第四報 谷底回収物および記録保管状況報告
件名 谷底回収物および記録保管状況報告
提出予定先 王立学術院 辺境度量衡監査部門
宛先 辺境度量衡監査部門 上席監査官殿
整理者 王立学術院所属 辺境度量衡監査官補 アリア
記録種別 帰還後提出予定報告書控
作成時点 城壁外遭難後、保護地にて手元記録を再整理
対象事案 隊商崩壊後に谷底および周辺斜面より回収された物品、ならびに整理者の記録保管状況
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一 要旨
本控は、城壁外交易路における隊商崩壊後、谷底およびその周辺斜面より回収された物品について、現時点で確認できる範囲を整理するものである。
第一報では、未分類オーク群による保護後初期観測を記した。
第二報では、荷帳余白および短音反応を整理した。
第三報では、第十六個体周辺群、野生オーク群、ゴブリン腐敗巣の比較を行った。
本報では、それらに続き、崩壊した隊商の荷、記録片、通行符、荷札、封紐、破損した器具等が、どのように回収され、どのように保管されているかを整理する。
結論を先に記す。
谷底および斜面には、隊商由来と思われる物品が散乱している。
その一部はゴブリン腐敗の影響を受け、王国側へそのまま持ち帰るには危険である。
一方で、大個体はそれらをすべて食物または燃料として扱っているわけではない。
紐、布、金属片、袋、札、木板、羊皮紙片等を、用途ごとに分けて残す行動が見られる。
これは、従来の野生オーク群に見られる単純な奪取または破壊とは異なる。
ただし、当該物品の保管は、王国の証拠保全手順としては不完全である。
水、火、灰、乾き、腐敗物との距離を用いた現地保全であり、完全な目録化、封印、証人確認、日時記録には至っていない。
したがって、本報では、回収物を以下の三区分で扱う。
一、王国へ提出可能性のある物。
二、汚染または破損により提出不適と見られる物。
三、提出可否未定のため保留すべき物。
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二 回収地点の概要
回収地点は、城壁外交易路から外れた谷底およびその周辺斜面である。
谷底と記すが、王国地図上の正式地名ではない。
整理者は、当該地の測量を完了していない。
よって、本控では便宜上「谷底」と記す。
当該地点の特徴は以下である。
一、隊商路から外れた低地である。
二、雨水または斜面からの流れが集まりやすい。
三、荷車の破片、布片、革袋、折れた木材が散乱している。
四、斜面に引きずられた痕、転げ落ちた痕がある。
五、ゴブリン由来と思われる噛み跡、泥、腐敗臭が一部に残る。
六、獣またはオークによる二次移動の痕跡がある。
七、完全な現場保存は不可能である。
隊商崩壊時、荷が谷底へ落ちたのか、襲撃後に引きずり込まれたのか、後から雨水で移動したのかは不明である。
また、谷底にある物品すべてが、整理者の同行隊商由来とは限らない。
過去の通行者、別隊商、狩人、野盗、野生オーク、ゴブリン等に由来する物が混じっている可能性がある。
このため、物品ごとに由来を断定せず、推定として扱う。
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三 回収に関与した個体
谷底周辺の物品回収には、大個体および周辺の小柄な個体、若い雄、雌個体が関与している。
ただし、回収目的は統一されていない。
各個体の行動は以下のように分かれる。
一、大個体は、物品を拾い、臭いを確かめ、汚染の強いものを離す。
二、小柄な個体は、布、紐、木片、小袋等を運ぶ。
三、若い雄は、金属片や食物らしきものへ先に手を出す傾向がある。
四、火場の雌は、濡れた布や枝を火場近くへ運ぶ。
五、傷者周辺へ用いる布は、大個体が別に置くことがある。
重要なのは、大個体が一部物品を制止し、置き場を変えさせる点である。
若い雄が腐敗臭の強い革袋を寝床側へ持ち込もうとした際、大個体は短く制した。
