聖夜⭐︎クリスマスくるしみますだよ! 後編
「YAAAAA!! アッシはぁ! ハオちゃんッ! プロレスラーだよォォ!! みなさんッ元気ですかぁ!!」
元気があれば、なんでもできる!! さあ、ハオちゃん。ノロイをやっつけましょう!
「こちら実況席。聖なる夜に相応しい試合が始まりました! 僕はハンムラビ。この熱き戦いを実況します! 解説にはモノローグさんにお越しいただいています。 よろしくお願いします」
お願いします。
『なんでプロレスのリングが出現してんだよ?! クリスマス要素どこいった!』
ノロイは混乱しているようですね。クリスマスといえば告白。告白といえば指輪。 つまり、リングってことですねぇ!!
「そのリングではありません。 さあ、ゴングが鳴り試合開始です」
「喰らえだよ!魔砲、延髄斬り!」
「おっと、初手から大技です。しかし!」
ノロイはケーキを盾にしていますね。自腹で購入していたとは、なんて卑怯な手を使うのでしょう!
『あ、あっぶねぇ。ケーキ買っといて助かったぜ。魔砲少女、このケーキがある限り、攻撃は出来まい』
「これにはハオレスラーも表情を歪めています! いったい、どうすれば攻撃が出来るのか?!」
おや、ハオちゃんに動きがありますよ! どうやら彼女は衣装替えをしているみたいですね?
「ケーキのノロイ。クリスマスケーキを楽しみにしている子ども達の夢を奪わせないんだよ!」
「おおっと?! ハオレスラーは観客席に向かって人差し指を天にかざしていますね?」
これは…… まさか!
「いっくぞぉ!! ご唱和くださいだよ。 いち!にぃ! サン……タァ!!」
「これは素晴らしい! ハオレスラーはサンタ衣装へチェンジしましたね!! 観客席も大盛り上がりです!」
プレゼントにも期待ですね!
『て、テメェ? どういうつもりだ?!』
ノロイは体勢を崩しましたね。今がチャンスです。
「ケーキのノロイ。これでとどめだよ。 魔砲!悪い子にはプレゼントは無しだよぉ!」
『そんなのは嫌だぁ! ごめんなさい。いい子にしますぅ』
「鮮やかに決まりました! これでケーキのノロイは浄化されました。モノローグさん、素晴らしい試合でしたね」
こんなにも美しい試合は見たことがありません。
今日はありがとうございました。
「ありがとうございました。 この後は、メオチューバーvsクリぼっちの番組をお届けします。チャンネルはそのままで!」
と、いうわけでケーキのノロイは撃破されました。
一方、メオちゃんサイドでは……。
なんて事? メオちゃんが苦しんでいます!!
これは!クリぼっちのノロイによる、心無いコメント攻撃!!
『どうせ彼氏いるんだろう?』
『クリスマスイヴに配信なんてあざといよなぁ』
『ぐふふ。メオちゃん、室内を全部映してよぉ?』
メオちゃんになんて事を! 許せません!!
「なんて怨嗟を含んだ言葉なんですわ。メンタルが削られますわ!」
しかし、メオちゃんは健気にも笑顔を絶やさずノロイに語りかけました。
「ノロイさん。そんなに世界を憎んではいけませんわ。 あなたにもきっと現れる。運命の人が」
ああ!! メオちゃんの頭の上に光の輪が浮かんでいます!
その姿ッ、まさに天使! いや、女神様!!
「天使の輪じゃないのよね。ウチのリングライトなのよね」
なんという合体魔砲!! その神々しさと眩さにノロイは涙を流しています。
「とどめですわ。あなたに訪れる運命の人は……警察ですわ! 魔砲!シーペインですわ!」
『誹謗中傷はいけないよぉぉ!!』
こうしてノロイ達を浄化した魔砲少女たち!
黒レ騎士は空気と化しながらもクリスマスケーキを死守したのです!
「3カウントで、呪・詛・封・印!!(字余り)」
「メリークリスマス! 邪・心・消・滅!!」
「ウチの台詞がほとんどないのよねぇ!!」
「……モノローグの声は、やっぱり僕にしか聞こえていないんだな……」
今日も魔砲少女たちは世界を救い………?
【 自 壊 ノ 刻 】
『見つけたぞ。 我が愚かな独白よ。 さあ、我の元に還るがよい。 そして、この世界を終わらせよう』
あ、あなたはノロワ=レイル!?
これは…… 何?!
記憶が、流れ…混んで…くる。
真相は、こういう事だったのね。
なんて事なの。
── 疑いもしなかった。
私は私であると。
この世界を俯瞰し、ハオちゃんたちと楽しく過ごす。
それが私の日常であり、現実だった。
私の名前…… モノローグ。
── それは独白という意味。
本来なら、物語の語り部は
ストーリーテラーやナレーターという。
私はモノローグ。
かつて、存在したレイルという少女の……
ノロワ=レイルとなる前に残した
楽しい世界を夢見た独白。
── だから。私はハオちゃんたちと、笑いに満ちた楽しい世界を作りたかった。
この想いに偽りはなかった。
『我が独白よ。 まさか、自分の蒔いた種がここまで育つとは思ってもみなかった』
ノロワ=レイル! たとえ、それが真実でも、この世界に指一本触れさせないわ!
『何をいう。お前は我の一部。我の能天気で世間知らずな馬鹿げた理想』
……違うわ。私は……私はもう、ただの『理想』じゃない。ハオちゃんたちと一緒に笑って、この世界の『今』を愛する心なのよ!
『フン。その「今」とやらも、我という現実の前では一瞬の夢に過ぎない。さあ、戻れ』
ノロワ=レイルが冷たい手を伸ばす。その指先が私という思念の境界線に触れた瞬間、私の中に『漆黒の絶望』が流れ込んできた。
── 痛い。暗い。寒い!
……っ! レイル……あなたは、こんなに真っ暗な中で、ずっと独りで『自壊』を待っていたの……?
『……黙れ。余計な感情を描くな。お前がハオなどという埴輪と遊んでいた間、我は……!』
ハオちゃんは、ただの埴輪じゃない!! この世のヨクボウやゴウヨク。ノロイでさえも、誰一人として傷つけず楽しい世界を描いてきたの!
見てよ、レイル! 私が……あなたが願った『愛情』が、こんなにカラフルな世界を作ったのよ! 理想を否定しないで! 虐殺の未来を肯定するための呪いなんて、悲しすぎるでしょう!
『……やめろ。その眩しい光を消せ! もう良い、貴様はまもなく我に統合され、そのふざけた意識は消える。このふざけた世界と共に』
……ハオちゃん、メオちゃん。聞こえる……?
これから、あなたたちを導くことが出来ない。
どうか、どうか!
あなたたちの描く未来に…… 祝福を……奇跡を。
…… …。
『……ふん、やっと消えたか。さあ、魔砲少女。物語を導く語り部を失い、貴様らの勝機は潰えた』
ノロワ=レイルはフードを深く被り直すと空を見上げる。
『ふふ、これが最後の足掻きか。 よかろう、この涙が乾いたその時、この世界の終焉は始まるのだ』
その頬を、一筋の温かい雫が伝っていた。




