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闇の聖女は愛を囁く  作者: 藍沢ユメ
59/93

59 再会 ③

不定期更新です。

宜しくお願いします。

ドオオオオ······ン


強烈な爆発音と共に地が揺れる。

謁見の間の壁に亀裂が入り、剥がれ落ちた天井が幾つか落ちてきた。

グレイスは咄嗟に防御の魔法をかけ回避する。

魔法を使い扉を開け中に入ると、そこには玉座に座るエリオットと対峙して、ダリウス、ロシェル、ナルージア、ドイナー、モラン、フィールド卿がいた。それから宙に浮いた魔族が1体、そしてそれを見物するかのように数体の魔族が壁際に立ち並んでいた。


見ると、ダリウスの立つ直前の床は何かの衝撃で穴が開いている。

おそらく、宙に浮いている魔族がダリウス目掛けて攻撃の魔法を放ったのだろう。


ロシェルを中心にダリウスの所まで聖属性の防御壁が覆われていた。

それでダリウスは事なきを得たのだろう。


「ああ、グレイス来たのか。」


エリオットがそう言うと、グレイスに一斉に視線が注がれる。


「グレイス!!」


ロシェルが安堵の表情を浮かべ、こちらに走って来ようとする。

それを見た魔族が2体瞬時に、ロシェル達とグレイスの間に入る。


「待て、ロシェル!!」


ドイナーが叫ぶ。

2体の魔族はロシェルに攻撃を仕掛ける。

それに気付いたグレイスが、闇の魔法で後ろから魔族を拘束し、玉座とは逆方向の壁に投げ、叩きつけた。


「ハハハ、さすがグレイスだ。」


エリオットは満足そうに笑うが、見ていた魔族は表情が変わった。

エリオットはグレイスの方へ手を翳すと、グレイスとロシェルの間を分ける様に、防御壁を張った。

それを見たロシェルが自身の展開する聖属性の防御壁をぶつけようとするが、グレイスがそれを止めた。


「強力な魔法同士をぶつけると、魔力爆発を起こすかもしれないわ。」

「くそっ·····。」


ロシェルは悔しそうに顔を歪める。


エリオットはそれを冷たい眼差しで見ていた。


「あまり暴れると聖女は返さないが、それでいいのか?」


エリオットはロシェルから視線を外し、ダリウスに問い掛ける。


「聖女はどうでもいい。グレイスは返してもらう。」


ダリウスの代わりにロシェルが答える。

それを聞き、ダリウスは険しい顔をする。


「へえ、そうか·····お前は分かっているな。」


エリオットはロシェルの答えに満足げな笑みを見せた。


「出入りはしていたが、私は幽閉塔に収監されていた身。全ての情報を得ている訳ではない。その上で問うが、聖女はイカれた性格の持ち主でも、他を犠牲にしてまでも守らねばならない存在なのか?それにお前が得た施しに関して、恩義を感じてそうしているならば、お前の命を救ったグレイスに対しては、何を返したんだ?」


「っっ····それは·····。」


「ダリウス、お前に見せてやりたいものがある。」


エリオットはそう言うと、魔族の1人に指示を出す。

魔族が謁見の間から出て間も無く、1組の男女を連れてきた。


フィーネと魔族の男だった。


フィーネはその魔族の腕に自身の腕を絡め、べったりと寄り添っている。

そうされている魔族の男は、頭に2本の角を生やし、癖のない真っ直ぐな長い金髪の持ち主で、見目も整っていた。


「フィーネ·····。」


あまりの緊張感のない様子に、ダリウスは唖然とする。


「まぁ、ダリウスなの?私を迎えに来てくれたのね。それに他の人達も。あら?あなたはグレイスさんの傍にいた綺麗な人でしょう?結局あなたもわたしの所に来たのね。ふふふ。」


「なっ····。」


どうやら同じ部屋にグレイスがいることには気が付いていない様子で、ロシェルさえも自分を迎えに来たのだと勘違いしているようだ。


「ダリウス、心配させたわ。でも見て、この魔族の男の人はゼフというの。彼が私のお世話をしてくれていたのよ。どうやら私のことが好きみたい。このままお別れなんて出来そうにないの。だから、このゼフも私の夫として迎えて、3人で一緒に暮らしましょう。」


