2.コンビニに行こう
「そういえば、花は今幾つなんだ?」
「んー? 年ですか? 花は……ひーふーみー……の10さいです」
その数え方はババくさいが小4か。
学校云々は……聞いちゃいけないんだろうな。
「優夜優夜ー」
「ん? なんだ?」
花が袖を引いてくるので、一旦立ち止まってやる。
「こんびに? って、ここから近いんですか?」
なんか発音が変だぞ……。
「こんびにじゃなくてコンビニだ。歩いて5分ってとこだな」
「んー? コンビニ……ですか?」
「そそ」
歩こうとした途端に、花のお腹が再び可愛く音を立てた。
「……お腹すきました」
「もう少しだから、頑張ろうな……」
「はい……」
上目遣いで見られても、俺は食べ物なんか持ってないしどうしようもない。
ときどき、音を立てるお腹を押さえながら歩く花と歩いていると、派手なデザインの建物が見えてきた。
「ここがコンビニだ。近いだろ?」
「……花はつかれました、お腹すきました」
体力ないお子さまだな。
ま、明らかに身長も体重も足りてないし、仕方ねぇか。
「中に入るぞ」
「はい」
花を連れてコンビニの中に入る。
ふぅ、外はそれなりに暑いから冷房が気持ちいいな。
「わ、中はすずしいです」
「こういう店は冷房完備だからな」
俺の家も冷房完備だから普通に言ってやる。
なんせ、全ての部屋に冷暖房完備だからな……無駄に贅沢だ。
「花? 行くぞー?」
「んー?」
花は冷房が気に入ったのか、暫くの間そこから動かなかった。
そのうち、俺がいないことに気づいたのか、キョロキョロと辺りを見回して俺の姿を見つけて、とてとてと歩いてきた。
「ふぅ、すずしかったです」
「ははは、外は暑かったからなあ」
「はい。優夜、これかってもいいですか?」
花が持ってきたのはお菓子の入った小さい箱。
中にフィギュアやらカードが入ってる、食玩というものだった。
「……食玩はダメです」
「えー」
というか、その食玩……食べ物がガムだぞ?
腹の足しならねぇだろうが……。
「お腹すいてるなら、普通のお菓子にしろよ」
「分かりました……」
しゅん、として食玩の箱を元の場所に置いて、花は普通のスナック菓子の袋を持ってくる。
普通のポテトチップスだ、これならメシ前に少しつまむ分には問題ないだろう。
ついでだし、メシも買ってくか。
俺は自分用に三色鶏弁当、二人で食べる分のおにぎり3個をかごに入れた。
飲み物は……まだ家にあるはずだからいいか。
「花ー?」
隣にいない花を呼んだが、花はさっきの食玩を見つめたまま、その場から動いてなかった。
「……仕方ねぇな。ほら」
「あ……」
俺は、その食玩の箱を取ってかごにいれてやる。
「1個だけだからな?」
「あ、ありがとうございます……優夜」
しかし……『日本の家屋コレクション』って、趣味が渋すぎるぞコイツ……。
支払いを済ませて、店を出る。
「やっぱりあついです……」
「ああ、あちぃな……」
日は傾いているが、暑さが収まったとは言えない。
太陽に「テメーコンニャロー!」とでも言いたい気分だ。
「もぐもぐ、おいしいです」
花は早速ポテチの袋を開けて食べている。
「花、ポテチはいいけどな。食玩の箱は帰ってから開けろよ?」
「う……」
絶対、今開けようとしてたなコイツ……。
「優夜はいじわるです……もぐもぐ」
「意地悪ってな……こんなトコで開けても組み立てられねぇだろ?」
「んー? 気合でなんとかします」
「大人しく、家帰ってから開けてくれ……」
「? 優夜がそこまで言うなら、しかたありませんね」
「……オイ。なんで、俺が溜息つかれにゃならんのだ!?」
「んー? 優夜は少しうるさいです、近所迷わくです、早く行きましょう」
「あー、もう好きにしてくれ……」
何故だかすごく嬉しそうにポテチを食べながら歩く、自称10歳の花と家に帰る。
不変の日常は終わってしまったが、これから始まる、変わった日常を少し楽しみにしている俺もまた、ここにいることに気づいた。




