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くれないの影  作者: しのぶもじずり
第六章 月下に舞う
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闘いから離れた庭の奥、金糸銀糸の衣装を身にまとい、月の光を浴びて立つのは、賊が目当てにする 綺羅君。

動く度に光が踊る。


「やあ、たんと現れたな」

のんきにキラキラ光っていた。


後発の面々は、陽映たちを無視して綺羅君を目指し、踊りかかった。

「ぐえっ」

「ぐわあー」

たどり着けずに、先頭が倒れた。


綺羅君を背中に守るように、十人ほどの黒装束が囲っている。

形成は逆転した。


頭目は、打つ手を求めて辺りを探った。

黒装束の守りは堅く、肝心の綺羅君に近づくことはおろか、確実に仲間が倒されていく。

腹を空かせているはずの三人も、衰えを見せない。

部屋の中には、赤黒い横顔を見せて座っている女がいる。

白い塊はうずくまった猫だろうか、役に立ちそうも無い。


そして、柱の陰から恐る恐る覗き見をしている娘がいる。

見つけた!


牛車を襲った時に、まくれ上がった簾から垣間見えた鳥座領主に間違いない。

使える。

人質に取って脅せば、都の流人などより主を選ぶはずだ。


頭目は、黒装束の者たちを鳥座家配下の忍と判断していた。

残念ながら不正解。


九十谷から修験者の姿でやって来た御所忍とは、知る由も無かった。

綺羅君に頼まれ、紫苑が門柱に記した『目』は、彼らへの合図。 

しかし、思い込んでしまったものは仕方が無い。

近くにいた一人に目配せを送り、乱闘をぬって部屋に近寄った。




鹿の子は押さえきれない興味に引かれて、少しだけのつもりで覗きに出たのだが、あまりのすごさに、うっかり動けなくなっていた。

騒ぎに動じることなく座っている白菊も、とんでもないと思った。

どっちが勝っているのか負けているのかも、よく分からない。

やっぱり隠れようと決心して、後ずさり始めた時、明らかに鹿の子をめがけて来る賊と目が合ってしまった。

ものすごくヤバイ。

どんどん近づいてくる。


賊は、縁側に足を掛けざまに飛び掛ってきた。

つかまれたうちぎを置き去りに、中身だけ逃げたが、そんなことで諦めるはずも無く、袿を放り捨てて腕を伸ばしてくる。


と、賊は、もんどりうって吹っ飛んだ。


突然投げ飛ばされて地面に転がった頭目は、あやうく体勢を立て直す。

目にしたのは、忽然と現れた美しい若武者だった。


人間(ひと)とも思えぬほどに妖しく美しい。

頭目は、綺羅君が流される前の鳥座のことは知らない。

無論、少年にも見えるたおやかな若武者が『鳥座の小天狗』と呼ばれた剛勇、紅王丸とは思いもよらぬことだった。


紅王丸は、切れ長の双眸に光を宿し、真一文字にすらりと太刀を抜き放った。


頭目も剣を構える。

紅王丸は賊をめがけて、月を背に高々と飛び上がった。



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