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闇の聖女は愛を囁く  作者: 藍沢ユメ
28/93

28 魔族

不定期投稿です。

宜しくお願いします。


感想有難うございます。励みになります。

グレイスがルダリスタン帝国で伯爵を叙爵されて間も無く、サルマは息を引き取った。


「グレイスがその瞳の色を持った事は、グレイスにとって辛い過去の代償である事は知っている。だが、難しい事かもしれないが、これからはその悲しみと共に、喜びも得る事を心より願っているよ。」


そうサルマは言い残しこの世を去った。

赤い目と忌避されている者達の、身も心も支えとなっていたサルマの死は、深い悲しみをもたらした。

しかし、共に赤い目を持つグレイスが領主となった事で、不安視されることはなかった。


グレイスの強大な魔力による魔獣討伐での活躍は、指揮するリーヴァへの称賛と共に、ルダリスタン帝国の貴族へ多大な影響を及ぼした。

間も無く、おそらく魔法で隠していたのだろう。

貴族の中で次々と赤い目を持つ者達が名乗りを上げ、その家族と共にグレイスのいるヴァーバル領への移住を希望する様になった。

勿論孤児院に置き去りにされた平民の者達も。

サルマの統治時は結界のため立ち入る事が出来なかった土地は、監視塔を作ることにより、許可があれば立ち入ることが出来る様になった。

そのうち、グレイスの生家のタンドゥーラ公爵家から、ギルスやゾットをはじめ、グレイスの元で働きたいという者達が集まるようになってきた。

屋敷は別に建てられたが、サルマが元居た屋敷はそのまま残し、通路で繋ぎ、ヴァーバル領の執務を行う領館となった。

正面入口には、大きなサルマの肖像画が掛けられた。

グレイスが伯爵となって2年、ヴァーバル領は領民約100人と村程度の規模ながらもルダリスタン帝国の領地の1つとして認知されるようになっていた。



「魔族の痕跡?」

「ああ、近年隣国で村人の大量虐殺が行われているのを知っているかい?」

「ええ、人の遺体が全く残っていないという話よね。普通魔獣なら、遺体を食べたとしても、形跡が残るもの。それがないとなると、人を拐っているという事かしら?」

「当初闇の魔法が疑われたんだ。グレイスがするように灰にしたのかとね。しかし、その場合、衣服が残るし、灰になった遺体の跡が残るだろう?それもない。となると、食料として拐っているという説が濃厚なんだか、そんな事をするのは魔族しかいない。」

「古文書にはそう書かれているものね。人間を食料として飼うと。」

「ああ、その線が濃厚になっている矢先、ヒトラス領主から討伐の応援要請が来た。」

「ヒトラス伯爵領····北部の山岳地帯の一角にある領地ね。鉱石の採掘で財を成している領主。盗掘を防ぐため、それなりの規模の自衛の騎士団を持っているはず。それでも討伐が難しいとなると、大型の魔獣かそれ以上を相手にしているということかしら?」

「陛下への書簡には『魔族』に襲われたと書かれてあった。」

「『魔族』···。何をもってそう言っているのかしら?」

「角の生えた人型だったそうだ。」

「間違いないの?」

「ああ、それで第3騎士団に討伐命令が下された。陛下曰く、魔族を討伐したなら、私を皇太子に任じるそうだ。」

「リーヴァ·····。」

「皇太子の座を望んでいる訳じゃないが、討伐はしたいと思っている。グレイス·····今回も力を貸して欲しい。」

「勿論よ。あなたの行く先は、私が必ず守る。」



◇◇◇



「リーヴァ様、ここからヒトラス領です!」


王都を出て20日あまり、リーヴァ率いる第3騎士団はヒトラス領にたどり着いた。

途中の街では、ヒトラス領から逃げてきたという商人もいて話を聞いたが、目の前で人が喰われるのを見たという領民が多数いるらしい。

恐ろしくなり、逃げたしたと。

元々鉱石の取引で訪れる商人が多く、そのほとんどがヒトラス領を引き払い、一旦領外に避難したという事だった。


「魔族だとして、1人だと思うか?」

「風貌が一致します。1人だと願いたいですが、複数人だと我々も全滅の恐れがあります。」

「相手が強敵だった場合の為に、事前に引き際を決めておきましょう。」

「今回魔導師が、グレイス様を含め10名。騎士団が100名。騎士団が50名、もしくは魔導師が5名殺られたら引きましょう。」

「嫌な予感しかしないな。」

「騎士団長スルーガ様、副団長ノアエラ様お二人にお渡ししたいものがあります。」

「グレイス様、何でしょう?」

「リーヴァ皇子殿下と私の側近には既に渡しているのですが、私の魔力が入った魔石で出来たペンダントをお二人にもお持ち頂きたいと思います。これで皆様の位置を把握出来ると共に私の魔法を飛ばす事も出来ます。」

