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突然魔法少女? 78

 そしていつもは想像も出来ないような妖艶な笑みを浮かべる要。誠はおどおどと視線を落として、いつものように飲みつぶれるわけには行かないと思って静かに湯のみの中のウィスキーを舐める。

「あのさあ」 

 要が沈黙に負けて声をかける。それでも誠はじっと視線を湯飲みに固定して動かない。

「オメエさあ」 

 再び要が声をかける。誠はそのまま濡れた視線の要に目を向けた。

「まあ、いいや。忘れろ」 

 そう言うと要は自分の空の湯飲みにウィスキーを注ぐ。

「オメエ、女が居たことねえだろ」 

 突然の要の言葉に誠は声の主を見つめた。にっこりと笑い、にじり寄ってくる要。

「そんな……そんなわけ無いじゃないですか!一応、高校大学と野球部のエースを・・・」 

「そうかねえ、アタシが見るところそう言う看板背負っても、結局言い寄ってくる女のサインを見逃して逃げられるようなタイプにしか見えねえけどな」 

 そう言って要は再び湯飲みを傾ける。静かな秋の夕べ。

 誠と要の目が出会う。ためらうように視線をはずそうとする誠を挑発的な視線で誘う要。

「なんならアタシが教えてやろうか?」 

 身を乗り出してきた要に身を乗り出されて誠が思わず体をそらした時、廊下でどたばたと足音が響いた。

「要!」 

 誠がそのまま要に仰向けに押し倒されるのとアイシャがドアを蹴破るのが同時だった。

「何してるの!要ちゃん!」 

「そう言うテメエはなんだってんだ!人の部屋のドアぶち破りやがって!」 

 怒鳴るアイシャと要。誠は120kgの機械の体の要に乗られて動きが取れないでいた。

「大丈夫?誠ちゃん。今この変態サイボーグから救ってあげるわ!」 

 そう言って手を伸ばすアイシャの手を払いのける要。誠は頭の上で繰り広げられる修羅場にただ呆然と横たわっていた。

「まったくあんな漫画描いてるのに……こういうことにはほとほと気の回らない奴だなオメエは」 

「何言ってるの!相手の意図も聞かずに勝手に欲情している要ちゃんが悪いんじゃないの!」 

 誠はもう笑うしかなかった。そして一つの疑問にたどり着いた。

 アイシャがなんでここにいるのか。彼女は吉田と今回の映画の打ち合わせをしているはずである。こだわるべきところには妥協を許さないところのあるアイシャ。彼女が偶然この部屋にやってくるなどと言うことは有り得ない。

 そう思って考えていた誠が戸口を見ると、アイシャと要の罵り合いを見下ろしているカウラの姿が見えた。

「カウラ!オメエはめやがったな!」 

 要も同様に戸口のカウラに気づいて叫んだ。

「勝手に悲劇のヒロイン気取ってる貴様に腹が立ったんでな。別にやきもちとかじゃ……」 

「そうなの?私に連絡が来たときは相当怒ってるみたいだったけどなあ」 

 アイシャの言葉で再びカウラの頬が赤く染まる。そこで一つ良い考えが思いついたと言うように要が手を打つ。

「じゃあ、こう言うのはどうだ?全員で……」 

「西モスレムに籍を移して奥さん四人まで制を導入するって言うんでしょ?あんた酒をやめられるの?」 

 せっかく浮かんだアイデアをアイシャに潰されてへこむ要。あわてて戸口を見る誠の前には真剣にそのことを考えているカウラがいた。

「そうだな、隊長から遼南皇帝の位を譲ってもらう方が簡単かもしれないな。そうすれば正室を決めて……」 

「おい、カウラが冗談言ってるぜ」 

「ええ、珍しいわね」 

 真剣に考えた解決策をあっさりと要とアイシャに潰されてカウラは力が抜けたと言うようにうなだれた。

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