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女の子ひろいました!  作者: 武藤かんぬき


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35――込み入った会話

いつもブックマークと評価、誤字報告ありがとうございます。


 中断した話を元に戻すために、まずはどうして私達に襲いかかってきたのかを聞いてみた。


「そうじゃのう、別に襲い掛かれと命令された訳ではないのじゃ。神力を盗んだ者の波長は記憶していたから、見つけたらすぐに接触して意図を確認する手筈じゃった。ただその幼き姿に恐ろしい量の神力を秘めているのを察知して、敵対勢力の人間の可能性があったため弱らせてから話をしようと思ってな」


 14歳の女の子にしてはずいぶんと短絡的で好戦的な考え方だなぁと呆れつつ、ミーナと顔を見合わせた。自分より強い人を探して旅をしている格闘家じゃあるまいし、すごくはた迷惑だなと思う。


「しかし蓋を開けてみれば、異なる世界から訪れた客人とはな。お互い深くは踏み込まない方がよいだろうし、詳細は聞かぬが苦労したんじゃのう」


「いえ、むしろこちらの世界に来てからは佐奈さんに助けられてばかりで。大変だったのは、佐奈さんの方だと思います」


 ミーナの言葉に籠もった想いが伝わったのか、咲夜さんが私を見る目の温度が先程とは違うのがなんとなくわかる。


「……なるほど、その呑気そうな顔の印象のままで、お主は随分とお人好しなんじゃのう」


「お願いだから普通に褒めてよ、もう!」


 私が文句を言うと、咲夜さんが中学生の女の子とは思えないくらい貫禄で呵呵と笑う。そんな様子に私はいちいち反応するのが馬鹿馬鹿しくなって、思わず苦笑が浮かんでしまった。


 しばらくほんわかした空気に満ちていたけれど、コホンと咲夜さんが咳払いをして話が元に戻る。


「襲った詫び代わりに少しだけ教えておくのじゃが、儂らの敵対勢力は有無を言わさず命を獲りにくる奴等じゃから気をつけた方がええぞ。話し合いなんぞ無駄じゃからな、相手を倒せるだけの力がないと判断したら逃げる。これが一番の対処法じゃ」


「……そんな危険な人達がいるんだね、そんな団体が咲夜さん達と争っているなんてなんだか怖い」


「宗教が根底に関わっておるからの、自らの信じる神の教えを貫くためなら相手を滅ぼすことも厭わない。どれだけ綺麗事を並べても、そういう側面があるのは事実じゃ」


 咲夜さんはそう言うと、肩を竦めてからため息をついた。咲夜さんの世代で起こった対立じゃないだろうからきっとすごく昔からの因縁を背負わされていて、それによる苦労も色々あるんだろうなぁと同情してしまう。きっと咲夜さんとしては、そんな同情なんていらないものなんだろうけれど。


「しかしその姿では、神力が尽きてしまっては身を守ることも難しいのう。保護者の此奴は戦うこともできない一般人ともなれば、足手まといにしかならんからの」


 言い方はすごく腹が立つけれど、言っていることは正論だ。今日も咲夜さんに襲われた時に、私は何もできなかった。もしも本当に命を奪いに来た相手に私ができることなんて、この身を盾にしてミーナを守るぐらいしかできないんだよね。1回だけ使える人間の盾、相手の攻撃の威力によってはまとめて吹き飛ばされて、ミーナの人生も終了させてしまうぐらい脆弱な盾でしかないのだから。


 私がそんなことを考えていると、咲夜さんも自分の中で考えがまとまったのか、パンと手を合わせた。


「儂の一存では許可はできんが、曾祖母様方に聞いてみよう。明治神宮の端っこの方なら、神力をその身に補充しても大事にはならんじゃろ。許可が出れば、そこで補充をすればよい」


「い、いいんですか?」


「まだ許可は出ておらんから、ぬか喜びになるかもしれんがな。あとはできるならば、異なる世界の術式をこちらの世界の理に合わせることも必要かもしれん」


 もってまわった言い方に、私は彼女が何を言いたいのかがわからなかったが、ミーナはピンと来たのかコクリと頷いた。


「先程言われていた、魔法の効果の割には魔力の消費が大きいというお話ですね?」


「そうじゃな、お主の術はこの世界に最適化されていないから、あっという間に神力が無くなってしまうのじゃ。要は効率化が必要、という訳じゃな」


 そんなことが簡単にできるのかな、とふと浮かんだ疑問が表情に出たのか、咲夜さんはニヤリと笑いながら言った。


「もちろん手探りで行う必要があるじゃろうし、長い時間が必要であろう。人生すべてを掛けても達成は不可能かもしれんよ」


「……それでも、備えておいた方がいいですね。自分自身や周囲の人達を守るためには、必要なことですから」


 ミーナは覚悟を決めたように重々しく頷きながら、そう決意表明した。ただ傍から見ていると、幼女が両手をぎゅっと握ってやる気を出してるようにしか見えないから、愛らしい感じしか伝わってこなかった。


「まぁ、相談には乗ろう。結果はどうあれ連絡するから、メッセージアプリの友達登録をせねばな」


 どこかウキウキとした様子でスマホを取り出す咲夜さんは、自分のアカウント情報が書かれているコードをミーナの目の前に差し出した。でもミーナの携帯は子供用携帯なので、メッセージアプリは使えないのだ。


 ここは私が窓口になるべくスマホを取り出そうとすると、なんだかしぶしぶといった雰囲気で咲夜さんがコードを指し示す。私が相手だと文句があるのだろうかと、かなりモヤモヤしてしまった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 敵対勢力はいきなり命を狙ってくるんですが、咲夜もいきなり襲ってきましたし、こっちの世界も結構危ないのかもしれませんね。
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