また、濡れた布を火へ近づけすぎた個体を止め、距離を取らせた。
これにより、物品は次第に以下のように分けられつつある。
一、火に近づける物。
二、水で洗う物。
三、灰でこする物。
四、傷者へ近づけてよい物。
五、寝床へ置く物。
六、遠ざける物。
七、整理者の記録周辺へ置く物。
この分け方は王国の証拠保全手順ではない。
しかし、現地における汚染回避および用途別保管の芽として記録すべきである。
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四 確認された回収物の区分
現時点で確認された回収物は以下のとおりである。
一、破れた布袋。
二、革袋の破片。
三、荷札片。
四、封紐。
五、金属札。
六、木板片。
七、折れた棒または荷車部材。
八、欠けた秤皿らしき金属片。
九、通行符またはその一部と思われる羊皮紙片。
十、商会印の残る紐または封泥片。
十一、読めない文字または刻みのある小片。
十二、腐敗臭を帯びた布片。
十三、血または泥で黒ずんだ紙片。
十四、用途不明の金属環。
十五、乾いた食料片またはその包装材。
上記のうち、王国へ提出できる可能性があるものは、荷札片、封紐、金属札、木板片、通行符片、封泥片である。
ただし、汚染が強いものは提出に適さない。
特に、泥水、血、膿、腐敗臭を帯びたものは、触れる者に害を及ぼす恐れがある。
また、整理者が手で触れたもの、大個体または他個体が口や鼻で確かめたもの、火や灰に触れたものは、王国側の証拠としての純度が下がる。
この点は提出時に必ず注記する必要がある。
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五 荷札および封紐
荷札および封紐は、整理者の本来任務である度量衡監査と最も関係が深い。
確認された荷札片には、完全な商会名は残っていない。
ただし、以下の情報が残る可能性がある。
一、荷の種類を示す短い印。
二、重量または数量を示す刻み。
三、通行時に付された封紐。
四、商会または関所由来の封泥。
五、別文化圏由来の記号。
六、鉱山印または工房印と思われる刻み。
現在の保管状態では、荷札片を完全に解読することはできない。
理由は以下である。
一、泥が付着している。
二、水で波打っている。
三、焼け焦げた端がある。
四、文字または刻みの一部が失われている。
五、複数の荷由来の札が混在している。
六、整理者の手元に照合すべき元帳がない。
したがって、荷札片は証拠としてではなく、照合候補として保管する。
王国へ帰還できた場合、商会台帳、関所控え、通行税記録、荷車番号、封泥印と照合する必要がある。
なお、大個体および群れの個体は、荷札の文字情報を理解している様子はない。
ただし、荷札を食物として扱わず、袋または紐に付いた物として残す行動が見られる。
この点は、物の用途を完全に破壊していないことを示す。
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六 通行符および公務記録片
通行符またはその一部と思われる羊皮紙片を確認した。
しかし、完全な形ではない。
通行者名、商会名、関所印、日付、税率、荷量の全てを読むことはできない。
整理者の公務調査帳に由来する可能性のある紙片もある。
ただし、以下の理由により、現時点では断定しない。
一、紙片が小さい。
二、筆跡が泥で潰れている。
三、整理者自身の筆跡に似るが、確認できる文字が少ない。
四、別の書記または商人の手による可能性がある。
五、隊商崩壊時に複数の帳が混在した可能性がある。
この点は重要である。
王国側が谷底または腐敗巣周辺で整理者の公務記録片を発見した場合、整理者が死亡した、またはゴブリンに失われたと判断する可能性がある。
しかし、記録片の所在と整理者の生死は同一ではない。
記録は落ちる。
荷は裂ける。
帳は散る。
通行符は流れる。
それでも、記録者が生きている場合がある。
本控は、帰還後にこの誤認を正すためにも必要である。
