雨の街
「雨の街ですか?」
「あぁ、依頼の品物がそこにあるんだ」
そう話すエレオノーラさん。
「どんな所なんですか?名前的に雨が多い所みたいですけど」
「多いというレベルでは無くてな。1年中1秒の休みも無く雨の降り続ける場所なんだ」
「それはまたとんでもない所ですね」
そんな所に人が住めるのだろうかと疑問に思う。
「気になるか?」
「えぇまぁ。どんな街か見てみたいです」
「私とメアで行くつもりだったが、席もちょうど1つ余っていたから来ても良いぞ」
「それメアさんはデート気分なんじゃ」
「うん?大丈夫だろう?依頼だと言ってあるし」
「そうですか・・・・・・」
疑問に思いながらも3日後、目的地に近い海沿いの町へとやって来た。
「このボートで向かうんだ」
10人乗りの小さなボートに乗り込む。
「海にあるんですか?」
「ここから30分くらいの所だ。先にレインコートを着ておくといい」
「デートぉ・・・・・・」
「なんかごめんなさい」
空は快晴だが、メアさんの気分は少し曇り空になってしまった。
そして出発から20分後、だんだんと雲行きが怪しくなっていきポツポツと雨が降り出したと思ったら、先に進むに連れてザアザアと雨足が強まってきた。
「見えて来たぞ」
レンガ造りの家が建ち並ぶ綺麗な街が現れる。
そこは前世の水の都の様で、整備された水路をボートが行き交っている。
「雨特有の匂いが強いです」
「メアには少しキツいか」
俺も匂いを感じるが、特に鼻の効く獣人にはキツい様で鼻をつまんでいる。
「ここに住んでて嫌にならないんですかね?私は雨の日は憂鬱になるので1週間でも厳しそうです」
「水位は上がったりしないんですか?」
「雨の強弱はあるが1年に降る量は一定だそうで、家の高さもそれを計算して建てられているらしい」
「なるほど。とは言えここに住むメリットが思い浮かばないんですけど」
「正直なところ無いのだが、この先に目当ての物があってそれを育てないといけないんだ」
そう言われて到着したのは、教会の様な雰囲気の白い建物だ。
中に入ると祭壇などがあるのでは無く、中庭がありそこに青い花が咲いていた。
「あれが目的の物ですか?」
「1年中雨の降る場所にしか咲かないという花だ」
「この場所の特性と花の特性どちらが先なんですかね?」
メアさんが、ニワトリが先か卵が先かという様な疑問を口にする。
「花が場所に合わせて進化したと考えるが、実際はどうか分からんがな」
「この花は何に使うんですか?」
「強力な毒消しなんだ。実はここは国とギルドが管理している建物でな、他の建物も別の国が管理して花を育てている」
「獣人の国はしてないですね」
「そうなのか?」
「獣人は毒への耐性もそれなりなので」
「確かに人の国が大半だそうだしな」
「ここに住んでる人達は進んで住んでる訳じゃないんですね」
「ぶっちゃけて言うと給料が良いからだ」
それはそうだと納得する。
建物の職員から花を受け取りバッグに保管する。
「ここって雨が降らなかった時ってあるんですか?」
「過去に2,3度あったそうだ」
「束の間の休息ですね」
「だと思うだろ?その一瞬の晴れ間でも雨が無いと花が駄目になってしまうんだ」
「「えぇ・・・・・・」」
「非常時に備えて雨を貯めていて、もしそれが起これば人が花に雨をやり続けるんだ」
綺麗な街並みとは裏腹に、人の住みにくい雨の街なのであった。




