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プレイボールⅡ

「たしか桜舞島に高校は一校しかないはずだが……」

 実は克也は自分が通うことになる桜華高校に一度も来たことがなかった。

 それどころか桜舞島に来ること自体、昨日が初めてだった。 

 入試は推薦で願書を出願するだけ、卒業後もグラウンドが完成するのが入学式直前ということもあり地元で練習を続けていた。

 そんな訳で昨日初めてこの島に渡ったのだが、昨日は昨日で入寮の手続きや荷物の整理やらで一日費やし、ついに一度も下見に行くことなく今日の入学式を迎えたのである。

 ちなみに桜華までの道は「この島に高校は他にないから制服を着た生徒についていけば大丈夫よ」と下宿先のおばちゃんに送り出された。

 そんなこんなで、現在に至る。


「にゃー、そこの人どくにゃー!」

 その声に振り返った刹那、体に強い衝撃が伝わり克也は転倒する。

(痛っ、いったい何が起こったんだ?)

 何が起きたのか状況を確認すると目の前に自転車ロードバイクとそれに乗っていたであろう少女が倒れていた。

(!!猫)

「痛いにゃー」

「大丈夫か?」

 手を差し出し女の子を助け起こす。

(小さいな。小学生かな)

 その小さな容姿に克也はそう思った。

「見たにゃ」

「は?」

「見たにゃ」

「何を?」

「だから菜那のパンツ見たにゃ」

(!!なんですと!?)

「い、いや見てないよ。三毛猫プリントの、あっ……」

 小学生といえども正直に「バッチリ見た」と答えれば、気まずくなるだろうと白を切ったがボロが出てしまう。 

「実はちょっと見えてたかなごめんね。でも小学生がロードであんなスピードを出して走るなんて危ないよ。しかも公道を」

 克也は少女の頭を撫でながら優しく諭す。

「うにゃー」

 少女は怒っているのか恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして腕を振り回し克也を攻撃する。痛くはないが子供の世話なんてしたことがない克也はどうしていいのか分からない。

(もしかしてユーモラスにパンⅡ〇見えとジェスチャーするのが正解だったのか)

「どうしたんですか?」

 戸惑っている克也に一人の少女が声をかけてきた。

「ん、ああ、この子が……」

 手を振り回している女の子に視線を向ける。克也の視線を追って少女の視線も女の子へ向かう。

「センパイ?もしかして菜那先輩?」

「にゃ?」

 少女の言葉に女の子が反応する。

「にゃー、もしかしてあーみんにゃ?」

「はい。お久しぶりです那奈先輩」

「懐かしいのにゃ、小学校以来にゃ」

「はい。小学校以来ですね。那奈先輩お元気でしたか」

「菜那はいつでも元気だにゃ。んにゃ?その制服あーみんも桜華にゃ?」

「そうです。那奈先輩と一緒です。美帆ちゃんはどうしてますか?」

「にゃー、みーちゃんも桜華にゃ、また三人で遊べるにゃ」

 二人は知り合いのようで話がはずんでいる。

 二人の会話を聞いていた克也は衝撃の事実に驚愕していた。

(先輩?たしか先輩って言ったよな。だとしたら高二か高三、それであのパンツは……)

「それで先輩は何を?」

「菜那はこの男の子にパンツ見られたのにゃ」

(えっ?この人何言ってんの)

「それも自転車ごと倒されパンツ見られたにゃ」

 あーみんと呼ばれた少女は怒りと軽蔑の入り交じった目で克也を睨み付ける。

「ちょっ、ちが――」

 パーンと辺りに乾いた音が響き渡る。

「最低。行きましょう、那奈先輩」

 あーみんと呼ばれた少女は克也を一瞥し倒れていた自転車を起こし菜那と呼ばれた少女と共に歩いて行った。

(スナップの利いたいいビンタだったぜ)

 周囲の視線を一身に浴びている克也は痛みが残る左頬に手を当て呆然と立ち尽くしていた。


 校門を通ったところで菜那は振り返り克也を見ると、自転車を押す少女と会話を交わし立ち尽くしている克也に駆け寄ってきた。

「早くしないと入学式始まるのにゃ。まったく世話のかかる後輩なのにゃ」

 その声に現実に引き戻された克也は今まで思っていた疑問をぶつけた。

「でもここって女子高じゃ?」

「それは去年までなのにゃ。桜華女子高等学校、今年から共学にゃ」


お読みいただきありがとうございます。

次話もご一読いただければ幸いです。

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