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第三十一話 アルミニウム採掘②

 オーク達はその手に持ったこん棒を盾兵に向けて振り下ろす。

 瞬間、空気を切り裂く低音と共に、激しい衝撃音が辺り一帯に広がった。


 そのこん棒の一振りは盾兵の踏ん張った足を地面に食い込ませるかのごとく、激しいものであった。

 盾兵はその一撃を見事に耐えきった。

 そして盾兵の間を縫うように槍兵の槍がオーク達を襲う。それはさながら重装歩兵によるファランクスのごとく。


 しかし、オーク達はそれに臆することなく、二撃、三撃と猛攻を続ける。


 初めは垂直に近い状態で立てていたはずの盾も、次第にその角度を80度、70度と押され始める。

 盾自体の重さも相まって、盾兵の体は限界に近付きつつあった。

 だが、オーク達の意識を盾兵に集中させることには成功していた。


 ヤクマはそれを見逃さなかった。

「--剣兵、突撃っ!! 足の腱を狙え!!」


 ヤクマの号令により、槍兵の後ろに控えていた剣兵がオーク達の後方へと回り込む。

「うおぉおおぉ!!」

 剣兵達は激しい咆哮を上げながら、オークの足目掛けて切りかかる。


 肉が裂ける音とともに、オークの悲鳴にも似た叫びが空気を震わせる。

「がああああぁあぁぁああ!!!!」


 剣兵は見事、オークの腱を切断した。

 そして自重を支えることの出来なくなったオークは地面へと倒れ込む。


 地響きのような激しい音が連続して起こる。そして突風にも似た風が辺りを駆け抜けた。


「油断するな! 槍兵、とどめだ!!」

 ヤクマの言葉を受けた槍兵が距離を取りつつ、オークを刺突する。


 その場から動くことの出来ないオークは成す術なく、やられるのみ。

 そしてオークは断末魔のような叫びをあげ、絶命したのであった。


「……すごい」

 俺は思わず口にだした。

 警備隊がここまで戦略的に動けるとは思ってもみなかったのだ。


「これも"異世界からの旅人"の教えだ。彼らはこのような戦術を我々に沢山残してくれた。そのお陰で、今もこうして奴らと戦うことが出来る」

「……でも、それを実践出来るのは、鍛錬を怠らなかったヤクマさん達警備隊の力があってこそです。皆さんの強さ、本当に心強く思います」

「そうか。──お世辞であったとしても感謝する。では作業に取り掛かるとしよう」


 ヤクマはそう言うと、部隊へと指示を出す。

「無事にオークを倒せたからと油断はするな! ここは北の大地の玄関口。何が起こるかは私にもわからない。警戒を厳にし、各々の役割を果たせ!」


 こうして部隊のアルミニウム採掘が開始された。


 部隊は各自、ツルハシを用い、地道に採掘を進めていく。

 金属と石がぶつかるような、少し鈍い音が辺り一面から聞こえてくる。

 アルミニウムは柔らかい金属のため、金属同士がぶつかった時のような高音は発生しなかった。


 ──そうして半日ほど採掘を続けていくと、荷車一台分のアルミニウムを得ることができた。

 アルミニウムが満載になった荷車は順次、ミズイガハラへと戻る手筈となっている。そして、明日の朝には別の荷車が採掘場へ到着する。

 このように、順次入れ替える形でアルミニウムをピストン輸送する計画であった。


 そして俺とヤクマは、一台目の荷車でミズイガハラへと戻ることにした。

 採掘はある程度流れに乗ったため、ここでの俺の役目は終了したのだ。

 あとはミズイガハラに戻り残りの準備を進めていく。


 --------


 復路は満載のアルミニウムの重さにより、アイネルの休憩を多く挟みながらの旅路であった。

 結果、2日半の道のりとなったが、特段問題が起こることなくミズイガハラへと戻ることができた。


 そして俺は休む間もなく、残りの準備を進めることにした。


 まずはファティマの配下達に、硝子の作り方を教えていく。

 クウネルに依頼しておいた硝子の材料の出番である。


 今回の作戦では矢を大量に使用することとなる。現在は黒曜石や石を加工した(ヤジリ)を利用しているが、大量に用意するとなると工業生産したほうが手っ取り早い。

 そのため、大量の硝子を製造し、それを利用して(ヤジリ)にすることとしたのだ。


 例のごとく、ファティマの配下達は覚えが早く、順調に作業が進んでいく。


 完成した板硝子を矢印の先端のような(ヤジリ)の形へと加工し、瀝青でそれを矢に取り付ける。

 (ヤジリ)の先端はかなり鋭利になるように削っておくのが重要なポイントとなる。


 鋭利であればあるほど、奥深くまで肉を穿つことができ、その分与えるダメージも深くなる。

 特にオークのような巨体には奥深くまで穿つことが出来なければあまり効果的とは言えない。

 先のオーク戦のように、矢がほとんど効果を得ない状況では問題だ。そうならないためにも、可能な限り鋭利にするようファティマの配下達にはお願いをした。


 加えて俺は、板硝子から(ヤジリ)に加工した際の硝子片も残らず取って置くようにもお願いした。

 この破片でもおそらくは数十体以上の魔物を倒してくれるほどの武器となり得る。


 数でも質でも負けている俺達が勝利を収めるには、使えるものは何でも使わなくては……。


 ちょうどそんなことを考えていると、俺の元にクウネルが訪ねてきた。

「カズトさん、ファティマさんがぁ、領主の私兵に襲撃されてぇ大変なんですぅ」


「──え!? ファティマさんが??」




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