「·····フィーネ、何を言っている。」


「男の人だって愛人や側室を持つでしょう?私も、もう1人夫がいても構わないでしょう?勿論今まで通り、ダリウスも愛するから。」

「フィーネ、今、王国は魔族に苦しめられている。そんな奴等と一緒になれる訳がないだろう?」


ダリウスは諭すようにフィーネに話し掛ける。


「嫉妬しないで、ダリウス。ゼフは私の言うことは聞いてくれるわ。乱暴な事はしない。」


フィーネは何が問題なのかと言う様に、眉をひそめる。


「聖女よ、ダリウスか、その魔族か、どちらか選ばねばならない。」


エリオットが間に入り、何かを楽しむように、フィーネに提案する。


「えー、どちらか選ばなきゃ駄目なんですか?どうしよう。どちらも好きなのに······。」

「では、勝負して勝った方と一緒になるのはどうだ?」


エリオットがそう言うと、フィーネは目を輝かせる。


「もしかして、私をかけて戦うの?素敵!物語みたい。それでもいいわ。是非そうしましょう。」


フィーネはエリオットの提案に、嬉しそうにしながらはしゃいで見せる。


「何を言っている、フィーネ·····。」


ダリウスがフィーネの言葉に戸惑うも、ゼフと呼ばれた魔族の男はフィーネの腕を解き、挑戦的な笑みを浮かべながら前に進み出る。


「だそうだ、ダリウス。フィーネを取り戻したいなら、その結界を出て戦わないとな。」


「アノ女諸トモ、斬ロウカ?」


後ろで見ていたナルージアが、楽しそうに話す。

同じように、そのやり取りを見ていたロシェル達は、特に声をかけることなく、ダリウスの動向を見守った。

そして、ダリウスは悔しそうに歯を食い縛りながら、結界の外に踏み出した。


ダリウスとゼフと呼ばれた魔族は対峙する。


先に手を出したのはダリウスだった。

魔族は愉しそうな笑みを浮かべながら宙に浮き、その攻撃を躱し、上から魔法で火球を放った。

ダリウスも剣を薙ぎ、火球を弾く。

魔族は尚も上からダリウス目掛け、幾つも火球を放っていく。

ダリウスはひたすらそれを剣で弾いていく事しか出来なかった。


「ナルージア、あの魔族は·····。」

「マァ、中級ダナ。ソレデモ、アイツガ倒スノハ大変ダロウネ。」


ロシェルの問いにナルージアが答える。


防戦一方のダリウスだったが、隙を見て短剣を取り出し、自身の雷属性の魔力を乗せ、魔族目掛けて投げつけた。

矢のように飛んでいったそれは、魔族の肩をかすめ、体勢を崩した。

その隙にダリウスは剣を大きく振り下ろし、斬撃波を起こし、魔族目掛けて放った。

雷の魔力を乗せたそれは、魔族の身体にまともに命中すると、大きく身体をえぐった。


「きゃああああ····!」


フィーネは絶叫し、落下した魔族の元へ駆け寄る。


「フィーネ、やめろ!!」


ダリウスが叫ぶが、言うことを聞くことはなかった。


「ゼフー!!」


フィーネは直ぐ様、祈りの体勢をし、魔法を展開する。

それを受けた魔族の身体は仄かに光り、やがて何事もなく身体を起こした。


「フィーネ、何てことを·····。」


ダリウスはその様子を見て、唖然とする。


「良かったあ。」


フィーネは涙目になりながら、魔族に抱き付いた。


「フハハハ····聖女よ、どうやらその魔族には負けて欲しくないようだな。」


エリオットが笑いながらフィーネに話し掛ける。


「だって、死んで欲しくないもの。」


フィーネは涙声で答える。


「その魔族は、まだ目覚めたばかりで、魔力が不足しているようだ。お前の魔法で補ってやればいい。」

「そうね!私の魔法は増やす魔法だったわよね。やってみるわ!」


フィーネは、エリオットの提案に嬉々として実行しようとする。


「やめろ、フィーネ!やめるんだ!」


フィーネはダリウスの叫びを無視して、再び魔族に祈りを捧げる。

グレイスはそれを聞いて、魔法で魔族の体内を透視すると、魔族の魔力が増大しているのが視えた。

ある程度まで魔力が増幅すると、フィーネは魔力不足に陥ったのか、ふらつき、魔族に身体を預けた。

魔族はそんなフィーネを支え、顔を寄せると、フィーネに口付けた。

そうされたフィーネは満足そうに微笑んだ。


「どうやら聖女は魔族贔屓のようだな。さぁ、聖女は魔力不足だ。ダリウス、これからお前が傷ついても、魔法で治してはもらえなさそうだぞ。」


エリオットはダリウスの反応に満足した笑みを浮かべながら問い掛ける。

ダリウスは悔しそうに、剣を握る手に力を込めた。


グレイスは気付いていた。

ダリウスのあの攻撃を、魔族はわざと受けたと。

フィーネがそうすることを予想して、ダリウスに見せつけた。

魔族は次は手を抜かない。

魔力もフィーネの力で増幅させた。

これから向けられる魔族の攻撃を受けたダリウスは、フィーネの魔法を受けられず、死ぬかもしれない。


グレイスだけではなく、フィーネ以外の誰もがそう予想しているだろう。


魔族の影が伸び、ダリウスの足を捕らえる。

足を拘束されたダリウスは、その影を斬ろうと剣を振り、床を破壊した。

揺れる足場に自身も体勢を崩し、上体が浮いた所で、魔族は先程と比べられない程の火球を生成しダリウスに投げつけた。

辛うじて剣で受け止めたダリウスだが、刹那、爆風が周囲を襲う。

エリオットが部屋の内部を包むように防御壁を展開したお陰で、激しい爆風でも建物に影響はなかった。


舞い上がる粉塵が落ち着き、視界がはっきりした所でダリウスを確認する。


ダリウスの直ぐ目の前に魔族の影·····。


ダリウスは膝をついていた。

そして左肩を押さえている。

魔族の剣から滴り落ちる血。

近くに落ちている塊は、ダリウスの左腕だった。


ダリウス·····。


爆風で視界が悪い中、魔族がダリウスに接近し、その腕を切り落としていた。


「ダリウスー!」


魔力不足で床にへたりこんでいたフィーネが叫ぶ。


そんな叫びを嘲笑うかのように、魔族は再び剣を持つ手を上げ、ダリウス目掛けて振り下ろした







数ある作品の中から見つけて、読んで下さり有難うございます。

もし宜しければ、暇潰しに、現在連載中の「貴方のためにできること~ヒロインには負けません~

https://ncode.syosetu.com/n0868hi/

も読んで頂ければと思います。宜しくお願いします

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