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第二十四話 念願の我が家

 “ゴブリン”討伐作戦から帰還して3日が経過していた。


 この日俺は自らの家を購入するため、不動産屋に向かい中央通りを歩いていた。

 日に日に荷物も増えていき、宿屋暮らしもさすがに限界を迎えていたからだ。


 いつまでも宿屋のお世話になるわけにはいかないからな......。

 そう考えているうちに俺は不動産屋に到着していた。


 そして中からは聞き覚えのある声がする。

「おはようございますぅ。カズトさん」

 クウネルがいつもの口調で姿を現した。


 不動産屋と言っても、この街にそんな業種が存在している訳ではなく、顔の広いクウネルに空き家を探して貰っていたのだ。


「ご依頼のもの、見つかっておりますよぉ。早速見に行きますかぁ?」

 クウネルはそう言いながら俺を外へと連れ出した。


「少し歩きますがぁ、よろしいですかぁ?」

「もちろんです!」


 俺がそう答えると、クウネルは中央通りを北方面に歩き始めた。


 クウネルによると、物件は街北東部のはずれにあるらしい。

 それに対し、クウネルの店はミズイガハラの街の入り口付近、南のはずれにあるので距離としては大分離れているであろうことがわかった。


 そして物件への移動中はクウネルの独壇場であった。

 最近の商売の話や警備隊の裏話、それに先日の討伐部隊の話などをしきりに話し続ける。

 俺は適当に相づちを打ちながら聞き流していたが、ある話だけは俺の興味を惹いたのだった。


「ファティマさんのぉ、過去の話を聞いたことありますかぁ?」


「いえ、ありませんが」


「そうですかぁ。これを話すとファティマさんに怒られちゃうので内緒ですがぁ」

「──いえ、それはファティマさんから直接聞かせてもらいます。クウネルさん、ごめんなさい」

 クウネルの話を俺は制止した。


 正直、ファティマの過去の話なんて気になってしょうがない。だが、自分の知らない所でそんな話がされているのは誰であっても良い気持ちにはならないだろう。


 そんなことを話していると、目的の物件に到着したようだ。

「さあ、つきましたよぉ」


 クウネルはそう言いながらボロ家を指差す。

 そのボロ家はアレクの倉庫よりも二回りほど大きい平屋で、例に漏れずほったて小屋であった。

 建物の大きさは周りの一般的な住居と比べ小さめではあるものの、単身者には十分な大きさだ。

 そしてこの物件のアピールポイントとしては小さいながらも庭付きであることだ。

 今まで1K7畳の狭小住宅住まいであった俺にとっては遠い夢の話であった。それがまさか異世界にきて叶えることができるとは考えてもみなかった。


「お願いしていた通りですね! さすがクウネルさんです」


「でもぉ、こんなに小さくてボロいのでいいんですかぁ? もっと良い空き家もありますよぉ」


「いえ、これでいいんです。いや、これがいいんです」

 俺は自信を持ってそう答えた。

 建物から庭まで、全て好きなようにいじってやろうという野望が俺にはあった。それ故にボロさは気にならないし、小さい方が何かと都合が良いのだった。


「カズトさんがそう言うのでしたらぁ。ではお代は金貨1枚になりますねぇ」


「はい」

 俺はそう言いながらクウネルに金貨を手渡した。

 支払いは出来たものの、討伐部隊での報奨金はこれで使い果たしたことになる。

 生活費は一夜城の件の分配金で賄うこととなるが、節制すれば当面の間は大丈夫であろう。


「毎度ありがとうございますぅ」

 クウネルは笑顔を見せたが、その笑顔までもがねっとりとしていた。


「ところでカズトさん、あなたは“異世界からの旅人”なんですかぁ?」


 クウネルの唐突な問いに俺は困窮した。

「......」


「カズトさん、それじゃあぁ答えているのと変わらないですよぉ」

 さすがクウネルだ。誤魔化しなど(はな)から無駄だったのだ。


「さすがですね、クウネルさん。でもなぜわかったのですか?」

 俺は降参し、正直に告げた。

 クウネルは普段は飄々(ひょうひょう)としているが、仲間を裏切るようなやつではないと今までの行動をみてわかっていたからだ。


 そしてクウネルが言うには、アレクの馬車の中で俺が「ミズイガハラが初めて」と言っていたのを気にしていたという。

 アレクの牧場の馬車に乗っているのに、ミズイガハラが初めてなのは違和感があると。

 また一夜城と討伐部隊の件での俺の提案や知識を見聞きし、確信したという。


「なるほど......。最初からバレていたんですね」


「まあぁ、仮にも商人ですからぁ。相手のささいな行動で本質を見極めないとやっていけませんのでぇ」


 なるほど。納得した。だからこそクウネルはこの街一の商人なんだと。


「ちなみにぃ、おそらくファティマさんも気付いてますよぉ」

「そうですか......。でも、なんとなくそんな気がしました。クウネルさんが気付いているならファティマさんも気付いたいるだろうな、と」

「さすがですねぇ。でもカズトさんが“異世界からの旅人”だからと言ってもぉ、商品の値引きはしませんよぉ。それとぉ、この事は誰にも話したりしないので安心してくださいねぇ。他の人に取られてしまってはこまりますからぁ」


 さすがクウネルといった発言だ。だからこそ信頼が出来るのではあるが......。


 だがここで俺は思い付く。どうせ知られてしまったのなら協力してもらおうと。

 そして俺はクウネルにあるお願いをした。

「あの、”異世界からの旅人”について、調べていただくことはできますか? 以前、領主の館で資料を漁っても何も成果がなくて......」


「できますよぉ。ですがぁ領主の館になかったのであればぁ、王都で調べないとですねぇ。少々時間がかかりますがよろしいですかぁ?」


 王都......確かにこの国の中心であれば資料が残っているかもしれない。

 俺はそう思いながらクウネルに返事をした。

「はい! よろしくお願いします」


 ──こうして俺が“異世界からの旅人”であるとクウネルに知られることとなった。

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