2.新たな力
「人生を……、やり直している……?」
両手を目の前に出すと、明らかに小さい。目線も低い。そして、私は死んだはず。なぜ生きているのか。
そんな私に発することができた精一杯の言葉だった。
とりあえずと思い、寝室へ行ってみる。体が小さくなったのか、階段の一段登るのでさえ体力が必要だ。
なんとか登りきり、扉を開ける。扉を開けるのも一苦労だ。開けて向かったのは、いつも朝起きると見ていた大きな姿見。そこに映る、自身の姿を見たらわかるはず。
「嘘でしょ……」
姿見に映ったのは、幼女。ただ、赤の他人というわけではない。私の髪色、瞳、それは全く一緒だった。私の5歳の姿。
今度は図書室へ向かう。もし今が、私が5歳の年だとしたら、時間が巻き戻ったことになる。確か、図書室の中にそのことについて書かれていた本があったはずだ。
図書室に入って奥の最も埃をかぶっている本棚へといく。前回の人生を1回目とするならば、その時は私が何度も図書室を使っていて、埃はほとんどなくなっていた。
脚立を本棚の隣まで持っていき、それを登る。記憶が正しければ、一番上の一番端にあったはず。
「あった………」
埃を払い、本を開く。この本は『喪失魔術』についての本だ。喪失魔術とは、古代にあった、使える者がいない魔術のこと。反対に、古代魔術でも使える者がいる場合は『残現魔術』という。
喪失魔術は誰も使えない魔術のはず。その理由も様々で、古代の人々の術式が理解できない、古代の人々でさえも使うことができなかった謎の魔術。人生のやり直しは、古代の人々でも使うことができなかった魔術のはずだ。
「103ページ……」
1ページずつ開くごとに埃が舞う。咳払いをしながらやり直しの魔術について書かれたページを開いた。
「やり直しの魔術……、古代の人々でも使えなかった……。やり直しの年齢は不規則……、前例が極めて少ない………。
新たに力が手に入れられる……」
最後の一文が目に止まった。「新たな力」、それは私にもあるのだろうか。今のところ、そんな実感は全くなかった。
けれど、体内の魔力の流れを見てみると、確かに不思議な何かがあった。これが新たな力なのだろうか?
無意識に頭に浮かんできた言葉を唱える。
「《召喚》」
私がそう言った瞬間、部屋、いや塔全体が光った。眩しくて閉じていた目を開けると、目の前には綺麗にお辞儀をした青年がいる。
「え………」
「初めまして。
我が主」
執事服を着ている青年は私を見上げながらそういった。




