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第二十三話 凱旋

“ゴブリン”の群れの討伐を果たした俺達は、ミズイガハラの街へと凱旋していた。

 昼過ぎに洞窟を出発したが、ミズイガハラへ到着することにはすでに日も暮れ始めていた。


 討伐部隊の話は領民達に伝えられていなかったのだが、警備隊が大所帯で遠征していくとなると嫌でも目立ってしまったようだ。いつの間にか街中の噂になっていたようだ。


 そして俺達が街に戻るや否や、大勢の領民が警備隊詰所に押し掛けてきた。


「“ゴブリン”はどうだった!?」「無事に帰ってきてよかった」「街のためにありがとう」

 討伐部隊には領民からのたくさんの声が送られていた。


「こんなにも人が......」

「当たり前であろう。本来“ゴブリン”とは畏怖される存在なのだ。その群れを討伐してきたのだからこの歓迎も納得できよう」

 ファティマは得意げな顔でそう言った。


 確かにファティマの言う通りなのであろう。結果的に自分達の命を守ってもらったのだ、感謝の一つも言いたくなるのも当然だ。


 そんなことを考えていると、どこからか俺を呼ぶ声がした。

「カズトくん! カズトくん!」


 聞き覚えのある声だ......この声は......レイミだ!


「レイミさん、わざわざ来ていただけたのですか?」

「当たり前じゃない! それよりも無事だった!? 怪我とかしてない??」

 レイミはしきりに俺の心配をしてくる。


「ええ、大丈夫でした。作戦も上手くいって大規模な戦闘も起きなかったので」


 すると突然ファティマが会話に割って入った。

「私が守っていたからな。怪我などするわけもない」

 そう言うファティマの顔はどこか不満そうであった。


「あなたは......ファティマさん? 守ってくださりありがとうございました」

 そう話すレイミの顔もどこか険しいものになっていた。


「そもそもあなたはカズトくんの何なのですか?」

「お主こそなんなのだ?」


 いつの間にか2人は口論を始める。

 この空気はまずい......なんとかしなくては......と思っていたその時、ヤクマから救いの手が差し伸べられた。


「討伐部隊の皆、ご苦労であった。各自、備品の整備を行なったのち、十分な休養を取るように!」

 ヤクマは討伐部隊に向かってそう発言した後、俺とファティマを呼び出した。

「カズトくん、ファティマくん、ちょっといいか?」


「はい! ──レイミさん、今日はありがとうございました。それじゃあまた」

 俺はレイミに感謝と別れを告げ、ヤクマの後に続いた。


 そして俺達は応接室に案内された。

「二人とも、今回の作戦ではよく貢献してくれた。多少の被害は想定していたが、よもや無被害で帰還できようとは思いもしなかった。それもこれも2人のお陰であると思っている。

 そこで2人には報奨金を支払いたい。少ないかもしれないが、これを」


 ヤクマはそう言うと、俺達に金貨一枚ずつを提示してきた。


「え、こ、これは......何かの冗談ですか?」


「やはり少ないか......あれだけの功績を上げたにも関わらずこれだけしか支払えないこと、本当に申し訳ないと思う」


「え、いや! そういうわけではなくて......こんな大金受け取れるほどのことは成していません......」


「なぜだ? 今回の件は間違いなく君の作戦あってのことであった。功績者は報奨を受け取る義務があるのだよ。そうでなくては報奨の意義がなくなってしまう。報奨とはそういうものなのだ」


「ですが......」


「カズト、もうやめろ。警備隊にも面子というものがあるのだ。それを考えてやれ」

 ファティマは俺をたしなめるように言った。


「......わかりました」


「よろしい。では2人ともこちらを受け取ってくれ」


 俺は渋々ながらも金貨を1枚受け取った。


「それでここからが本題なのだが、2人とももう少し良いかな?」

 そう話すヤクマの顔は先ほどまでとは異なり、真剣そのものであった。


「はい。なんでしょうか?」


「火傷跡の“ゴブリン”の件だが──率直に聞くが、君達はどう思っているか聞かせて欲しい」


 俺は少し言葉を詰まらせながらもこう答えた。

「......俺には魔物のことは詳しくわかりません。ですので考えられる可能性の一つとして捉えていただきたいのですが、あの火傷跡の“ゴブリン”は連絡係か何かであったのではないかと思います。どこか他の場所......例えば北の地にいる本隊と各地の群れとのパイプ役であったのかと」


「ふむ、私も同意見だな」


「やはりそう考えるか......。するとつまり、本隊はまだどこかで残存していると」


「はい」


「あの群れが壊滅した事実を知った本隊が何かしらの行動に出るかもしれんぞ」

 ファティマが核心をついた。


「それが最大の懸念事項だ。だが、本隊がどれぐらいの規模でどこにいるのかもわからない。やはりまずは調査部隊の再結成が最優先か。──2人とも貴重な意見に感謝する。また何かあれば協力をお願いしたい」


 今回の討伐部隊は作戦としては成功したことは確かだ。しかし、“ゴブリン”の脅威を取り去ることは出来なかったのであった。

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