3.おゆはんです
「優夜、あれはなんですか?」
花が取っ手のついた黒い箱を指差す。
「ああ、これか? これは電子レンジといって、食い物を温めたりする機械だ」
「んー? 生卵を温めてかんたんにゆで卵が作れるっていうあれですか?」
「やるなよ? 絶対にやるなよ!?」
「んー?」
花は分かってないように首を傾げたが、卵爆弾とかマジでシャレにならんからな!
ダチが遊びに来たときにやらかされて、おまけに片付けたのは俺一人という……なんとも素敵なマネをしてくれやがりました。
まぁ、ソイツは後でフルボッコにしたけどな。
「あ、包丁があります」
「そりゃ、普通の家だからな。包丁くらいあるさ」
「んー……」
「ん? どした?」
「つかう、ほうちょう、セルフ――」
「それやったらマジで死ぬからな?」
シャドウ○イトかよ……コイツの知識元、絶対にテレビじゃなくてネットだろ!?
「とりあえず、メシを温めるか」
「んー? じー」
花が興味津々に見つめたので、俺は使い方を教えてやった。
「食い物を入れたら、ここの『あたため』ボタンを押すんだ。弁当やおにぎりなら大体30秒くらいだな。あまり長くやりすぎるとあっつくなるから気をつけろよ? ここの『取り消し』ボタンを押せば止まる」
「むむむ……」
「何がむむむだ。ああ、後レンジに掛けちゃいけないモンもあるからな? 注意書きをよく読んでから使えよ?」
「はい、わかりました」
さて、メシも温め終わったし食べるとするか――。
「今日の夕飯はー」
「コンビニのお弁当とおにぎりです。味気ない夕ご飯ですね」
「うるさい。いつもなら自分で作るんだが、今日は花に会って少し疲れてたんだよ……」
コンビニで夕飯を買うと割高なんで、普段は自炊をしている。
腕前のほうは、可もなく不可もなくといったところだ。
「ま、食べようぜ。花はどのおにぎりにするんだ? と、いっても3つしかないけどな」
「んーと……じゃあ、ツナマヨとこんぶで」
「はいよ」
注文どおり、ツナマヨと昆布のおにぎりを花の側に置いてやる。
花はおにぎりを手に持って、転がしたり逆さまにしてみたりしている。
もしかして、食べ方知らないのか……?
「優夜、これはどうやって食べるんですか? 花は食べ方知りません」
マジでした。
まぁ、コンビニ知らなかったくらいだし、おにぎりも食べたことなかったんだろうな。
「三角の一番上に?って書かれた線があるだろ? それを最後まで引いてから左右の透明なのを外すんだ」
「んー? けっこうむずかしいです……」
「はは、こんなのすぐに慣れるさ」
おにぎり相手に苦戦する花を見ながら、俺も三色鶏弁当を食べる。
やり方を覚えたのか、フィルムを外すのに成功した花はおにぎりを頬張って笑顔を見せた。
「もぐもぐ……おいしいです」
「そうか。遠慮しないでいっぱい食べろよ?」
「はい、もぐもぐ」
あっという間に1つ食べ終わって、今度は昆布おにぎりを手に取る花。
慣れたんだろう、今度はとまどうこともなくフィルムからおにぎりを取り出すことに成功したようだ。
「もぐもぐ……こんぶもおいしいです。優夜は、どのおにぎりが一番好きですか?」
「うーん、そうだなぁ。和風ツナマヨかチャーシューマヨかな」
「んー? 花が食べたツナマヨとはちがうんですか?」
「花が食べたツナマヨに醤油を掛けたのが和風ツナマヨなんだよ。俺はこっちのほうが好きだな」
ちなみに、今回は売り切れていたので買えなかった、くそぅ……。
「じー」
「ん? なんだ?」
昆布も食べ終わった花が、俺が食べている弁当を見ている。
「もしかして、食べたいのか?」
俺が聞くと、花はこくりと小さく頷いた。
まぁ、まだ半分残ってるがいいか、というか意外と食べる奴だったんだな……。
弁当の残りと使ってない割りばしを花に渡してやる。
「もぐもぐ……これもおいしいです」
「ま、慌てないでゆっくり食べれ」
楽しそうに弁当を頬張る花を見ながら、俺も自分の分のおにぎりを食べ――
「ごちそうさまでした」
「――って、はえぇなオイ!?」
「んー?」
……とりあえず、おにぎりは食べ終わった。
味は分からなかったが……。
「ごちそうさま。って、花……ほっぺたに飯粒ついてるぞ?」
「え? どこですか?」
「左のほっぺたの口の近く」
花VS飯粒。
こういうのって、自分では取れないんだよなあ。
「取ってやるから。じっとしてろ」
ティッシュで花の左頬からご飯粒を取ってやる。
「これでいいぞ」
「あ、ありがとうございます……優夜」
花は少し頬を赤くしているが、どうみても小4の行動じゃないぞ……可愛いが。
「おませさんめ」
「え、何か言いましたか?」
「なんでもないさ。俺はこの後自分の部屋行くけど、花はどうするんだ?」
「んー? 優夜は部屋でなにをするんですか? まさか――」
「ちげぇ!! 今日は宿題もないし、動画を観るんだよ」
何を想像したんだ! 何を!?
「あ、花もみたいです」
「そか。じゃあ、さっさと片付けて行こうか」
「はーい、優夜」
さて、今日は何の動画を観るか。
考えながら俺は花と、自分の部屋に向かうのだった。
「ざんねん!! 優夜のぼうけんはここでおわってしまいました!!」
「そもそも最初から冒険なんざしてねぇから!!」