「「!!」」

「役に立てるか分かりませんが、お守りと思ってお持ち下さい。」

「グ、グ、グレイス様のペンダント·····実はずっと欲しいと思っておりました。感無量です!」

「団長、泣かないで下さい。恥ずかしいですから。しかし、これを頂けるとは、光栄です。ずっと欲しかったですから。有難うございます。家宝にします。」

「あまり、自慢するなよ。欲しがる貴族が出てくると困るから。」

「「御意!」」


騎士団にあって、グレイスの人気は相当なものだった。



ヒトラス領に入り最初の村にたどり着くと、そこは逃げてきた人で溢れていた。

皆これから、領外に出ると話す。

村長の家にヒトラス伯爵令息が逃げ込んでいるとい聞き、話を聞くために会いに行く。

ヒトラス伯爵令息のニコラスは酷く怯えた顔で、リーヴァ達の姿を見るとすがり付いて来た。


「屋敷で父が喰われました·····。母も、姉もどうなったのか分かりません。」

「魔獣ではなくて魔族なのか?」

「はい、人の形をしていますから。」

「話すのか?」

「はい。ですが、言葉が分からず、何を話しているのか分かりません。」

「古代の言葉か·····。」

「今から屋敷まではどのくらいかかる?」

「半日ほどです。」

「騎士団はこれから、半分の位置まで進み夜営をする。それから斥候を差し向けよう。魔力を探知出来る魔導師をつれて行け。」

「承知しました。」


騎士団は嫌がるニコラスを連れ、ヒトラス伯爵の屋敷に向かう。

途中、騎士団は夜営をし、先に斥候を放つ。

皆、明らかに空気が重くなるのを感じた。

明け方に出発する。

暫くすると、先に放った斥候から伝令が入る。


「魔導師の話ですと、ヒトラス伯爵の屋敷から強力な魔力が1つ感じるそうです。残りの斥候は周辺を確認しています。」

「屋敷内で戦う事になりそうですね。」

「魔導師それぞれに兵を分けた方が良さそうですね。」


リーヴァ達は騎士の配置を練る。

そこでグレイスはある提案をする。


「古文書では、魔族は魔力を回復させる為に魔力を多く持つものを喰べると書かれています。おそらく一番狙われるのは、私とリーヴァ。魔導師は勿論の事、騎士団長のスルーガ様も気を付けられた方がいいでしょう。おそらく私達が知らない魔法を使って来るかもしれません。先ずこちらの魔法をぶつけて反応を見た方がいいでしょう。相手が先に攻撃してくるようなら、私が先に参ります。私の部下と共に騎士団長のスルーガ様は最前線で戦った方が、被害は少なく済むでしょう。副団長のノアエラ様と他の魔導師5人はリーヴァ皇子の護衛を。その他は私達の補佐を。」

「グレイス達が魔族に集中している間、我々は他の敵が現れないか周囲も警戒しなければならない。被害が甚大になる場合は、私が転移の魔法を発動する。」





「リーヴァ皇子、来られましたか。」


リーヴァ達はヒトラス伯爵の屋敷にたどり着き、その壁外で待機していた魔導師のエルドをはじめ、斥候として先に領内に入っていた者達と合流した。


「待たせたな、エルド。屋敷にいるのか?」

「屋敷の中から動いていない様子。相当な魔力です。また北部から大型の魔獣が近づいています。おそらく魔力を探知して引き寄せられたのでしょう。かち合うと厄介ですな。」

「大型魔獣と魔族と思われるものの討伐を分ける。グレイス、魔族を頼む。」

「かしこまりました。エルド様、リーヴァ皇子を宜しくお願いします。」

「グレイス様、承知しました。おそらくあの屋敷にいるものは、グレイス様しか太刀打ち出来ないでしょう。」


グレイス達は広いヒトラス伯爵の屋敷の門から侵入し、屋敷の入口に向かう。


「出てきます。」


探知の魔法でエルドが気配を拾うも、それ以上の何かを感じる。

皆、警戒する。


やがて向こうから、何かえたいの知れないものが近づいて来ているのが分かった。


「凄いな····これは。威圧か?」


身体全体に圧を感じる。

耐えられず膝をつくものまでいる。

そして···


そこに現れたのは少女だった。

地味な見た目に似合わない派手なドレスを着ていた。


「あ、あ、あれです。あれが父上を喰いました。それにあのドレス····姉が着ていたものです。」


ニコラスが震えながら話す。


「下がっておれ。」


使い物にならないニコラスを後方へ下げる。


「茶色の髪に茶色の瞳。どこかの聖女みたいに特徴のない女だな。」


リーヴァが煽る。


「本当に····。倒すのに何だか血がたぎるわ。」


やがて、こちらに近づいて来ていたものが足を止めた。

そしてじっとこちらを見つめる。


そしてその少女は、嬉しそうに微笑んだ。







数ある作品の中から見つけて、読んで下さり有難うございます。

もし宜しければ、暇潰しに、本編完結済の「貴方のためにできること~ヒロインには負けません~

https://ncode.syosetu.com/n0868hi/

も読んで頂ければと思います。宜しくお願いします。

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