前編 最終的には 春樹side
七月下旬。
昼間のカフェでとある男女が向かい合って座っていた。
「やっとテスト終わったね。梨花ちゃん」
「そうだね!春樹君」
「夏休みは何か予定あるの?バイトはどのくらい入ってる?」
春樹が梨花に問いかける。
「バイトは週5くらいで入ってる!この後もバイトなんだー」
「多いね」
「塾講のバイトは長期休み忙しいからね。てか、春樹君も家庭教師やってるよね?」
「俺はそんなに。週3くらい。一日当たりの時間は増えるけど」
「そっかー。そういえばねー、昨日彼氏ができたんだー!」
梨花の突然の報告にカフェラテを飲んでいた春樹の瞼がぴくっと動く。
「へー。どんな人?」
「同じ学科の先輩でね!テスト期間も過去問くれたり、答案の書き方とか教えてくれたの!今回のテストはいい感じだと思う!!」
「優しい人なんだね」
(上機嫌なの、可愛いけど気に入らないな)
そう思いながらも、春樹はいつもの少し口角の上がった表情を崩さずに返した。
ずっと梨花の顔を見続けるのがなんとなく気まずくて、手元のケーキをフォークで一口サイズに切る。
「それでね、」
切ったケーキを口元に運び、入れようとした瞬間、再び梨花の口が開かれる。
「来週の水曜日、その先輩も含めた同じ学科のグループで海に行く予定なんだけど、春樹君も行かない?」
「……同じ学科じゃない俺が来て良いの?」
「うん!みんな友達誘うみたいで、春樹君も気まずかったら誰か誘ってもいいよ!その代わり、バーベキューの材料をみんなで持ち寄ることになってるから、何か持ってきてね!」
「わかった。」
(誰がいいかな……)
それから二週間後、梨花ちゃんたちと海に行ってから一週間が経った。春樹たち大学生は夏休みの真っただ中だった。
春樹のスマホの着信音がなった。
(梨花ちゃんからだ)
「もしもし?」
「あ、春樹君?今から会えない?」
大泣き、ではないが、電話越しからでも涙ぐんでいるのが分かった。
お互い実家暮らしで家には呼びづらかったので、カラオケルームに入って話を聞くことにした。
カラオケルームにて。
「先輩に振られちゃったの!頼ってばっかの私より、なんでもテキパキ自分でやる佐紀ちゃんの方がいいって!!」
梨花が泣きながら話す。泣きすぎて過呼吸になりそうだ。
(佐紀……、あぁ、桜木さんか)
梨花の言う佐紀という人物は、先日海に行ったとき、春樹が連れてきた友人の一人だった。
確かに佐紀はパラソルを建てるのも、みんなが持ち寄った具材を焼くのも積極的にやっていた。それに加えて、綺麗な顔立ちをしている。可愛い顔をした梨花は甘えられたときとても可愛いが、段々疲れてきた男から見れば、佐紀はとても魅力的に見えるだろう。
(思ったよりちょろかったな)
「ねえぇぇ!!春樹君もそう思う!?私はあの子よりも魅力ないの!?」
(いつも言っているのに)
春樹は泣きじゃくる梨花の隣に座って声をかける。
「そんなことないよ。梨花ちゃんの魅力に気が付く前に目移りしてしまったんだよきっと」




