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第一章 星見町の夏

海沿いの田舎町、星見町。

夏になると、町の空には淡く光る星――エフェメラが現れる。


主人公・寺尾昇は、ゲームシナリオライターになる夢を諦めかけた青年。仕事にも創作にも疲れ、書きかけの物語だけが、古いノートの中に残されていた。


ある日、昇は廃校の屋上で、不思議な少女と出会う。

少女の名前は、天宮リセ。


明るくて、少し変で、よく笑う。

けれど彼女は、夕暮れになると必ず空を見上げていた。


「わたしね、夏が終わる前に、思い出さなきゃいけないことがあるの」


星見町には古い言い伝えがあった。

夏の終わり、エフェメラの光が空に満ちる夜、忘れてしまった大切な記憶を一度だけ見ることができる。


リセと過ごす夏の中で、昇は少しずつ創作への想いを取り戻していく。


廃校、海辺、夕焼けのバス停、誰もいない放課後の廊下。

止まっていた時間が、彼女の笑顔で動き始める。


だが、リセには秘密があった。


彼女は人間ではなく、かつてこの町で失われた願いから生まれた、夏だけの存在だった。


エフェメラの夜が終われば、彼女は消える。

記憶からも、記録からも、世界からも。


昇は最後の夏に、ひとつの物語を書き始める。

リセが確かにここにいたことを残すために。

そして、自分自身がもう一度、生きるために。


これは、夢を諦めかけた青年と、夏だけの少女が出会った、儚くて、まぶしい、ひと夏の物語。

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