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くれないの影  作者: しのぶもじずり
第五章 再会
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焼け跡に綺羅君を探しに行った者達は、手ぶらで帰った。

流人の屋敷は、柱も倒れ屋根も落ちて、みるも無残な有様だった。

探すまでも無く、全てがきれいに焼け落ちていた。

辺りには、綺羅君の痕跡すら残ってはいなかったという。


結局、鹿の子は、泣き腫らした赤い目で落ち着かないまま、その報せを聞いた。


「我らが行った時にも、まだ煙がくすぶっておりました。

すっかり焼け崩れた隙間から、赤く燃え続ける熾き火が見えるほどで、あの様子では、骨も残っているかどうか。

焼け跡を取り片付けることもままなりませんので、水など掛けて、冷えるのを待っているところでございます」


煙がくすぶって、隙間から赤い熾き火が見えて……、

きっと焦げ臭かったに違いない。


聞きながら、鹿の子の目に思い浮かぶ光景があった。

焼け崩れた舞台と共に居なくなってしまった仲間たち。

親方の藤伍(とうご)、おかみさんの都茱(つぐみ)、三日月のようにきれいな眉をした紫苑(しおん)、軽業の相棒の隼人(はやと)、大きな力持ちガジ、髭面の短剣投げ名人の(とし)、囃子方の太った権佐(ごんざ)、みんな居なくなってしまった。


……でも……なんだろう、声が聞こえる。

鹿の子を呼んでいる。


「焼け出された者の中に、行く当ての無い者が四人居ります。

お屋敷に置いてもらえないかとすがりつかれました。

いかがいたしましょう」

「当てが無いというなら、路頭に迷わせるわけにもいくまい。隅になりと置いてやれ」

物思いにふけっているところを不意に尋ねられて、とっさに答えたが、白菊ならどうしたろうと、よぎった不安を力で切り捨てた。


あたしは鹿の子。

白菊姫じゃない。


いっときおかしくなっていたけど、もう大丈夫。

例の得意技を立て続けに使いすぎたせいだが、たぶんそれだけじゃない。


誰も、鹿の子を鹿の子と認めてくれる人がいなかった。

名前を呼んでくれる人さえいなかった。

だから、鹿の子は鹿の子でいられなくなったのだ。

自分自身の居場所も形も見失っていたのだ。


でも、紅王丸が名前を呼んでくれた。

寿々芽も呼んでくれた。

そうして目を瞑れば、一座のみんなが鹿の子を呼ぶ声が聞こえる。


あたしは一人ぼっちなんかじゃない。

大好きな人たちが、あたしを作ってくれたのだ。

育ててくれたのだ。

そんな大切な自分を、もう()くしたりなんかしない。


あたしは鹿の子。


山道に捨てられて、着物はぼろぼろになっても、ただ一つ残った三尺帯の紅鹿のべにかのこ

これから先も、あたしの名前を呼んでくれる人は、きっとたくさん現れる。


「その者たちの面倒を、手厚く見てやれ」

公然と顔を上げ、はっきりと命じた。



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