第五十三話 異世界からの旅人
そして俺達はついに"ミノタウロス"と対峙することとなった。
「報告します! "ミノタウロス"の軍勢を視認いたしました! その数、1000!!」
調査部隊の斥候から報告があがる。
しばらくすると城門正面の森の中から"ミノタウロス"の軍勢が姿を現した。"ミノタウロス"は頭が牛、体が人の頭牛人身の魔物であった。その頭からは大型の角が生え、その体は周囲の木とほぼ同程度の高さであった。
「……聞いていた通り、大きいですね」
一匹だけならまだしも、1000ほどの軍勢だ。遠く離れていてもその圧力がヒシヒシと感じられる。
「うむ。だが、お主の考案した大砲とこの城壁があれば問題あるまい」
ファティマは自信に満ちた表情でそう話す。
そしてついに開戦の火蓋が切られた。
「砲撃準備!」
ファティマの号令により、大砲に火薬と砲弾が詰め込まれる。
しかしその瞬間、"ミノタウロス"の軍勢は何かを察したかのように城門に向かって駆け出した。
軍勢の勢いは大地を揺らし、
「第一群、撃て!!!」
大砲から発せられる轟音により、空気が震える。城壁頂部の大砲10門が砲身から火を放った。
砲弾が放物線を描くように"ミノタウロス"目掛けて飛ぶ。そしてわずか数秒の間で500メートルの距離を飛翔し、"ミノタウロス"の軍勢へと被弾した。
「第二群、撃て!!!」
間髪入れず、城壁中段の10門が火を放つ。
第一群と第二群で交互に砲撃を加えていき、"ミノタウロス"の軍勢の勢いをじわりじわりとそいでいった。
「火矢を構えろ!!」
そしてアルミニウム粉が集積された櫓に向かって火矢を放つ。
「総員、盾を構えて物陰に隠れてください!!」
櫓が不安定に揺れ始めたのを見計らい、警備隊へと発令した。
そして櫓は街側へと倒壊する。
櫓内に貯められたアルミニウム粉は倒壊と共にあたり一帯へと飛散し、"ミノタウロス"の軍勢は銀色の霧に包まれた。
直後、アルミニウム粉から火花があがる。その瞬間、銀色の霧がけたたましい音を立てながら爆散した。
爆風による砂煙が上がる中にうごめく物影が確認できる。おおよそ100体ほどの"ミノタウロス"が生き残っているようだ。
しかし、"ミノタウロス"の勢いは確実に削がれていた。粉塵爆発によって周辺の酸素が大量に消費され、生き残った"ミノタウロス"達は酸欠に近い状態に追いやられていたのであった。
「砲撃を続けてください!」
よろめきながらも城門を目指す"ミノタウロス"に追撃をかける。
この調子なら、被害なくしのぎ切れる……そう思ったその時、ルッカから予想だにしない報告をうけた。
「カズト様、街の北方に"ゴブリン"の軍勢が出現しました。もう間もなく城壁へと到達する模様です」
「──!?」
あまりのことに一瞬場が凍り付いた。
なぜ"ゴブリン"が?




