引退
「ワタルさん、明日の午後から空いてますでしょうか?」
「うん?大丈夫だけど、どうかしたの?」
「実家から呼び出されていて、ワタルさんも連れて来て欲しいと言われたのです」
「分かったよ。子供達も連れて行こうか」
「えぇ、父が大喜びしますよ」
〜〜〜〜〜〜
翌日の午後、ウッドフォード公爵家に向かう。
「私の可愛い可愛い孫達がやって来たぞ〜」
いの一番に子供達に抱き付くオーウェンさん。
「お父様・・・・・・」
「どれ、小遣いをあげよう」
金貨の入った小袋を取り出して渡そうとする。
「お父様、甘やかさないでください!」
アリーが小袋を取り上げる。
「ぬぅ、滅多に会えないんだから少しくらい良いじゃないか」
すっかり普通のお祖父ちゃんになり、公爵としての威厳が全くない。
「貴方、少しは自重して下さい」
「お母様どうぞ」
後からやって来たクラニーさんにも止められ、アリーは取り上げた小袋を渡す。
「オーウェンさん、俺達を呼んだ理由を聞かせて貰えますか?」
「そうだな。子供達と遊ぶのは後でにしよう」
場所を移し話を聞く。
「率直に言おう。実は昨日で爵位を返上した」
「いつかその日が来るとは言っていましたが、遂にですか」
以前から引退する事は話していたので、特段驚く事では無かった。
「しかし、お父様をそう簡単に手放すのでしょうか?」
これまで国に貢献して来た貴族を易々と手放す筈が無い。
「そうだな。貴族では無くなったが、王の命で今後はご意見番の様な役割を担う事になった」
国王の相談に乗ったり、この地を新たに治める貴族にアドバイスをしたりする特別な立ち位置になるそうだ。
「お父様とお母様が決めた事なら私は何も言いませんが・・・・・・この家はどうなるのでしょうか?」
ずっと暮らしてきた家が無くなる事をアリーは心配している様だ。
「心配いらないよ。今までの貯蓄で十分維持出来るし、執事やメイド達には次の仕事を与えたし、今後はノルシェが全てやってくれる事になったんだ」
「家が残るのは嬉しいですが、ノルシェの負担が大きくありませんか?」
「私達も手伝うのですよ。もう貴族ではありませんしね」
「お母様達が家事をですか」
「家事に関してはアリシアの方が詳しいわけだし、色々と教えて貰おうかしら」
「お母様に教えるのは新鮮ですね!是非やりましょう!」
アリーもノリノリである。
「オーウェンさんもするんですか?」
「勿論だとも。自信は無いがな」
普通の貴族ならこの反応が当たり前なのだろう。
「ワタルさん、早速家に帰ってお母様と料理をしても?」
「分かったよ」
「なら私は子供達と遊んでいよう!」
こうして2人を連れて家に帰ったのだが、少しは自分の力でやってみたいと言い料理を焦がしてしまうクラニーさん。
子供達の普段のハードな遊びもとい訓練に付き合い死にかけるオーウェンさんの姿があるのだった。