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七 金属片および器具片
谷底からは、金属片、金属環、欠けた秤皿に似たもの、留め具、釘、環状部材が回収されている。
これらは、隊商の荷車、計量器、箱留め、武具、調理器具、または異文化圏由来の荷具の一部である可能性がある。
現時点で用途が推定できるものは以下である。
一、袋口を縛る金属環。
二、荷車の固定具。
三、秤皿または小皿の欠片。
四、封具の一部。
五、道具を吊るす輪。
六、装飾ではなく実用部材と思われる金具。
大個体はこれらを飾りとして過度に扱わない。
紐を通す。
吊るす。
布を留める。
袋口を閉じる。
そうした用途で扱う様子がある。
この点は、物品の機能を見ている可能性を示す。
ただし、王国工房のような分類、修理、再鋳造の手順は確認できない。
金属片の一部は、腐敗物に触れていたため、傷者や寝床へ近づけるべきではない。
大個体は臭いを確かめ、遠ざけることがある。
その判断が、汚染への反応なのか、単なる獣的忌避なのかは不明である。
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八 布および革袋の扱い
布と革袋は、最も多く確認される回収物である。
それらは以下のように分かれる。
一、乾いた布。
二、湿った布。
三、血や泥がついた布。
四、腐敗臭を帯びた布。
五、傷者へ使える可能性のある布。
六、荷を包む布。
七、火場で乾かす布。
八、水で洗った後に保留する布。
第十六個体周辺群では、これらが完全に管理されているわけではない。
しかし、大個体は汚れた布を傷者や整理者の近くへ置かないよう制する。
火場の雌は、湿った布を火の近くへ持っていくことがある。
若い個体はしばしば誤る。
濡れた布を清い布に重ねる。
腐敗臭のある布を寝床側へ持ってくる。
その都度、大個体が制し、置き場を変える。
したがって、布の扱いは、まだ制度ではない。
しかし、明らかに分離の対象である。
王国へ提出する場合、布片そのものよりも、布をどのように分けているかを報告する価値がある。
布は、当該群れにおいて、汚れを受けるもの、清めるもの、乾かすもの、傷者を守るものへ変わりつつある。
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九 腐敗を帯びた回収物
腐敗を帯びた回収物は、提出に慎重を要する。
谷底には、血、泥、腐肉臭、膿、黒ずんだ水を含む物品がある。
これらは、証拠として重要である一方、持ち運び自体が危険である。
危険は以下である。
一、触れた傷口から腐敗を招く恐れ。
二、乾く前に他の布へ汚れを移す恐れ。
三、水場へ近づけることで水を汚す恐れ。
四、火へ近づけた際に煙や臭気を生じる恐れ。
五、虫を呼ぶ恐れ。
六、寝床周辺を汚す恐れ。
大個体は腐敗臭の強い物を遠ざける。
ただし、完全に捨てるとは限らない。
石の向こう、火から離した場所、水場から離した場所へ置くことがある。
これは、捨てる判断と保管する判断の間にある。
整理者としては、腐敗物に直接触れて確認することは避けるべきである。
記録方法は以下が望ましい。
一、遠目で形を記す。
二、臭気の強弱を記す。
三、水場、火場、寝床からの距離を記す。
四、大個体が近づけたか遠ざけたかを記す。
五、提出可否を保留する。
六、封緘できないものは、位置のみ記録する。
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十 整理者の記録保管状況
整理者の記録は、現在、複数の形で保管されている。
一、公務調査帳。
二、荷帳。
三、荷帳余白。
四、補助羊皮紙。
五、封緘予定の秘匿羊皮紙。
六、帰還後提出予定報告書控。
七、未整理の紙片。
八、蝋板または木片に置いた一時記録。
これらは、本来であれば一つの管理箱へ納め、日付順、件名順、提出可否順に分けるべきである。
しかし、現地ではそれができない。
理由は以下である。
一、湿気がある。
二、火の粉の危険がある。
