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ミクロの世界へようこそ  作者: 平井敦史


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第4回 続々べ、別に『瑠璃の宝石』に以下略

 先日、岐阜県下呂(げろ)市の笹洞《ささほら》鉱山跡に行ってきました。

 ここは、かつて国内でも最大級の蛍石《ほたるいし》鉱山だった所で、現在は国内唯一の蛍石が採取できるミネラルハンティングツアーが実施されています。

 これ、大変に好評なようで、2ヶ月前に予約開始なのですが、開始早々に満員御礼になってしまうくらい大人気なのです。


 実を言うと、件《くだん》のブラックライトを購入したのは、これの予約が取れていたからなんですよね。



 前日は下呂温泉でゆったり。


挿絵(By みてみん)


 と言っても、温泉街からは車で1時間ほどかかる場所に朝8時集合なので、のんびり宿の朝食をいただくわけにはいかず、素泊まりです。

 その地の居酒屋さんとかで夜食を摂るのも楽しいのですが、食事込みの宿代よりも高くついてしまう……。


 まあそれはさておき、菅田《すがた》集学校《しゅうがっこう》という廃校になった小学校、現在では地域の文化拠点として活用されている場所に集合。そこから車で鉱山跡地に向かいます。


挿絵(By みてみん)


 これは鉱山が稼働していた当時使用されていた、鉱石を選別する機械。

 アニメ『瑠璃の宝石』の第3話にもちらっと映っています。

 原作漫画(第6話)にはない描写なので、アニメ制作にあたりロケハンが行われたようですね。

 というか、ガイドさんのお話だと、実際ロケに来られたそうです。


 近世以前の史跡などももちろん良いですが、こういう近代化後の遺産というのも、大いにロマンを感じますね。


 おっと、そもそも「蛍石」とはなんぞや、という話を忘れていました。

「蛍石」とはフッ化カルシウム、化学式「CaF2」の鉱物です。

「フローライト」という名で、ストーンショップ等でも売られています。

 第2話でご紹介したラミ、もとい正八面体結晶ですね。


 この蛍石。鉱山で大規模に採掘していたのは、虫歯予防のために塗布するフッ素の原料として……、ではもちろんなく、製鉄の際に必要とされるものだからです。

 高温で溶かした鉄鉱石の流動性を高め、不純物を除去するために必須なのが、この蛍石。

 かつては大陸の植民地で採掘されていたのですが、戦後それらの植民地を手放すこととなり、日本国内での鉱山開発が推し進められました。


 その一つがこの笹洞鉱山。

 国内最大級の蛍石産地として賑わい、高度成長期の鉄需要を支えるのに貢献しましたが、やがて転機が訪れます。

 それは、1971年のニクソンショック。

 それまで固定制だった円ドル相場が変動制となり、一気に円高が進むと、海外から安価な蛍石が輸入されるようになり、国内鉱山は採算が合わなくなりました。

 で、笹洞鉱山も1971年に閉山。

 ……ということで、鉱脈自体は完全に枯渇したわけではない、というガイドさんのお話だったのですが、Wikiの蛍石の項には、国内の蛍石は「1970年までに全て掘りつくしてしまい、1972年に日本国内の鉱脈は全て枯渇した事が宣言され」たと書いてあるんですよね。

 実際のところはどうなんでしょう。


 鉱山跡のズリ(低品位の廃石)捨て場で、蛍石を拾います。

 ブラックライトで照らしてみると、そこいらじゅうに紫色の光が煌めいています。

 まあ、あまり大きなものはほとんどなくて、小さな粒や母岩《ぼがん》にくっついているものばかりですが、趣味の鉱物採集ならそれで十分です。

 あ、ちなみにブラックライトは、自前で用意しなくてもツアー参加者にはレンタルもありますのでご安心を。


挿絵(By みてみん)


 写真真ん中あたりに青紫色の粒がいくつかあるのがおわかりいただけるでしょうか。

 これがブラックライトで蛍光している蛍石です。


 鉱石採集の時間はたっぷり2時間ほど取ってあり、さすがに最後の方はちょっと飽きてきましたが、家族連れのお子さんたちは最後まで元気でした。

 さすがだ……。


 で、その後は、廃坑道の見学。

 ブラックライトで照らすと蛍石がきらきらと煌めき、とても幻想的……、なのですが、普通のデジカメで撮影するのはなかなか難しかったです。

 これは足元の写真。こぼれ落ちた蛍石鉱石のかけらが踏み砕かれて散乱したものですが、ブレまくり……。

 まあ雰囲気だけでも味わってください。


挿絵(By みてみん)


 その後、集学校に戻り、かつての理科室でちょっとした講義を聴かせてもらいます。

 蛍石が蛍光する仕組みとかね。

 蛍石は、それ自体が光っているわけではなく、中に含まれている不純物が光っているのだそうです。全ての蛍石が必ず蛍光するわけではなく、産地によっては蛍光しないものも産出する、というか、蛍光する方がむしろ稀《まれ》なのだとか。

 また、「蛍石」の名の由来は、蛍光現象から来ているわけではなく、加熱した際の発光現象に由来するのだそうです。

 この実験も見せていただきました。



 そんな次第で満喫して来たミネラルハンティングツアーの戦利品がこれ。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 ほとんどが1cm以下の砂粒か、母岩《ぼがん》にくっついた状態のものです。

 母岩はたいていの場合石英(SiO2)。それも、透明感のある水晶ではなく、乳白色の玉髄《ぎょくずい》、もしくは縞模様の入った瑪瑙《めのう》です。

 色は白色半透明のもの(下の写真右下)が多いですが、緑色の(同一番下)もあります。

 稀に紫色のも見つかるそうですが、私はゲットできませんでした。

 下の写真右上のは、珍しい(のかな?)黒い母岩付きのものです。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)



 さて最後に、今回採集した蛍石のかけらで遊んでみました。

 以前、天橋立《あまのはしだて》近くの道の駅(だったと思う)で買ったプリンのガラス容器。ミルクと抹茶の二層仕立てで、白砂と松の葉の緑をイメージしたとかいうような話だったと記憶していますが、何か使い道あるかなと思い、洗って保管していたものです。

 そして金魚ちゃんは、金魚の養殖で知られる奈良県大和郡山(やまとこおりやま)で買ったガラス細工のお土産。

 光る金魚鉢です。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 金魚ちゃんが底で這いつくばっている感じなのがイマイチですが。

 水中を泳いでいる状態にする工夫が必要ですね。

 そのうち何かいい案がないか考えてみます。



 ……え、今回顕微鏡使ってねえじゃねえか、ミクロの世界何処行った、ですか?

 いやあ、あまり顕微鏡で観察するようなネタが無かったもので。

 小さい結晶の綺麗なのがあれば、顕微鏡観察してみたかったのですが……。


 ちなみに、ストーンショップで売っているような正八面体の綺麗な結晶は、十分に広い空間がないと育たないのだそうです。

 岩の隙間にガスなどが溜まって、晶洞《しょうどう》と呼ばれる空間が出来、その中で結晶が大きく育つわけです。

 ストーンショップや土産物屋などの店頭に置かれている、水晶や紫水晶が母岩の隙間にびっしりくっついているのを、皆様一度ならずご覧になったことがあるのではないかと思いますが、あんなイメージですね。

 で、笹洞《ささほら》はあまり大きな結晶が育つような環境ではないのだとか。

 小さい結晶なら綺麗な形をしたのが見つかることもあるらしいのですが、採ってきた砂をほじくり返してみましたが残念ながら見つかりませんでした。

 残念。


 顕微鏡くんにはまた次回活躍してもらうことにしましょう。


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