浮気
「え?・・・・・・えっ?」
ある日の事、手紙を読んでいたヴネルさんが困惑した声を上げる。
「あの、お母さんが明日こっちに来るみたいで泊める事って出来ます?」
「構わないですよ」
「すみません。でも何で急に来るんだろ?」
手紙にも詳しく書かれていない様で不思議がるのだった。
〜〜〜〜〜〜
「お邪魔します〜」
翌日、ヴネルさんの母ゼリンさんが大荷物を持ってやって来る。
「そんなにいっぱい荷物持って来て、お母さんどうしたの?」
「ちょっとね、家出して来たのよ〜」
「家出?どうゆうこと!?」
驚いて大きな声を上げる。
「パパが浮気したから」
「浮気!?」
浮気と聞き更に大きな声を上げる。
「それ何かの間違いなんじゃないの?」
「私もそう思ったんだけどね。最近街に行く事が多くなって不思議に思って後をつけたら、知らない女と買い物してたのよ」
「それは・・・・・・」
何も言えなくなってしまうヴネルさん。
「問い詰めても正直に言わないから、頭にきて1発殴って出て来ちゃったわ」
「そ、そうなんだ」
「ごめんね、こんな事でお邪魔しちゃって」
「うん、私よりもコタケさんにお礼言って」
「えぇそうね。コタケさん、夫婦間の問題でお邪魔しちゃって申し訳ないです」
「そういう事なら全然気にしないで下さい。家にも居辛いと思いますし」
「ありがとうございます」
深々とお辞儀をする。
「お母さんには私の部屋に泊まってもらうから」
「えぇ、分かったわ」
荷物置きに2人で二階へと上がっていた。
〜〜〜〜〜〜
2日後。
「アリシアちゃんの子供達は良い子ね〜」
「ヴネルちゃんも良い子ですよ」
「この歳の頃は村で走り回ってたから大変だったわよ」
「ちょっと、お母さん。そんな昔の事言わないでよ」
この家にすぐに馴染んだゼリンさんは、家事などを手伝いながら過ごしている。
「終わったー!遊んでくるねー!」
勉強を終えた子供達が外に遊びに行く姿を微笑ましく見送る。
「私も少し運動しないと鈍ってしまいますね。折角だし、ヴネルが相手になってくれるかしら?」
「そう言えば、お母さんと戦った事って無かったかも。1対1で良いの?」
「2対2に出来ないかしら?」
「誰か連れて来る」
ヴネルさんは、エレオノーラさんとメアさんを連れて来た。
「お母さん、準備いいー?」
ヴネルさんとメアさん、ゼリンさんとエレオノーラさんに別れて戦う。
何か耳打ちをしているゼリンさんに、エレオノーラさんが頷く。
「良いわよー」
「コタケさん、お願いします」
「うん。それじゃあ、よーいスタート」
開始の合図をとると、ゼリンさんがすぐに魔法を放つ。
それは白と黒の混じった半径10m程の魔法陣で、地面に広がっていく。
「あ、あれ?」
メアさんが不思議そうな声を上げた所に、エレオノーラさんが突っ込んで行く。
普段であれば拮抗する2人の力であるが、今日はエレオノーラさんが簡単に競り勝つ。
「今助けます」
ヴネルさんが魔法を放つが、普段の相手を丸焦げにする火の魔法の威力がだいぶ弱まっており、エレオノーラさんに簡単に弾かれる。
「あ、あれぇ?」
調子が悪く不思議な顔をしながら2人は、ゼリンさんに視線を送る。
「うふふふふ。気付いちゃったかしら?エレオノーラちゃん、ネタバレして良い?」
「構わないさ」
「私が闇と光の属性なのは知ってるわよね?」
以前聞いた話で2人も頷く。
「その2つの属性の合わせ技でね。この下の魔法陣にいる敵は普段の50%力が下がって、味方は50%上がるのよ」
「強すぎでしょ」
「ヴネルさん、この魔法陣から出れば良いんです」
メアさんが魔法陣の外に出ようとするが、普段のスピードが出ずにエレオノーラさんに先回りされる。
「こうなったら、お母さん狙わないと」
ゼリンさんに向けて魔法を放つヴネルさんであったが、軽々と躱わされる。
「ヴネル、お母さんは元Sランクなのよ?」
「そんなの反則だよ・・・・・・」
そこからは一方的な蹂躙が始まるのであった。
「はぁー、ちょっとスッキリしたわ」
「やっぱりストレス発散だったよね」
「パパが悪いのよ。浮気なんてするから」
「あのお父さんがすると思わないけどなぁ」
ヴネルさんの言う様に以前会った時にそんな人には思えなかった。
「でもお母さんは見たのよ?」
「それって最後まで見たの?」
「その女と何かの店に入って行ったところまでよ。その後すぐに荷物をまとめる為に家に帰ったもの」
「う〜ん」
そんな話をしていると、ガサガサと草むらが揺れて警戒する。
そしてそこから出て来たのは、ヴネルさんの父ガルツさんであった。
「おぉ、ヴネル」
「お父さん」
「それにゼリン、やっぱりここに居たか」
「貴方・・・・・・何か申し開きはある?」
「俺は悪くなっ」
バチン!
庭に響き渡るビンタの音、魔法陣で強化されたゼリンさんに弱体化したガルツさんは、ノックアウトされるのであった。




