5.お風呂にはいって寝ましょう
「花ー。フロ沸いたけど入るかー?」
「はい、入ります」
「おう、ゆっくり入ってこいー」
「……じー」
なぜか、俺のほうを見つめたまま動かない花。
「ん? 何か足りないモノあったか?」
「優夜」
……なんか、嫌な予感がするぞ?
「なんだ?」
「優夜もいっしょに入りましょう」
やっぱりきた!?
いきなり、何のたまいやがりますか、この幼女は!?
「なっ!? 何言ってやがる。もう十分、一人で入れる年だろ!?」
「花は一人で入るお風呂はきらいです。だから、優夜もいっしょに入りましょう」
出会ってまだ1日も経ってないが、ひとつだけ分かったことがある。
それは、コイツが意外と頑固だってことだ。
「――しゃあねぇなぁ」
まぁ、父親が娘をフロに入れるようなもんだし、大丈夫だろ。
そう思って、俺は花と脱衣所に向かった。
「なぁ、花」
「なんですか?」
「お前って……よく食べる割には細すぎねぇか?」
「〜〜〜! 花も気にしてるんです。あまり言わないでください」
花は顔を赤くしながら、少し怒ったような口調で言ってきた。
花にしては珍しく感情を出してるな。
「はいはい」
「むぅー!」
「髪洗ってやるから、そんなにむくれんなよ」
「……ていねいにお願いしますね?」
「おう、任せとけ」
軽く体を洗って、花を抱えて湯船に入る。
「はぁー、あったかくて気持ちいいです」
「だな」
フロの気持ち良さは、何物にも例えがたいものだと俺は思う。
十分温まってから洗い場に花を座らせる。
「それじゃ優夜、花のかみを洗ってください」
「おう。シャンプーハットはいらないのか?」
俺はからかうように言ってやった。
「花にはそんなもの必要ありません」
「ほいよ」
わしゃわしゃ……
「お客様、痒いところは御座いませんか?」
気分的に、床屋のような口調で花に聞いてみる。
「ないです」
「それじゃ、流しますねー」
ざばぁっ――
十分洗い流してからトリートメントもつけて再度、
ざばぁっ――
「よし、終わったぞー」
「ありがとうございます。こんどは、花が優夜のせなかを洗ってあげます」
「お、ありがとな。までに頼むな」
「……まで?」
「おっと、つい方言が出てしまった。『ていねいに』ってことだ」
「はい、わかりました」
スポンジを持った花が、俺の背中を一生懸命こする。
……撫でられてるようにしか思えんぞ。
「花ー、もう少し力入れていいぞー?」
「んー? このくらいですか? ごしごし……」
おおう、今度はいい感じに力入ってるな。
「ああ、いい感じだ。上手いな」
「ありがとうございます。じゃあ、ついでに前も――」
「まてこらっ! そっちは自分でやるからいいっての!!」
花が前に回り込もうとするが断固阻止!
これはそういうお話じゃありません!!
「えー?」
「えー、じゃない!!」
「ゑー?」
「微妙に違うが、ゑーでもない!!」
微妙な言い合いに少し疲れた気がするが、歯磨きをして花を抱えて再び湯船に入る。
「50数えたら上がろうなー」
「はーい、やっぱりお風呂は気持ちいいですー」
「だなあー」
最高だね、極楽極楽――。
「はぁー、さっぱりしました」
鏡台の前に座りながら、パジャマ姿の花。
着替えの類は、親父に持たされたカバンの中に全部入ってるらしい。
「花は普段どんな髪型にしてるんだ?」
「んー? 花はあまり髪をいじりません」
このくらい長いと色々できそうなんだが、少しもったいないな……。
「んじゃ、普通に乾かすだけでいいんだなー?」
「はい、それでいいです」
ドライヤーで花の髪を乾かす。
普段の自分と髪と違って、肩より長い髪に苦戦したが、まんべんなく乾かし終わった。
「終わったぞ」
「ありがとうございます。優夜はかわかすのがおじょうずですね」
「ンなことねぇよ。毎日やってりゃ誰だって上手くなるさ。さ、そろそろ寝ようぜ。花はそっちのベッドな」
俺が指差したベッド(ダチが泊まりに来た時のための簡易ベッドだ)を見て、花は少し寂しそうな顔をしたが、2人で寝るにはちょっと狭いベッドだから仕方ない。
「はい……おやすみなさい、優夜」
「ああ、おやすみ、花」
俺は、花がベッドに入ったのを確認してから部屋の電気を消した。
「んぅ……ねむれません」
とてとて……ごそごそ……
「やっぱり、ここがいいです。おやすみなさい……すぅすぅ」
はい、1日が終わりました。
もう分かったと思いますが、この物語は作者の趣味が満載です。
これからもこういう感じで書いていこうと思うので、分からない言葉も出てくるかもしれませんが、続きも読んでいただければ嬉しいです。




