女達が声をかけてきた。


「ねぇ、男子ぃ! みんなでチョコ食べる? おすそ分けー!」


 そんな感じで、純凪が話をしていた男子グループにチョコレートを配ってきた。


「え? あ、ありがとう。阿板さん」


 純凪は、倫子から友チョコ制作会のチョコレートをまとめて受け取った。


 もちろん、このチョコレート自体に特別な意味があった訳ではない。いや、高校三年の二月といえば卒業まで残りわずかである。


 本命のために試作した物や形の崩れた失敗作を処分するという感じなのかもしれない。


 純凪達が貰ったチョコの袋を開けると、形の崩れたものがほとんどだったので、まず間違いないだろう。


 ちなみに倫子は一口サイズのチョコレートケーキを作っていたようだったが、それはチョコレートの塊の中にスポンジケーキが埋め込まれたような不思議な出来だった。



 参考までに述べておくと、純凪自身はイケメンでもインテリでもましてやコワモテでもない。


 色白なので、たまに肌が綺麗と言われることもあるが、モヤシの誉め言葉的な扱いだと思っている。


 スポーツでは、短距離走が速かったが球技や水泳が苦手で、体育の成績としては良いと悪いの真ん中を取って中の中だった。


 ただ、音楽は音痴過ぎて逆に悪目立ちするレベルである。


 勉強の成績は上位一桁で良い方であるが、それは純凪の在籍している一般科クラスの中での話だった。


 実は、純凪の通う高校は、一流大学を目指す進学科クラスが学年の半分を占めている。そのため、一般科で一位の生徒より進学科最下位の生徒の方が学力が上という評価になっている。


 そんな感じで純凪自身は良くも悪くもなく、その他大勢の中に埋もれるような目立たない高校生活だった。


 一方、倫子の方は、さらさらした長い髪をポニーテールにしていて、歩くたびにふわふわと髪が揺れる。


 倫子は陸上部に入っており、そのせいでもあるが夏はしっかり日焼けをした小麦色の肌で健康的な美人である。実力は、陸上の中距離走と長距離走が京都府下大会準決勝レベルで全国大会にも一度出場したこともあった。


 ただ、純凪には言わなかったが、貧乳なところをわりと気にしているようであった。しかし、当の純凪は、陸上選手として走るには胸は小さい方が良いくらいにしか思っておらず、全く気にしていないようであった。


 一般的に高校三年になると、夏過ぎには部活を引退し、受験勉強や就職活動に精を出すものである。


 しかし、倫子は受験勉強の合間に引退した陸上部に顔を出しては後輩に指導をしていた。それで多くの後輩達から面倒見が良い先輩と言われていて、卒業後した今でも慕われている。



 純凪は、友チョコ制作会が作ったチョコレートを貰うまでは倫子とプライベートの話をしたことすらなかったのだが、これをきっかけに話をするようになっていった。


 その後、学部は違ったが同じ大学に進学が決まっていたことを知って、さらに仲良くなって二人の距離が縮まったという感じだった。


 純凪は、そんな倫子と付き合ってからというもの、倫子が望むことや楽しむことには努力を惜しまず、何でもしてあげていた。


 その『してあげる』という言葉は、上から目線でも恩着せがましくでも、もちろん見返りを求めるでもない。ただ純粋に、倫子に楽しんで喜んで欲しいだけだった。


 その意味を倫子も十分理解していたので、本当に幸せそうで楽しそうな顔をしていた。そして、ありがとうの言葉も心の底から純凪に言っていた。


 純凪はそれで満足していたし、次に倫子のために何かをしてあげることへの活力にもなっていた。


 そんな二人は、誰が見ても仲の良い恋人同士にしか見えなかった。



  ☆ ☆



 その関係が急に変わったのは、付き合って四ヶ月ほど経った今日の夕方、そう、純凪が眠る前の事だった。


 何の前ぶれもなく倫子からさよならの電話が純凪に入った。


 それは、別れる理由も全く分からないまま、ほとんど一方的に別れ話を切出されたのだった。



 その日は、午後から大学の課題をするために二人で図書館へ行く予定だった。


 しかし、倫子は朝から純凪の家までやってきたのである。


「どうしたの倫子? 約束は昼からじゃなかったっけ?」

「ふふ。休みなんだし、純凪と二人で朝からゆっくりするのもいいかなって思って。忙しかった?」

「いや、大丈夫だよ。どうぞ、上がって」


 少し驚いた純凪だったが、少しでも一緒にいたいという倫子の言葉に笑顔がこぼれていた。


 そして、昼まで二人で部屋でゲームをしたりテレビを見て過ごしてから午後からは予定通り図書館へ行った。


 もちろん帰りは、近くの喫茶店で他愛のない話をして、少しでも長い時間二人で過ごそうとした。


 その時、倫子が来月公開の最近話題になっている映画、『陰陽師頂上対決! 安倍晴明VS賀茂保憲』を一緒に見ようと言ってきた。


 話が盛り上がったところで、その場で倫子がネットでチケットを予約しようとしていたが、予約の操作に四苦八苦していた。それを見た純凪は、代わりにチケットを取ってあげたのである。


「わぁ! 純凪、ネット予約とかサクサクできるんだ。すごいね! ありがとう」


 純凪も手際が良いというわけではなかったが、しっかりチケットを確保できたので、倫子は純凪に感激していた。


 そして、いつものように二人の一日が終わると、一緒に途中まで帰り、『また後で通話しようね』と、言って別れた。



 ――その『また後で通話しようね』の中身が別れ話だった。


 純凪は、あまりにも話が突然すぎて冷静に考えることができず、混乱するばかりで何一つ理解ができないでいた。


「ともこ、ねぇ、倫子。急にそんなこと言ってどうしたんだ?」

「何があったんだ?」

「俺が倫子にしてあげたことで、何か足りなかったのか?」

「俺がすることに不満があったら遠慮しないで言ってくれたらいい。そう、いつも言ってるだろ」

「何でもしてあげるから、遠慮なんてしなくていいんだよ」


 純凪も後から思い返すと、何故? 何故? と、一方的に話していたようであった。


 一方的な別れ話というよりも、お互い一方的に話していて会話が成立していなかっただけかもしれない。



 やがてお互いの話が尽きて終わり、純凪は布団の中で泣き崩れて眠ったのである。



 ☆――…‥・☆――…‥・☆――…‥・



 だから、純凪が倫子と一緒にいる今のこの状況は、夢の中だということだ。


 もう一つ付け加えて言うならば、この倫子は本物ではないことが見た目からもはっきりと分かる。


 ……胸が大きい。


 以前、『これくらいは欲しい』と倫子自身が言っていた大きさほどの胸であり、絶壁のような貧乳は見る影もなかった。


 もっとも、今起こっている『空間が闇色になって消え、純凪と倫子がその中に落ちてゆく』という非現実な出来事に巻き込まれている状況を、夢と言わざるを得ないのであるが……






読んでくださってありがとうございました。


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