三、若い個体が触れる恐れがある。
四、汚れた布や水と混じる恐れがある。
五、整理者自身が常に記録台へ戻れるわけではない。
六、大個体が守っているが、王国式の保管ではない。
七、秘匿すべき記録と提出可能記録の距離を取る必要がある。
現在の保管手順は以下である。
一、濡れた紙は火から遠い位置で乾かす。
二、火に近づけすぎない。
三、汚れた布と記録を重ねない。
四、封緘予定の紙は伏せる。
五、公務調査帳と秘匿別紙を分ける。
六、報告書控は別紙として作成する。
七、重要な紙は大個体の踏み込みにくい場所へ置く。
八、小柄な個体が触れないよう、高い石または木箱状の荷へ載せる。
これは不十分である。
しかし、現時点で可能な最善に近い。
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十一 記録の汚損危険
記録には汚損の危険がある。
確認されている危険は以下である。
一、水濡れ。
二、火の粉。
三、灰。
四、泥。
五、腐敗臭の移り。
六、若い個体による接触。
七、小柄な個体による移動。
八、風による散逸。
九、整理者自身の震えによる筆跡の乱れ。
十、秘匿すべき記述と公務記録の混在。
特に危険なのは、最後の項目である。
王国へ提出可能な観測事項と、提出すべきでない私的事項が混ざれば、記録全体が危うくなる。
そのため、整理者は記録を以下のように分けている。
一、王国へ出せる。
二、王国へ出すべからず。
三、今は断じず、後に決める。
四、封緘して上席監査官の判断を仰ぐ。
五、現地管理にのみ用いる。
この分類は、今後さらに整備する必要がある。
第一報から第三報までの報告書控は、この分類を支えるための骨組みである。
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十二 大個体による記録保護
大個体は、整理者の記録を完全に理解しているとは考えにくい。
文字を読んでいる様子はない。
少なくとも王国語の文章を読解しているとは判断できない。
しかし、帳や羊皮紙が整理者にとって重要であることは認識している可能性がある。
その根拠は以下である。
一、記録台周辺へ若い個体が近づくと制する。
二、汚れた布を記録へ重ねないようにする。
三、濡れたものを帳の近くへ置こうとした個体を止める。
四、整理者が帳へ向かうと、距離を置くことがある。
五、筆または記録動作を邪魔しない場面がある。
六、帳を指し、整理者に記録を促すような身振りを見せることがある。
これらは、文字理解ではない。
しかし、記録行為そのものを整理者の務めとして認識しつつある可能性を示す。
大個体が記録を守る理由は不明である。
整理者を落ち着かせるためか。
群れの動きを整理者が記すことを、何らかの作業として認めているのか。
あるいは、単に整理者が大切にする物を遠ざけられたくないと見ているのか。
断定はできない。
ただし、記録保護の身振りは観測事項として残す。
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十三 回収物と記録の関係
谷底回収物は、それ自体が証拠であるだけではない。
整理者の記録と照合されることで意味を持つ。
例えば、荷札片は、通行税記録と照合されなければ単なる木片または革片である。
封紐は、関所控えと照合されなければ、ただの紐である。
金属札は、商会印または鉱山印と照合されなければ、由来を特定できない。
通行符片は、発行日、印、名、荷量と合わせなければ証拠にならない。
したがって、回収物を保管するだけでは足りない。
必要なのは、以下の照合である。
一、物品の形。
二、発見場所。
三、汚染の有無。
四、大個体または群れがどう扱ったか。
五、整理者の手元記録と一致するか。
六、王国側台帳と一致するか。
七、提出可能か、保留すべきか。
八、持ち帰るべきか、位置だけ記録すべきか。
現地では王国側台帳との照合ができない。
よって、本控は、後日の照合作業に備えるための仮目録として機能する。
