遭難
"私が遭難してから10日が経った。
皆んなは私の事を探してくれているだろうか?
食糧は尽き、自らの手で入手する他ない。
このジャングルで生き残る事は容易ではないだろう。
ただここで死を待つわけも無く、今日もこの場所で何とか生き抜くのだ。
イルシーナ"
「あのマスター?何をしてらっしゃるんですか?」
「うん?遭難日記だよ。臨場感出るかと思ってね」
「私達が遭難してから、まだ1時間しか経っておりませんが?」
「そんな細い事は気にしないの」
「それにマスターは魔女で不老不死なので死ぬ事は無いかと」
「それも気にしない」
ゾーラちゃんの手伝いにジャングルに用事があった私だが、一緒に来ていたコタケ君とメアリーちゃんとはぐれてしまった。
幸いにもイルートが一緒で寂しくは無い。
「全くあの2人には困ったものだよ。こんなジャングルで迷子になるなんて」
「迷子なのはマスターかと」
「だって、変な動物を見かけたんだもん!」
遭難の原因は私が急に別行動をしたからだ。
それは分かっているが、知的好奇心には抗えなかったのだ。
「こんな時に限って箒を持ってくるのも忘れたし」
「これからいかが致しましょうか?」
「とりあえず周辺をぶらーっとしてみよっか。探し物もあるし、運良くコタケ君達に会えるかもだし」
「かしこまりました。私が先導いたします」
「よろしく〜」
ジャングルの中を適当に探索する。
「うへ〜、ジメジメして暑いよぉ〜。イルートは大丈夫なの?」
「私は温度は感じますが、暑い寒いといった感覚は分かりません」
「それはそれで面倒だね」
「それよりもマスター。あれが依頼の物ではないですか?」
イルートの視線の先には直径30cmの卵があった。
「えーっと、どれどれ?うん!あれで間違いなさそう」
ゾーラちゃんに渡された絵を見ながら確認する。
「よいしょ。これであとは迷子の2人を探すだけだね」
「マスター・・・・・・」
「はいはい、迷子は私達だーでしょ」
「いえ、そちらを」
再びイルートの視線の先を見ると、一羽の普通のニワトリが居た。
「君も迷子?」
「マスター、逃げた方がよろしいかと」
「ふぇ?」
「コ、コ、コケェェェェ!」
ニワトリが大きな鳴き声を上げると体が大きくなっていき、体長が5m近くにまでなった。
「あっ、コカトリスね・・・・・・逃げろー!」
私は全力で駆け出す。
コカトリスは石化するブレスを吐く、ニワトリの見た目をした危険な生物だ。
「コケェェェ!」
コカトリスは灰色のブレスを吐き、周りの木々が石化していく。
「くそー、こうなったら倒すしかないか」
「私にお任せ下さい」
イルートが立ち止まり腕を剣に変えて、ブレスを避けながら首にトンッと一撃を加える。
「コケェ・・・・・・」
コカトリスは勢いよく倒れ普通のサイズに戻る。
「峰打ちです」
「それ両刃だよね?峰打ちなくない?」
謎の技術で殺しては無いという。
「次からは依頼物が何かちゃんと聞こう」
「ブレスを受けても問題はありませんでしたが」
「いくら私でも石化しちゃうよ」
「エリクサーがあれば治ります」
「そんなの持ってないよ」
「コタケ様が持っております」
「えっ?そうなの?」
「私は皆様の持ち物を全て把握しておりますので」
「さっすがぁ!」
「ところでマスター。そろそろコタケ様達と合流を」
「そうだった!でも何処に居るか分かんないし」
「いえ、場所なら」
「やっぱり私達はここで死ぬしかないんだぁー!」
「また馬鹿な事を言って」
私が嘆いていると、後ろから聞き馴染みのある声が聞こえた。
振り返るとメアリーちゃんとコタケ君に加えて世界樹の分身も居た。
「2人とも!まったく、迷子になっちゃって」
「迷子は貴女でしょうが!」
「でもどうやって居場所が分かったの?」
「一度転移で家に帰り世界樹の分身を連れて来たんです」
「私は世界と繋がっているので、皆様の場所はすぐに分かります」
「わーお、変な所に行けないねぇ」
「なんでこっち見るんですか」
コタケ君に視線を送るとそう返される。
「反省してください。イルートさんまで巻き込んで、2人とも石化されていたらどうしたんですか」
「イルートが石化されても問題無いって・・・・・・あれ?何で石化されそうになったの知ってるの?」
「見てましたから」
「はい?何処から?」
「貴女が日記を書く所から」
「はいぃぃぃ?じゃあずっと見てただけって事?」
「少しは反省してもらわないといけないので、イルートさんは気付いていた様ですが」
「3人の気配を感じましたが、何やら動く気配を感じませんでしたので」
「そんなぁ」
「少しは反省しましたか?」
「はい」
「じゃあ依頼も達成した事だし帰ろうか」
「次からはもっと早く助けてよね」
「原因が貴女でなければ」
「ぐぬぬ」
反論出来ない私は大人しく帰るのであった。