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十四 王国側で予想される誤読
本報もまた、王国側で誤読される恐れがある。
予想される誤読は以下である。
一、谷底回収物をもって整理者死亡の証拠とすること。
二、汚染物を不用意に持ち帰り、二次被害を出すこと。
三、大個体が記録や荷を理解していると過大評価すること。
四、逆に、すべてを偶然の散乱として捨てること。
五、回収物を軍務利用または捕獲対象調査の根拠とすること。
六、秘匿すべき紙と公務記録を混同すること。
七、整理者の私的記録を証言能力否定の材料にすること。
これらを避けるため、公的提出時には、以下を明記する必要がある。
一、回収物の存在は整理者死亡の証明ではない。
二、汚染物は証拠である前に危険物である。
三、大個体の行動は文字理解ではなく、記録物を保護対象として扱う身振りに留まる。
四、提出可能記録、提出保留記録、秘匿記録を分ける。
五、谷底回収物は、後日照合のための仮目録として扱う。
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十五 提出保留事項
本報に関し、以下は提出保留とする。
一、秘匿別紙の所在および封緘方法の細目。
二、整理者自身の身体に関わる記録の保管状況。
三、大個体との私的距離により生じた記録の有無。
四、王国へ出すべからずと記した羊皮紙の内容。
五、谷底回収物のうち、整理者の名誉を損なう恐れのある物品。
六、隊商構成員の死亡状況に関する未確認推測。
七、腐敗物に混じる身体片等の詳細。
八、群れの正確な所在を特定し得る地形情報。
九、大個体が記録を保護する理由に関する感情的推測。
十、記録保管に関する整理者自身の不安、恐怖、安堵の細目。
これらは、公的報告本文に直載せず、必要に応じて封緘羊皮紙または口頭補足へ移す。
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十六 総合所見
谷底回収物は、隊商崩壊、ゴブリン腐敗、第十六個体周辺群の行動、整理者の記録継続をつなぐ重要な証拠群である。
しかし、そのまま提出できる証拠ではない。
汚染、破損、混在、由来不明、二次移動、大個体および周辺個体による再配置がある。
したがって、王国側へ提出する場合は、回収物そのものよりも、以下の点を重視すべきである。
一、谷底に隊商由来と思われる物品が散乱していること。
二、ゴブリン腐敗の影響を受けた物品があること。
三、回収物の一部は、王国側で整理者死亡の証拠と誤認され得ること。
四、第十六個体周辺群は、回収物をすべて破壊せず、用途別に残すことがあること。
五、大個体は腐敗臭の強い物を遠ざけることがあること。
六、整理者の記録は、公務調査帳、荷帳、余白、秘匿羊皮紙、報告書控に分けられつつあること。
七、記録保管は不完全ながら、汚れ、水、火、腐敗物から遠ざける手順が生じていること。
八、大個体が整理者の記録行為を妨げず、むしろ保護するような身振りを見せること。
現時点での結論は以下である。
――谷底回収物は、証拠であると同時に汚染物である。
――記録片の散逸は、整理者死亡の証明ではない。
――第十六個体周辺群は、物品を用途ごとに分け始めている。
――整理者の記録は、公的提出、提出保留、秘匿、現地管理へ分離する必要がある。
――帰還後提出予定報告書控は、その分離を行うための中間記録である。
今後確認すべき事項は以下である。
一、谷底回収物のうち、持ち帰り可能な物を選別できるか。
二、汚染物と非汚染物の置き場をさらに分けられるか。
三、荷札、封紐、金属札を個別に保管できるか。
四、公務調査帳と秘匿別紙の保管距離を保てるか。
五、大個体不在時にも記録台が守られるか。
六、小柄な個体や若い雄が記録物へ触れない作法を覚えるか。
七、帰還時に王国側へどの物品を提出し、どの物品を現地焼却または位置記録に留めるべきか。
以上、帰還後の報告に備え、第四報として整理する。




